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第6話

コンコン ショーンがノックの音と共にオフィスに入って来た。 彼は勇吾のデスクを見て勇吾を探すと、オレに視線を落としてギョッと目を見開いた。 オレの胸の中で甘えて虚無になっている彼は、ショーンの登場なんて気が付かない様子で、うっとりと微睡んでいる… オレ? オレは何も言わずに…勇吾の髪を撫でてあげたよ。 固まったショーンがそのままバックで退室して行くその時まで、彼の瞳を覗き込んで…めいっぱいの愛情を込めて撫でてあげた。 …ショーンがおしゃべりなら、勇吾の赤ちゃんプレイは瞬く間に広がる事だろう。 「シロ…花を…俺に降らせて…」 勇吾はそう言うと、オレの膝の上に頭を置いて天井を見上げた。 涙でグシャグシャになった彼の頬を手のひらで拭うと、チュッと唇にキスしてあげる。 無垢で、純真で、赤ちゃんの様に可愛らしい彼に、こぶしの花を降らせてあげよう… 「見て…綺麗だよ。」 そう言って両手を高く上げると手のひらを美しく揺らして、決して落ちることの無いこぶしの花びらを見せてあげる。 彼の頭の上まで来ると、上昇気流に乗って再び高く舞い上がるんだ。 「ふふっ!」 楽しそうに声を弾ませて笑う彼は、まるで幼い子供みたいだ。 「絶対落ちない、あなたの様なこぶしの花びらだよ。地面に付かないから、枯れる事も腐る事も無い。いつまでも舞い続けて…永遠に美しいままだ。」 体を伸ばして高くまで手を伸ばすと、ゆったりと滑らかに、空を泳ぐ花びらを彼の頭の上に漂わせる。 「綺麗だ…シロ、とっても綺麗だ…!」 そうだろ?オレも、そう思うよ。 勇吾は体を起こすと、何も言わずにオレの唇にキスをした。 そして、そのままソファに押し倒して行くと、ギュッとオレの体に抱き付いて甘え始めた。 もう、本当に甘えん坊だ… 可愛い彼の頭を抱きしめると、ロメオにそうする様に…彼の背中をトントンと拍子を付けて叩いてあげる。大丈夫だよ?ここにいるよ?って…安心出来る様に…背中を叩いてあげる。 勇吾はオレの胸に顔を付けたままシャツを脱ぐと、もぞもぞと体を滑り込ませて、オレのトレーナの中に潜り込んで来た。 彼の熱い素肌が、ぺったりと体に触れて…トロけてしまいそうだよ… ほろりと温い涙がオレの胸を伝って落ちる感覚を感じながら、トレーナー越しに彼の頭を抱きしめて撫でてあげる。 もう…本当に…甘えん坊で、可愛い。 …コンコン 静かなノックをしながら再びオフィスに入って来たケインは、最高に甘えてる最中の勇吾を、すぐ傍まで来てじっと見下ろした。 顔を歪めて肩をすくめると、オレを見つめて首を横に振った… ヤレヤレだ… そんな声が聞こえてきそうな彼の表情に吹き出して笑いそうになると、彼は満足げな顔をして、両手を胸に当てて揺らした… ふふ…バレエのジェスチャー…“愛してる”のポーズだ。 だからオレはトレーナー越しの勇吾の頭を両手で包み込んで、同じ様に揺らして見せた。 その様子を見たケインは、にっこり笑うとオレに投げキッスをしてオフィスを出て行く。 …きっと、次はショーンが来るんだ。 彼らは交互にオフィスを訪れては、勇吾がグダグダに甘えていく様を見て楽しんでる。 オレはノーダメージだよ? でも、勇吾の威厳と名誉の為に…鍵を閉めた方が良いかもしれない。 そんな事を思い始めた頃…トレーナーの中から顔を出して勇吾が言った。 「落ち着いたかもしれない…」 可愛い…! 勇吾の惚けた表情と、泣いて赤くなった目元が、堪らなく可愛くて、一気に興奮して欲情した。 「そう…良かった。」 そんな風に言ったけど…そんな落ち着いた、優しい言葉とは全然違う。全く真逆の、熱くて…激しい、トロける様なキスを彼にお見舞いする。 いやらしい音を出しながら、愛しい彼の頭が逃げて行かない様に両手で抱えて、ずっとしたかった…エッチなキスをする。それは、チュッと可愛らしい物じゃない…ねっとりといやらしい感情がむき出しになった、卑猥で官能的なキスだよ。 「勇吾…勇吾…愛してる…!」 そう言って彼の体をソファに押し倒すと、自分の股間を彼の足に押し付けて擦った。 「あぁ…シロ…!」 オレだって、怖かったよ…勇吾。 お前がオレを手放すんじゃないかって…怖かったんだ… 「勇吾…勇吾、離さないでよ…愛してるんだ…」 彼の素肌をねっとりと舌で舐めて鳥肌を立てていく皮膚を爪でなぞると、彼の股間を撫でて、いやらしい吐息を耳元にあてて興奮させていく。 「勇吾…勇吾…大好き…」 「あぁ…シロ、カギを閉めさせて…」 そう言ってオレから離れようとする勇吾の体を 絶対に、離さないよ… 彼の体をソファに押し倒すと、体を屈めて熱心に愛のキスを贈る。 ズボンのベルトを外して、チャックを下げて彼のモノを手のひらの中に入れると、優しく包み込んできつく締めあげる。 「あぁあ…シロ…イッちやうから…」 「ふふ…イッて良いよ…?勇吾の…可愛い顔を見せてよ…」 そう言って彼の頬を舐めると、快感に首をのけ反らす勇吾を見つめて、自分の勃起した股間を彼の太ももに擦り付けて、一緒に気持ち良くなっていく。 「はぁはぁ…だめだぁ…シロ、勇ちゃんに…勇ちゃんに触らせて…」 オレの体を抱え込むとグルンと反転して勇吾がオレの上に覆い被さった。 「勇吾…エッチして…我慢できない。」 自分のズボンを脱ぎながらそう言うと、鍵を閉めに行こうとする彼の腕を掴んで、自分に引き寄せて熱くて濃厚なキスをする。 鍵なんてしなくても、脅したりしなくても、オレの愛で…あなたを軟禁してあげよう。 それは甘くて…溺れる…死にかける様な愛だよ…? トロけた瞳で見つめ合ってキスを外すと、トロリと糸が引いて…めちゃくちゃ、いやらしい…そんな美しい彼に、悩殺されるよ。 「…お口でする?」 オレの耳元で彼がそう言うから…彼の頬に頬ずりしながら言った。 「して…して…!」 だって、好きなんだ。フェラチオも…彼も。 勇吾はそんなオレのおねだりに、クスクス小さく笑うとオレのモノを優しく撫でながら、お口の中に沈めて行った。 「…あっ!だめだぁ!」 突然大声を出したオレの口を押えると、勇吾は首を横に振って言った。 「シロ?ここはオフィスだから…エッチしちゃダメな所なんだ。だから、内緒でやるなら、静かにやらないとダメだね。」 分かってる…分かってるよ? でも、勇吾の口に入れた瞬間…とっても気持ち良くって…イキそうになった。 だから、咄嗟に…だめだ!って言ったんだ。 「だって…気持ち良かったんだもん…」 そう言って彼の胸を撫でると、美しい胸筋にうっとりしながら言った。 「勇吾…キスして…」 「あぁ…可愛い…」 オレの頬を手のひらで撫でると、優しい彼の唇がオレの唇に触れた。そのまま舌がねっとりと口の中に入って、くらくらする様な圧迫感と、痺れる様な刺激をくれる。 夢中になって彼の舌を一緒に絡めると、彼の手の中で扱かれる自分のモノが快感に悲鳴を上げる。 「ん~…はぁはぁ!んっんん!はぁ、勇吾…気持ちい…イッちゃう…イッちやうよぉ…」 必死に声を堪えながらそう言うと、勇吾がニヤニヤして頬を赤くして言った。 「キスしてて…そうしたら、声が出ないから…」 本当? 本当なの? 屈みこんで来る彼の首に両手を絡み付けると、彼の柔らかい唇に舌を這わせて…再びキスをする。 あぁ…気持ちい…! 勇吾の舌が、オレの舌を絡めてドンドン気持ち良くして行ってくれる… 撫でられる体も、弄られる乳首も…扱かれるモノの快感も、喘ぎ声を堪えながら耐えると…最高に気持ちいい… こんなプレイも…悪くないね? 体が熱くなって、しがみ付いた彼の背中に汗がにじんでくる。 「シロ…指、挿れるよ。」 唇を離して彼がそう言うから、オレは彼の鼻を舐めて、惚けた顔で頷いた。 ひと思いにやってくれ… 「んんっ…!んふっ…!」 あぁ…まずいね… 彼の指が入った途端に、体が大喜びして、声を出したいって…体中を捩らせて言うんだ…。 気持ちいい…! 唇が外れて行かない様に…喘ぎ声が漏れてしまわない様に… 彼の首に両手を絡みつかせると必死に彼の唇にしがみ付いて、快感を堪えた。 彼の息遣いも、彼の汗も、彼の動きも…全て。堪らなく、クラクラスルくらい…エロい。 真っ白になりながらお互いを貪るように求めあう様にキスをし続けると、彼が息を切らして言った。 「挿れる…」 ひと思いにやってくれ… トロけ切ったオレの体は、いつでも準備オーケーだよ… 頭もクラクラで、体も熱くてトロけてる。 彼のモノが中に押し込まれると、一気に快感の種類が色を変えて体の奥から快感が立ち上がっていく。それを背中をのけ反らせて…震えながら感じる。 苦悶の表情を浮かべる彼の頬を撫でて、キスを外すと、彼の瞳を見つめて言った。 「勇吾…勇吾…愛してる…」 「シロ、俺の…シロ…愛してるよ…」 彼の唇を何度も食むようについばんで、体をのけ反らせる快感を鼻から抜いて、漏れてしまいそうないやらしい声を堪えて、彼のくれる快感を味わう。 「はぁはぁ…勇吾…イッちゃいそう…」 早くない… だって、ずっと我慢してたんだ。 「はぁはぁ…シロ…勇ちゃんもすぐにイキそうだよ…」 オレの耳元でそう言う勇吾の背中をギュッと抱きしめると、絶妙な腰使いをする彼のくれる快感に満たされて、溺れていく。 彼はオレの物で…他の誰の物でもない… ましてや、脅すような奴の物になんて、ならない。 勇吾の背中に爪を立てると、彼の腰の動きに合わせて腰を動かす。 「あっああ…勇吾…イッちやう…イッちやうよ…んん~~!あっああ!」 逃がさない様に彼の腰を掴むと、腰を派手に振るわせてイッてしまった… 「はぁあ…シロっ!あっ…あぁ…!」 オレがイッたと同時にオレの中で勇吾のモノがドクンと暴れた。 ジッとオレを見下ろす苦悶の表情の彼を、オレは惚けてだらしない顔をして見つめた。 「勇吾…気持ち良かったぁ…」 そう言って彼の頬を撫でると、だらしなく笑った。 「ぁあっ…!」 彼は堪らずオレの中からモノを出すと、お腹の上にドクドクと射精して項垂れた。 1年ぶりの彼とのセックスは…最高に熱くて、ドロドロで、濃厚なセックスだった。 「聞こえた…?聞こえない…?」 いっちょ前に、喘ぎ声が聞こえたかもしれないと心配するオレに、甘くて優しいキスを浴びせながら勇吾が言った。 「良いの…良いの…勇ちゃんとシロは、ラブラブだから、良いの…」 ふふっ!甘い… この甘さは…いつもの勇吾だ。 その後、勇吾は驚異の集中力を見せてポールダンスの構成を考えたり、ステージの舞台装置を調べたり、小道具のチェックをしたりした。 どれも、後回しにして手を付けていなかった様子で、忙しそうに走り回る彼を、オレはただぼんやりと眺めたり…一緒に追いかけてみたりした。 「シロのお陰で、やっと進捗を把握してくれたよ…」 そんな声を掛けられて、こそばゆい思いを抱きながら勇吾の後ろを付いて歩く。 突然息を吹き返した勇吾の勢いに、スタッフの士気が確実に上がった。 イエス、ノーを言える勇吾が戻ったんだ。 今まで後回しにされていた事が、やっと、動き始めたんだ。 これで、もう…安心だね。 「シロ、あそぼ…」 そう言ったのは、ケインだ。 周りのスタッフが忙しそうに働くのを横目に、椅子に腰かけながらオレに手招きしてる。 「どうしたの…?」 そう言って彼の目の前に行くと、ケインはオレを膝の上に乗せて言った。 「…勇吾は、シロとセックスすると、生き返るのかな?」 ははっ! 聞こえてたのかっ! ケインのジャブに吹き出して笑うと、彼の手を撫でながら言った。 「あふふっ!ケインはお馬鹿さんだね。そんな事、考える暇があるなら…自分の仕事をしなさいよ。ほら、みんな働いてるよ?」 「はぁ~~」 オレの背中に頬を付けながら大きくため息を吐くと、ケインはボソッと言った。 「俺は干されてるんだ…。真司に文句を言ったから、勇吾が怒って俺に仕事を与えてくれなかった。だから、こうして勇吾の大事を触って、気を紛らわせてる…。シロの柔らかい体が好きだよ?ほら…太ももなんてこんなにプニプニして…舐めちゃいたいよ。」 ヒロさんが顔を赤らめながらケインの英語を通訳してくれている。それは、彼特有の感情のこもった…声に色が付いた…通訳だ。 ケインの熱っぽい声に、彼の甘い言葉を乗せて通訳するヒロさんに…笑わないでいる事が、どれほど困難か。 気を取り直して、背後のケインを振り返ると彼に言った。 「じゃあ…勇吾に謝って貰って…仕事を貰っておいでよ?」 「嫌だ…勇吾は頑固者で、不誠実だからね…俺に謝ったりしないよ。」 そう言って口を尖らせると、ケインはオレの背中にもたれかかってため息を吐いた。 全く…男という物は万国共通で、ガキなんだ。 「はいはい…」 そう言ってケインの膝から立ち上がると、彼の手を掴んで引っ張り上げた。 手を繋いで一緒に勇吾の所へ行くと、怪訝そうにケインを見る彼に言った。 「勇吾?ケインに謝って。彼に仕事を与えてよ。」 分かってるよ? こんな事… まるで…この子に謝んなさい!って怒ってる…母親のようだってね。 でも、馬鹿でガキな彼らには…こうでもしないとダメなんだ。 仲裁なんて生ぬるいやり方をしていたら、一年でも二年でも平気で時間を無駄に使うだろう… “お前の母ちゃんに言ってやったぞ?どうだ、参ったか?” そんな声が聞こえてきそうなケインの顔を一瞥すると、バツが悪くなったのか…謝りたくないのか…オレの顔を見つめたまま、勇吾は押し黙ってしまった。 はぁ… 黙って口をすぼめる勇吾に、眉を下げながら言った。 「…彼は、あなたを心配していたよ。それは、ショーンと同じくらいね。」 “そうだ!そうだ!謝れ!” そんな声が聞こえてきそうなリアクションを取ると、ケインは首を伸ばして偉そうに胸を張った。 こういう態度が余計に苛つかせてるというのに…彼はわざとそれをするんだ。 “煽り”という職業があったら、彼と桜二は、すぐに昇進するだろう。 「シロ、おいで?」 勇吾はそう言うと、オレの手を引っ張って自分の腕の中に入れた。そしてオレを背中から抱きしめると、胸を張って言った。 「…あの時は、申し訳なかった。どうかしていたとしても、こんな嫌がらせをして悪かった…。色々心配かけてすまない。シロの事…面倒見てくれてありがとう。感謝してる。」 ”俺の母ちゃんに、馴れ馴れしくするな!放置子がっ!“ …そんな所だろうか… それを感じたのか…目の前のケインは、ワザと勇吾の腕の中にいるオレの手を握ると、指をなでなでしながら言った。 「オーケー…」 “まあ、お前の母ちゃんは、俺にも優しくしてくれるけどね?” そんな含みを持たせた返事をすると、ケインはオレの顔を覗き込んで言った。 「サンキュー、ママ。」 はぁ、全く! 桜二、オレは性別を超越したよ? オレは海を越えて、勇吾のママになったみたいだ。 晴れて仕事を貰えたケインは、意気揚々と働き始めた… 彼はバカじゃない。 変な人だ。 そして、どことなく…誰かに似てる。

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