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第17話 永遠の味方宣言

「お前ら全力でイチャつきすぎたろ」  学園祭が終わり、振替休日を越えた翌日の火曜日。  何時ものように、洸と煌、ついでに来須までもが一緒に昼飯を食っていた。 「は?」  呆れるように紡がれた洸の声に、いきなり何を言い出したのかと、顔を顰めた。 「後夜祭。ちいせぇお前のオレンジ頭、ぴょこって飛び出してたぞ」  隣にいる煌の後ろから頭だけをひょっこりと覗かせ、くくっと詰まるような笑いを零す。  来須に抱き上げられていたのは明白だと、洸が揶揄(からか)ってきやがった。  だから、嫌だったんだよっ。 「うん。あれは、どの角度からでも見えたね」  洸の言葉に賛同した煌が、笑っているのを誤魔化すかのように俯き、肩を震わせる。 「いや、お前もな?」  目の前の煌の頭に手を乗せた洸は、その上に顎を乗せる。  見下ろしてくる洸に、煌はきょとんとした瞳を浮かべた。 「俺?」  不思議そうな声を放ち、オレに問う。 「いや、オレに聞かれても」  煌から離れた洸が椅子に座り直し、にたりとした笑みを浮かべた。 「凉原。お前、あいつのコト、好きだろ」  洸の指が煌の頬に伸び、つんつんとそこを突っついた。  その仕草に、煌が凉原の頬を噛んだコトを思い出す。  ふっと息を逃がすように笑った洸は、言葉を繋ぐ。 「ま、俺は、お前みてぇに邪魔はしねぇよ」  ちくりと刺すような棘を纏った言葉のニュアンスに、煌は言葉を詰まらせる。  空気が悪くなりそうな雰囲気に、微かな緊張が走る。  でも、居心地が悪そうに表情を歪めた煌に対し、洸は堪えきれないというように、顔をにやけさせた。 「煌はさ、俺を取られんのが嫌だったんだろ? だから、俺の邪魔してたんだよな」  洸から、苛立ちの感情は見て取れない。  微塵も腹を立てている素振りはない。  逆に、満更でもない様子で、ニヤニヤと顔を綻ばせていく。 「いやぁ、モテるってのも考えもんだよなぁ。愛されるって大変だわ」  あははっと楽しげに笑う洸は、どうやら煌の所業を、子供の我儘程度にしか感じていないようだった。  洸の中の煌は、大好きな玩具を取られまいと駄々を捏ねる子供。  大好きだからこその行動なのだと受け取っていた。  彼女が出来たコトへの嫉妬からくる嫌がらせだとか。  洸のコトを嫌っているからだとか。  ネガティブな発想は、(はな)からないらしい。  洸の中に存在する煌は、ただただ自分を好きなだけ、らしい。  双子だけど、兄である洸。  数分先に生まれた兄の洸が、弟の煌を諭す。 「俺はお前が凉原と付き合ったって、取られるとか思わねぇし。お前と俺は双子の兄弟ってコトは、一生変わらねぇじゃん? そんなとこ、妬くとこじゃねぇだろ」  取るに足らないコトだというように、洸は笑い、言葉を繋ぐ。 「お前が同性を好きでも気にしねぇよ。穂永で耐性ついてっし」  親指で指し示されたオレは、思わず口を開いた。 「耐性ってなんだよ」  呆れたように放ったオレの言葉に、洸は首を傾げた。 「なんだろな? …驚かないって感じ? 別に普通だなってか、…なんだろな?」  疑問符を浮かべながらオレを見やる洸に呆れる。 「聞かれても、わかんねぇよ」  投げ出すオレに、洸が再び、話を繋ぐ。 「ま、お前らは、俺が守ってやるよ。俺はお前らの永遠の味方だ」  洸の大きな口の端が、ぐいっと上を向く。  これでもかと言わんばかりの自慢気な笑顔に、煌は反論するのは面倒だというように苦笑した。 「洸」  スマートフォンを片手に、安土が洸を呼んだ。 「おう」  声に反応した洸が席を立ち、安土の元へと足を運ぶ。  たぶん、この前話していた女の子とのカラオケの打ち合わせだろうと、オレたちは黙って洸を送り出す。

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