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第8話 “好き”の裏付け

 驚きに、思考が追いついていない来須の姿が可笑しくて、追い討ちをかけるための意地の悪い言葉が口を衝く。 「好きでもないヤツに、そこそこイケてるなんて言わねぇし」  ギギッと音がしそうなほど、ぎこちなく来須の顔が上げられ、驚きにきゅっと瞳孔の締まった瞳がオレを見やる。 「好きなヤツが邪険にされてんの腹立ったし。なんとも思ってねぇヤツを、高身長の塩顔イケメンだなんて褒めねぇし」  連ねるオレの“好き”の裏付けに、青白くなりかけていた来須の顔色が、赤みを取り戻す。 「つまりは、オレもお前が、好き」  自分を差した指を来須へと向け、ニッと笑う。  オレの言葉が浸透するように、来須の首から上が、ぶわわっと真紅に染まった。  すとんっと腰を落とし、しゃがみ込んだ来須は、照れから逃げるように頭を抱える。  来須の心が落ち着くまで待つつもりなんてないオレは、髪の中でわしわしと蠢くその手を突っつく。 「好きなヤツのホスト姿、見てみてぇじゃん? どうせなら、同じグループで仲良くやりてぇじゃん?」  あうあうと、言葉を忘れてしまったように呻く来須。 「でも、お姉様方にモテられんのは嫌だなぁ」  来須の頭の上で、いじいじと、のの字を書く。 ―― がしっ  いじけた気持ちを伝えていたオレの指先が、ぎゅんっと握られた。 「ぃっ………」  痛みに引こうにも、がっしりと捉えられた手は逃亡を阻まれる。 「いてぇよっ、放せっ」  さっきまで唇に触れていた手は、優しかったのに。  なんで急にまた、馬鹿力に戻ってんだよっ。 「嫌だよ、放さない。穂永の方がモテそうじゃん……」  赤くなったままの顔が上げられ、強情(ねだ)るような上目遣いが、オレを捕まえる。 「でも、もう僕の、でしょ? お姉様方になんて、あげない」  拗ねたような表情の来須に、顔を近づけた。  来須の独占欲が擽ったくて、自然と上がった口角のままに、その唇にキスを落とす。 「オレも。誰にもやらねぇ」  あははっと重なる笑い声が、教室に響いた。

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