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紫陽花(3)

……数時間後。 咲良は厨房にいた。 昼食を挟んで用意をしていたものを冷蔵庫から取り出す。 付喪神や式神が傍で見守り、ばあ様は雲外鏡と一緒に興味津々で撮影中だ。 水色、青、ピンク、淡い紫。 薄く引いたゼリーをフォークで崩していく。 「なぁなぁ、これ、どうなんの?」 屏風覗きが不思議そうに見ている。 「あまり細かくしすぎないようにして、少し色味をこうして…」 「ほうほう…」 フォークで十字に切ってスプーンで纏めると、何となくだがイメージが伝わったようだ。 「………あ、あれだな」 「石庭にもありますね」 「ふむふむ。ばばにも分かったよ」 先に作っておいた練りきりの上に、二色のグラデーションになるようにゼリーを乗せていく。 「おおおおおお…!」 「なんと!」 「すげえ!これ食べれんの!?」 「絶対うんまいやつだよこれ!」 雨に濡れる紫陽花を模した菓子が出来上がった。 「綺麗だねぇ。 なんかこう、柔らかい風に揺れてる感じがよぅく出てる。 さくらの目に見えた紫陽花は、こんなふうなんだねぇ」 「ぇ、あ…、う…。 紫陽花に見えまするか…?」 「見えるよ、ばばの目には綺麗な紫陽花に見える。 しかも、とても美味しそうだねぇ。 きっと守弥もびっくりする筈だよ」 「………っ、嬉しいです…」 皆が気を使って言っているのではないと分かり、咲良の頬が淡く染まった。

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