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第14話 ふにふには癒しだ <Side 煌

 俺だって、わかってる。  邪魔をしたって、洸が俺だけのものにならないコト。  そもそも、独り占めしたいからって訳じゃない。  あいつが、ろくでもない女にばっかり引っ掛かってるから。  だから、洸が傷つく前に俺が先回りして、芽を摘んでるだけだ。  嫌われたいとか、洸が嫌いだからとか、そんな理由じゃない。  洸が幸せになれるなら、それに越したコトはない。  あいつに見る目がないから、俺がフィルターになってるだけだ。 「当日の見回りルートなんですけど……」  実行委員の話を始める凉原に、気になっていたコトが口を衝いた。 「なんで、ここだってわかったの?」  俺が教室にいなかったから、洸のクラスを訪ねたであろうコトは察しがついた。  でも洸に、どこにいくかを告げてきた訳じゃない。 「洸先輩が、ここじゃないかって」  洸も、穂永も、気づいてる。  俺がここに来るのは、気分転換だ。  苛立ちに、寂しさに、感情に振り回されそうになった時、俺はここで気持ちをリセットする。 「何か、…落ち込んでます?」  困ったように眉尻を下げ、上目遣いに俺を見上げてくる凉原。  意図を探るような視線を向ける俺に、凉原の瞳が、きょろきょろと游ぐ。 「洸先輩が、慰めてやってって……」  僕が役に立つとは思えないんですけど…と、凉原は肩を落とす。  凉原の手に握られている紅茶の紙パックに、穂永の声が、耳に蘇る。 『洸だって馬鹿じゃねぇし、気づいてるぞ』 ―― お前だって、洸に嫌われたいわけじゃないだろ? 無駄なコトは、止めておけ。  ……俺には、そう聞こえていた。  俺が、間違ってるのか。  じゃ、どうすればいいんだよ。  洸を守るために俺は、何をすればいいんだよ?  思わず、目の前の凉原の頬を突っついていた。 「ふぇっ?」  急に触れられた頬に、凉原は間の抜けた声を上げる。  癒されたいという無意識の欲求が起こした行動だった。  ふにふには、癒しだ。  俺の指先はエスカレートしていく。  突っつくだけでは飽き足らず、凉原の頬をふにふにと摘まんでいた。 「お前のほっぺ、癒やし機能ついてるよな……」  ぼそりと放った俺の言葉に、凉原はきょとんとした直後、瞳を細めて笑った。 「ははっ、……なんで落ち込んでるのかわかんないですけど。僕のほっぺで良かったら、いつでもどうぞ」  首を傾げ、頬を差し出す凉原に、俺は飽きることなく、暫くふにふにと、その頬を摘まんでいた。

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