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欲求不満な残念勇者⑷
聖剣は光の波となり、城を根元から真っ二つに割った。辺り一面が光の洪水に包まれた直後、天よりメテオが轟々と降り注ぎ、城も魔王の森も、焦土と化した。
俺と幼なじみを中心とした半径1m以外は全て焼け野原となり、先ほどの魔物も、魔王城に数多いたであろう化け物も何も残っていなかった。
「え……今の、魔王……?」
「ハア、ハア、ハア、そんなんどうだっていい、それより」
「どうだっていいってお前、……嘘だろ、おい。まさか。
……マジか。マジなのか!本当に倒しちまったのか!!」
初め呆然としていた幼なじみの顔は、次第に驚きに変わっていき、それから喜びで俺の腕を両手で掴んで握りしめた。
「凄い!凄いよお前!さすがだよ勇者!俺嬉しい。やっと終わった!嬉しい!」
そうか。さっきのあいつ、魔王だったのか。
そんなことはどうでも良かった。こいつがこんなに喜んでることの方が大事だ。
しかし次のひと言で俺は奈落の底へと落とされる。
「これでやっと解放される!!」
「!!!」
魔王討伐の旅は大変だったが、俺はこいつと支え合いながら旅が出来て良かったと思っていた。
こいつは料理や洗濯はもちろん、森のことや魔物の生態にも詳しく、俺の旅の水先案内人となってくれた。俺が何度も死にかける怪我を負っても適切な処置をし、命をつないでくれた。
俺は一緒の村で過ごした小さい頃よりも、この旅で更にこいつを好きになっていったのだ。
一生一緒にいたいほどに。
俺の伴侶となり、生涯を共にして欲しい程に。
だがこいつは違ったんだ。
嫌々ついて来させられ、この旅に縛られていたのか。
楽しいと思っていたのも俺一人で、好きだと思っていたのも俺一人だったのか――
バチン!
何かが弾けた音がした。俺の理性か、恋の幻想か。
俺は無防備だった奴を押し倒した。
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