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第11話 磨かれる危機察知

 そんな来須は、“遠慮”という言葉を知らない。  声に出さないだけで、“この人は僕のものです”という独占欲を垂れ流し、空気が“ヤキモチ”という名の攻撃的な棘を纏う。  でも、嫌じゃない。  困ったコトに、キュンとすらさせられる。  こいつは、天然のたらし体質なんじゃないかとさえ思う。  口を塞がれ、腕の中に抱えられているオレと、威圧感を全面に押し出し威嚇してくる来須に、洸は簡単にオレたちの関係を悟った。 「マジかっ」  指先をわなわなと震わせ、“俺の癒しが…っ”と嘆きの声を上げた。 「なにしてんの?」  来須の腕の中に収まったままに、頭上を見上げた。  休憩がてらに、オレたちのクラスを覗きに来たのであろう煌と視線がぶつかった。 「穂永、取られたぁ……」  足に縋りつく洸に、煌はゆったりと腰を下ろす。  しゃがんだ煌に、洸は抱きつき直す。 「いや。最初から洸のものじゃないだろ」  めそめそと抱きついている洸の頭を優しく撫でながらも、煌の言葉は、的確であり手厳しい。 「そうだけど、…そうだけどもっ」  煌に抱きつきながら、恨めしそうな瞳を来須へと向ける洸。  睨まれている来須が、どんな反応を示すか想像がつかず、その顔を見上げた。  …瞬間、ニコニコ顔の来須と目が合う。  落ちてきそうなその顔に、オレは反射的に両手を伸ばした。 「きょ、うしつっ…だからなっ」  来須の顎を下から支え上げ、その顔を正面へと戻す。  絶対、スイッチ入ってた!  あぶねぇ! 「洸。お前、別れたんだって?」  来須のスイッチを切るコトに成功したオレと、煌に抱きついたままの洸の視線が、声の主を捉える。  オレたちのクラスメイトの1人、彼女が切れたコトのない安土(あづち)だ。 「あ? ん。今、フリー」  安土の言葉に、煌から離れた洸は両手を広げ、彼女はいないと体現する。 「お、じゃあさ、今度カラオケ行こうぜ。オレの彼女とその友達と……」  洸を見やっていた安土の瞳が、恐る恐るというように煌を捉える。 「煌も……、行く?」  本当は誘いたくないという雰囲気が隠された音に、煌は気づかぬフリで断りを入れる。 「行かねぇ」 「だよな。……んでさ」  ほっとした感情が漏れる声を放った安土は、洸に視線を戻し、話を先に進め始めた。  洸と安土が話す横で、煌は興味がないという風体を装い、腰を上げた。  その顔は、微かに歪みを見せている。  オレは、来須の腕から抜け出し、教室から出ていく煌の後を追った。

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