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第9話
「勇吾?オレは4日経ったら東京に戻るよ。」
オレがそう言うと、夢中になって作っていた雪だるまから手を離して、勇吾はしょんぼりと眉を下げて言った。
「ダメだよ…」
「も~。結婚するだろ?」
そう言って肩をすくめると、勇吾は口を尖らせて雪だるまの顔に石をはめ込んだ。
彼が作ったのは目じりと、口端が下に下がった…悲しい顔の雪だるま。
「笑った顔にして?写真を撮るんだから!にっこりと笑わせてよ。」
桜二のマフラーを雪だらけの手袋で直しながらそう言うと、勇吾は雪だるまの目じりからはっぱの涙を落としながら言った。
「…まだ、結婚してない…。」
あぁ…もう…!
彼に飛びついて雪の中に沈めると、雪まみれになった彼にキスして言った。
「オレはひとりでイギリスまで来れる様になった!だから、また、すぐに会いに来る。次は…そうだな、春の公演を見に戻ってくる。だから、チケットをオレに送って?一番良い席をオレに頂戴よ?」
彼はムッと顔を膨らませると、悲しそうな声で言った。
「離れたくないよ…シロ。愛してるんだ…」
「もう…勇吾。オレも、愛してるよ。」
オレの頭に積もった雪が彼の顔に落ちるから、雪だらけの手袋で拭いてあげる。
「つめて…」
そう言って顔を振る勇吾を上から見下ろして、クスクス笑いながらキスする。
「お熱いね~…また、こんな所でいちゃついてると…また別の誰かが、ナイフを持って襲ってくるよ?」
そんな怖い事を言いながら、ショーンがオフィス兼スタジオから出てくると、オレ達が作った雪だるまを見て失笑して通り過ぎて行った…
「ほぉらぁ、勇吾が悲しい顔にしたから…笑われたじゃないか!」
「だめ…結婚してないのに、行かせない。だめ…!」
勇吾はそう言ってオレを抱きしめると、自分のコートの中に埋めて包んだ…
甘い…
まだ降り続ける雪を見つめながら、夕方のロンドンの街を眺める。
彼のオフィス兼スタジオの前で、大人げなく始めた雪だるまづくり…はじめのうちはケインも参加していたけど、余りの寒さに…天井の低いかまくらを作った後、退散して室内へと戻って行った。
イギリスの雪が、こんなに積もるとは思わなかった…そして、こんなに冷えるとも思わなかった。
街灯が灯って、車のライトが降り続ける雪を照らして、キラキラと輝いて見える。それがこの街のゴシックな雰囲気とマッチして、とっても綺麗だ。
「じゃあ…もう、今からしてこようよ…」
オレがそう言うと、頬を預けた彼の胸がフルフルと震え始める。
「い、い、い、今から?」
声を裏返らせて勇吾が動揺するから、彼の顔を上から覗き見て言った。
「だって、オレは4日後に帰るって…桜二と依冬に言っちゃったんだもん…」
それは絶対変更する訳にはいかないんだ。
だって…彼らの様子を見たでしょ?
特に桜二が心配だよ。だって、見えないオレと遊び始めてるんだもの…
「…分かった。」
勇吾はそう言ってすくっと体を起こすと、オレの手を引っ張って立ち上がらせた。
そして、一緒にオフィス兼スタジオに戻ると、オレの体を抱きしめながらどこかへ電話をかけ始めた。
英語で話してるから…何を言ってるのかは、ヒロさんがいないと分からないよ。
「よし、シロはここで温まってるんだよ?風邪でも引かせたら…桜ちゃんに殺される。」
そう言ってオイルヒーターの前にオレを置いて行くと、勇吾は再び上着を持って出かけて行った。
「シロ…?モモは、付き合ってる人はいると思う?」
ケインがくれたコーヒーを飲みながら、オイルヒーターに濡れた手袋を置くと、ヒロさんがそう言ってオレの顔を覗き込んで来た。
あぁ…彼はモモに夢中なんだよ。
オレの通訳としてずっとスタジオにいるから、必然的にモモをずっと見る事になるよね。そのせいかどうかは分からないけど、のんけの彼はすっかり気が強くて面倒見のいい気立ての良い女王様のモモに夢中になった。
「さあ…聞いてあげようか?他には、何が知りたいの?」
彼を見つめてそう言うと、ヒロさんは顔を真っ赤にして言った…
「…誕生日と、好きな花…」
ふふっ!
オレは英語は話せない。
ヒロさんが訳してくれないと、彼らとまともな会話なんて…出来ない。
だからオレが彼の知りたい事をモモに聞く時も…結局、彼が話す事になるんだ。
ふふふ!
「モモ!彼氏はいるの?」
ポールを踊り込む彼を下から見上げて尋ねると、モモはオレを見た後、ヒロさんを見つめる。
だって、彼がオレの言葉を訳して話すって…知ってるからね?
「…」
モモに注目されて、顔を赤くすると、ヒロさんは何も言えなくなった。
そんな彼の様子を見て、みんなが不思議がって首を傾げる。
当のモモも、困惑した表情を浮かべてオレを見ると、肩をすぼめて見せる。
「モモ、ドゥー、ユー、ハブ、ボーイフレンド?」
仕方が無いから、オレが片言でそう尋ねた。
「あ~はっはっは!」
ヒロさんが赤面した事と、その後のオレの質問に…みんなが察して、大笑いをした。
「…ノー」
顔を赤くすると、モモは恥ずかしそうにオレに言った…
だから、オレは日本語でヒロさんに言った。
「いないって言ってるよ?」
彼はそれを聞くと、伏し目がちにオレを見て言った。
「誕生日と…好きな花は…?」
目の前にいるんだから、お前が聞けよ…なんて、思わないよ?
だって、このやり取りが面白いんだもん。
「モモ?ウェン、ユア、バースデイ?後…ファット、フラワー、ドゥー、ユー、ライク?」
こんな片言の英語でも…伝わるならそれで十分だ。
モモはポールからスルスルと下りてくると、もじもじしながら言った…
「メイ…トウェンティー…、マイ、フェイバリット、フラワー、イズ…ローゼズ…」
ほほっ!なんだ、モモもまんざらじゃ無さそうだ。
のんけハンターか?
オレは隣のヒロさんを首だけ動かしてみると言った。
「だって…?」
「オーケイ…センキュー…」
オレに英語でそう言っちゃうくらい、彼はいま舞い上がってるみたいだ…
「ふふ…ヒロさんはモモの事が好きみたいだね?」
オレがそう言ってモモに笑いかけると、反射なのか、ヒロさんがそれを訳して伝えた。
「あ…」
そう言って固まるふたりを、ニヤニヤして見つめる他のダンサーと一緒に…オレもニヤニヤしながら眺めた。
「オレはあと4日で日本に帰るよ。」
練習を終えて帰宅する支度を始めた彼らにそう言うと、みんな口々に言った。
「ぼんくらの勇吾を放って置かないでよ!」
「勇吾がまた使えなくなったらどうするの?」
「誰があの坊やの面倒を見るの?」
ヤレヤレだね?
だから、オレは口を尖らせてみんなに言った。
「もう大丈夫だって!」
「ノー!!」
信用が無いのか…勇吾をひとり置いて行くな!と、みんなに詰られた。
あぁ…
そっか。
この子たちは…勇吾を、心配してるんだ。
また、どん底に落ちるんじゃないかって…心配してるんだ。
「またすぐに会いに来るから…大丈夫だよ。ひとりでイギリスに来られるようになったから…。もう、彼を放ったらかしにはしないから…大丈夫だよ?」
オレがそう言っても…眉毛を下げて、どうして置いて行くんだ!の一点張りだ…
普通…そう思うよね。
愛してるのに、傍に居ないなんて、おかしいって思うよね…
「勇吾…?愛してるのに、離れる事は…おかしい?」
彼の車に乗って彼の家へと帰る道すがら、ぼんやりと窓の外を眺めてオレがそう聞くと、彼は首を傾げて言った。
「だとしたら…単身赴任の家庭はおかしいって事になる。でも、誰もそんな事言わない。いつか、一緒になるって分かってるからだ。」
「オレと勇吾も…いつか一緒になる?」
降り続ける雪は歩道を覆いつくして、交通量の多い道路は川のように水を流していく。
こんな時…この車は心強いな。
だって、滑る事はあっても…タイヤが埋まって抜け出せなくなる事なんて無いもの…
大きな水たまりを通る度に、静まり返った車内に水を跳ねる音が響いて、車の床を震わせる。
「…なるよ。」
そう言った彼の返事を聞いて、口元が緩んでいく。
「だって…夫婦だからね?」
そう言って笑った彼の横顔が…とっても男らしく見えたのは、あたりを明るく照らす雪のせいかな…
あと…3日
ピピピピ
アラームの音で目を覚ますと、重たい瞼を開いて目の前でオレを見つめる彼と目が合う。
「…勇吾、おはよう…」
オレがそう言うと、彼はにっこりとほほ笑んでチュッと優しいキスをくれる。
そのままオレを抱きしめて言うんだ…
「シロ…エッチしても良い?」
ベッドに乗ってる間中、寝ている時以外、彼はオレとセックスしたがる。
昨日の夜も…そのまた前の夜も、朝も、ベッドに居る限り、そうなんだ。
「ふふ…良いよ。」
素敵な彼の髪を撫でながらそう言って、熱いキスをして、朝の愛をふたりで確かめ合うんだ。
それはいつも予想外に盛り上がって、予想以上の満足をくれた。
在庫切れになった自前の服の代わりに勇吾の服を着て、今日もポールダンスをモモたちに教える。
「すごいじゃないか…!もう、全て一通り通し練習が出来るまでになった!」
そう言って驚くショーンに言った。
「彼らはもともとプロだからね。1言えば、10分かってくれるんだ。」
一通り踊れるようになって終わりじゃない。
彼らはここからもっとこれを磨いて行く必要があるんだ。
だから、これは終わりじゃない…やっと、スタートラインに立っただけ。
しかも、最終的にはオーケストラの生演奏で、これらを踊るんだ…
それはとっても美しくて、壮大で、迫力のあるショーになる。
絶対だ。
「…シロは…あと、3日で東京に帰るって聞いたけど?」
ショーンがそう言って練習を見守るオレに言った。
「…色々、ありがとうな…」
ふふっ!
オレは彼を見ると、何も言わないでグーを差し出した。
「ふふ…」
ショーンとコツンとこぶしをぶつけると、彼の目を見つめてにっこりと笑う。
何も言わないよ。
だって…ヒロさんが、モモに夢中で…オレの傍に居ないからね。
#勇吾
「勇吾、本気か!?」
「ああ。もう準備してる。」
「…俺の事が好きになっちゃったみたいだけど?」
ケインがそう言って茶々を入れるけど、俺はお前を無視するよ?
「だから、みんなに声を掛けておいてよ。」
俺はそう言うとショーンの肩を叩いて、丸投げした。
「正気を取り戻したかと思えば…すぐに、これだもんな…」
そう言って俺をジト目でみると、ハッと表情を変えて、満面の笑顔で言った。
「シロは凄いな。あっという間にあの曲者のモモを手懐けた。正直驚いたよ。実力主義の彼らが、シロの踊りを見て感銘を受けたのは、まあ…分かる。それにしても…素直に言う事を聞き過ぎるんだ。モモがシロに懐くから、モモに懐いてる下の子達も、自然とシロに懐いて行くんだ…」
ふふ…
俺は口元を緩めて笑うと、ショーンに言った。
「それが…あの子の魅力だ。」
生き抜く賢さを身に付けてる。
誰を絆せば上手く行くのか…分かっちゃうんだろうな。
人の感情に敏感な分、そういう目に見えない物が分かるんだ。それが足枷になる事もあれば…今回の様にうまく働く時もある。
まるで諸刃の剣のような、感受性の高さを持ってる子なんだ。
あの恐怖の真司も、シロの全力の声が届いたのか…俺を諦めた様に表情を一変させた。まるで汚い物を見るような目を向けて俺の前から立ち去った…
やたらぼろくそに言われたけど…それが、あの子の作戦だったとしたら、脱帽だ。
本心だとしたら…ちょっとだけ、ショックだけどね。ふふ。
「シロがアダージェットで踊った時は…鳥肌が立った。」
ケインはポツリとそう言うと、真剣な表情で俺を見て言った。
「あの子はすごい才能を持ってる。メグの抜けた場所に、立って貰うべきだ。」
あぁ…そうだね…
俺も、そう思うんだ。
でも、あの子は、あと3日で東京へと帰ってしまうんだよ。
「…じゃあ、お前から言えば良いだろ…」
俺はつれなくそう言うと、弁護士に連絡するため電話を取った。
「もしもし?勇吾だけど、この前話した件。すぐにお願いしたいんだよ。無理は分かってる。それでも、何とかしてよ。3日以内に済ませたいんだよ。メディア?別に構わないよ。それで無理が通るならね。」
込み入った話を始める俺を見ると、ショーンとケインは首を横に振りながらオフィスから出て行った。
「あぁ…なる程ね。じゃあ…特別扱いしてお招きすれば良いんだろ?それで話がトントンと進むなら、何も構いやしないさ…。じゃあ…よろしく。」
…教会の神父が男のストリップを一番前で見たいとはね…こりゃ、芸術じゃない。リアルな趣味だな。
次は…あの花屋に連絡をするか…
「ええ…そうです。あの時、デンドロビウムの花束を作ってもらった者です。あの花を、3日以内にイギリスに送る事は可能ですか?ええ、今回はもっと大量に注文したいんですよ。そうだな…教会があの花の香りでいっぱいになるくらい…ふふ、え?直接?あはは…じゃあ、その卸先を教えて下さいよ。」
あまりの大量注文に断られると、すぐに教えて貰った卸先に連絡を入れて、大量のデンドロビウムを確保する。
「よしよし…後は…指輪だ!」
俺はそう言うと、コートを手に持ってオフィスを出る。
「本当に見事なんだよ。見に行こうよ。」
そんな事を話しながら、楽しそうに、あの子がいるスタジオの方へ向かうスタッフ達に後ろ髪をひかれて、出かけるのを後回しにして彼らの後ろを付いて行く。
「シロ~~!もっと踊ってみてよ~~!」
スタッフが続々とスタジオに入って行くのを見ながら、俺はそんな楽しそうな声が漏れ聞こえるスタジオを、ちょっとだけ…小窓から、覗き見する。
「あぁ…俺のシロたん。可愛いな。あんなに笑って…シロは勇ちゃんといた方が幸せなんじゃないの?ん?わぁ…見事に回るんだ。きれいだよ…俺のシロ…。可愛いね。もう…ギュッと抱きしめて離したくない気持ちでいっぱいになっちゃうよ…?」
ドアの小窓からシロの様子を伺ってると、ケインが真後ろに来て言った。
「気持ち悪い…まるで、変態のストーカーだ。」
…これは負け犬の遠吠えだ。
ケインはシロの事を気に入ったみたいだけど、あの子は俺が大好きだからね?
「ケインさん…お仕事さぼらないで、頑張ってください。」
シロから目を離さないで背後のケインにそう言うと、愛しのシロを続けて視姦する。
「あぁ…シロ、可愛いね…大好きだよ。チュチュチュチュ…!お前がセンターで踊ってくれたら良いのにな…。そしたら、大変な事になっちゃうね?すごいポールダンサーがいるって話題になって…、実は勇吾の奥さんだった!なんて、うへへ…うへへへ!」
俺がそんな未来を話していると、背後にショーンが来て言った。
「勇吾…4時から打ち合わせだ。出かけるなら…それまでに戻って来てくれよ?」
「…オーケー」
そう返事すると、モモが小窓から覗き見する俺を見つけて、大騒ぎし始める。
居るだろ?女子でも勘の良い子。
覗き、視姦、恋する男子の視線にいち早く気付いてギャアギャア騒ぐ子がさ…
まさに、モモがそれだ。
みんなで俺を見て指を差して笑ってる…でも、俺はお前を見続けるよ。
困った様に眉を下げて俺を残念そうに見つめるお前を…見続けるよ。
これが、俺の日常になれば良いのにな…
踵を返して急ぎ足で車へと向かう。
だって、小窓を服で塞がれたんだ。あんなことされたら、幾らの俺だって傷付くさ。
事前に目星は付けていた。
シロに会えない時間、あの子に似合う物を探して回っていた俺が、ビビッと来ていた物を買えば良いだけだ。
指のサイズだって、隙の無い俺は既に測定済みだ…
あの子が目覚める前に起きて、眠ってる顔を毎日30分以上は眺めているからね。寝起きの悪いあの子は、俺が隣でオナニーしても起きない。だから、その内に指のサイズを測っていたのさ。
「この結婚指輪に…裏にメッセージを入れて…」
“I would I were thy bird.”
そんな、ロミオとジュリエットの一節をリングの裏に入れて、美しい箱に入れて貰うと店員が訝しげに顔を覗き込むようにして聞いて来た。
「あの…勇吾さん…ですよね?ご結婚されるんですか…?」
「ええ…結婚します。だからリングがいるんだ。」
俺がそう言うと、目の前の女性店員が驚いた顔をして言った。
「知らなかった!」
そう。
自慢じゃないけど、俺は日本人にしては頑張った方だ。
ロンドンの街でそれなりに認知された日本人だと自負してる。
伝統ある舞台や芸術を踏みにじる様な演出ばかりして来た、ある意味異端児の俺は、特に若い層に人気がある。と…自負してる。
「悲しいけど…応援してます…」
そう言って手渡さた連絡先が付いた結婚指輪の入った袋を受け取ると、要らない紙を彼女に返して店を出た。
次は…衣装だ…
こればっかりはシロを連れて来ないとだめだ。
という事で…4時からの打ち合わせをすっぽかして、シロを連れて出直してやって来たのは、リージェント・ストリートを一本入った所謂“サヴィル・ロウ”なんて呼ばれる仕立屋付きのオーダーメイドスーツ屋が軒を連ねるストリートだ。
イギリスでは、オーダーメイドとは言わない。ビスポークなんて呼ぶ。
仕立屋をビスポークテイラーと呼んで、高級で上等なスーツを売る。
そして、それが一種の上級なステイタスなんだ。
「あぁ…勇吾さん、いらっしゃいませ。」
シロを連れてやってきたのは俺が良く利用するそんなビスポークテイラーの居る店。
「勇吾?見て?依冬と桜二が着てる様なスーツが沢山あるよ?うわぁ…」
ややドン引きするシロを連れて、案内された奥へ移動して、あの子の採寸を取る。
「腕が長い…」
ポツリと仕立屋がそう言って、あの子の腰の細さを図って首を傾げて言った。
「お人形さんみたいだ…」
そう。この子は俺の可愛いお人形さんだ。
訳も分からないまま採寸を受けると、俺を見てシロが言った。
「オレの衣装を作るの?」
「そうだよ?結婚式で着るタキシードを作るんだ。」
その俺の言葉にあの子は顔を崩して大笑いする。
「あ~はっはっはっは!すごい上等だね?あはは!あははは!」
何も面白くない。こういうことは厳粛に厳かに正装を持って執り行うものだ。
儀礼に乗っ取ってね?
「勇吾は型破りが好きなのに…こういう時は伝統を重んじるんだね。」
そう言うと、シロは仕立屋の口に咥えた待ち針をじっと見つめて言った。
「間違って、飲み込んだりしないのかな…」
ふふっ…
「きっと、今まで、一度くらいは、口に入った事があるだろうね…」
あの子と一緒にそう言うと、顔を見合わせて、クスクスと笑った。
「割り増ししても構わないから、一番に仕立てて…すぐに必要なんだ。」
そう無理を言うのも忘れないで、用を済ませると店を出た。
「見て?このコート…依冬がくれたんだよ?あの子とお揃いなんだ。オレのはベージュだけど、依冬のは黒いんだ。可愛いでしょ?」
自慢の高いコートを見せびらかす様にそう言うと、俺と腕を組んでギュッと抱きしめて言った。
「とっても暖かいんだよ?」
ふふ…
その足で弁護士の所へ向かうと、シビルパートナーシップの書類を作る。
「…その子と、結婚するの?」
そう言った弁護士はシロを見て首を傾げて言った。
「俺は、てっきり、あの子とするのかと思ってたよ…?」
「違う。この子だ。」
こんな時…シロが英語が分からなくて良かったと思ってしまう。
付き合いの長い弁護士の彼は、真司の事も知ってるからね…
「そう…じゃあ、勇吾さんの名前で無理を通したパートナーシップの書類を作ってしまいましょうかね…」
こんな嫌味も、聞かずに済むんだから、英語なんてずっと覚える必要はないさ。
つまらなそうに頬杖を付くあの子の頬を撫でながら、必要書類を書いていく。
これをごり押し提出すれば…この子は晴れて俺のシロになる。
「むふふ…!」
俺がひとりでムフムフと笑うのを横目に見ながら、あの子が俺の髪を撫でる。
その手が…その瞳が…たまらなく好きだよ。
「じゃあ…後は、教会で。」
そう言って弁護士と別れると、シロの手を繋いで車まで戻る。
あの子は寒そうに体を縮こませるとポツリと言った。
「長かったね?疲れちゃった。」
ふふ…
「ごめんね?これで俺とシロは結婚したのも同然だからね?」
俺がそう言って目じりを下げると、あの子は俺を見上げて言った。
「陽介の家のロメオは最近お座りが出来る様になったんだよ?可愛くて、堪らないんだ。無垢って…この世界の中で、一番尊いものだと思うんだよ。」
子供…?
シロたん…
お前…
結婚の次は、子供が欲しくなっちゃったの?!
「…そう。でも…勇ちゃんは、子供は…好きじゃないかもしれないな…」
シロの機嫌を損なわない様に、子供は嫌いですアピールをして、チラッと彼を横目に見ると、ぼんやりと遠くの街灯を見つめながらあの子が言った。
「桜二もそんな事言ってた。汚くて…うるさくて、臭いとか言ってた。」
あ~はっはっは!桜ちゃんに賛成だよ!
俺も子供に対する意見は彼と同じだ!
「でも…」
シロはそんな接続詞を使うと、俺を見上げて言った。
「オレとの子供だったら、愛してくれそうだったよ?」
「は~~?!」
ついつい大人げなく動揺すると、シロを見て怒った顔をして言った。
「ダメだ!桜ちゃんと、子供なんて作ったらダメだ!」
「子供は作れないよ。バカじゃないの。オレには子宮はないよ?」
…そんな事は知ってる!
でも、でも…!
そんな妄想を…桜ちゃんが抱いているとしたら、夫として黙ってる訳にはいかない!
「避妊しないとダメだ!あの男の遺伝子を次に繋いじゃダメだ!何よりも、勇ちゃん以外の男と家庭を築いちゃ、ダ~メだ!シロは勇吾のシロだよ?だから、ダメなの。」
両手であの子に抱き付いてそう言うと、俺の腕をナデナデするあの子の髪に沢山キスして言った。
「絶対ダメだよ?勇吾の奥さんでしょ?シロは勇吾と結婚するんだよ?」
俺の腕の中でクスクス笑いながらシロが言った。
「分かった。勇吾以外と家庭を築かないよ。」
ホッと胸を撫でおろすと、小悪魔的なシロを見つめて言った。
「もう…本当に、悪い子ちゃんなんだからっ!帰ったら沢山お仕置きしてアンアン泣かせちゃうからっ!」
そんな俺をジト目で見つめると、シロがため息を吐きながら言った。
「勇吾がツンデレだとは知っていたけど、スタジオの小窓から真顔でずっと覗いていたり、スタジオに入って来ても、何も話さないままオレをじっと見つめて来たり、オレの脱いだ服の匂いを真顔で嗅いだり、オレの後ろを真顔で付いて回ったり、そんな勇吾をみんなが怖がってるよ?」
なんだ…そんな事。
「シロは嫌なの?」
腕の中の彼を見つめてそう尋ねると、あの子は俺を見上げて言った。
「嫌じゃない…」
も~~~!本当に、可愛いんだから!
「じゃあ、良いじゃないの~!良いじゃないの~!」
えっちらおっちらあの子を腕の中に入れながら歩くと、車まで向かった。
準備は整った…後は決行を待つばかりだ。
#シロ
「シロ、おいで?勇ちゃんのお隣においで?」
そう言ってベッドの中で全裸になってオレを呼ぶ勇吾を見つめる。
…毎日、毎日、エッチして…勇吾は疲れないのかな…
ヒロさんがモモにポンコツになった今、慣れない片言英語を駆使してダンサーの子達と意思疎通をしてるから…
正直、疲れてて、このまま眠りたいんだよ。
呆然と勇吾を見つめるオレに、勇吾はバンバン布団を叩いて、捲って、自分の勃起したモノを見せつけて言った。
「シロ!勇ちゃんのおちんちんが大変な事になるからっ!早くおいで~?」
この人は、見た目がカッコいい分…こうしてる時が、最悪に見える。
目つきだって…見開き過ぎて…これじゃあ、やばい人じゃないか…
「勇吾?嫌だよ。なんだか、ガッツかれて…興ざめするんだ。」
オレはそう言って首を横に振ると、ベッドに腰かけて言った。
「ムードがない…」
そんなオレの言葉に、愕然と表情を固める勇吾…その表情の方がさっきのデレ顔より、断然イケメンに見えるから…悲しい。
「ど、ど、どうしたら良いんだ…シロが可愛くて、可愛くて、勇ちゃんは我を忘れてしまうんだ…!確かに、ムードが無かった…!本能に身を任せすぎた!」
そう言って両手で額を押さえながら、自己反省を繰り広げる彼を見て…
ふと、思いついてしまった。
オレが勝手に名付けた“桜二のセクシータイム”…
それはお風呂に入る前の脱衣所で開催される。
彼の武骨にシャツを脱ぐ姿に悶絶して、彼が簡単に脱ぎ捨てたパンツに憤った…あの、セクシータイムを…
彼で催してみてはいかがかと…思いついてしまったんだ。
ついこの間までステージでストリップショーをしていた、この人の、セクシータイムを…ぜひとも、見てみたい!!
「勇吾…風邪ひくからぁ…服を着なよぉ…!」
オレはそう言うと、急いで彼の下着とシャツとズボンを持って来て、彼に着させる。
「…なんだ、シロは俺がムード無し男だから…もう、今日はしたく無くなっちゃったのかなぁ…。それだけを楽しみに、今日の仕事を頑張ったのになぁ…」
ぶつぶつ文句を言う勇吾に…パンツとズボンを履かせると、白くてシャリシャリのシャツを着せて、ボタンを下から留めていく。
上から二番目のボタンまで留め終わると、オレを見つめてクスリとほほ笑んだ彼の顔に、ドキッとする。
「どうして…シャツなんて着せたの…?」
急に色っぽい声を出してそう言うと、勇吾はオレの頬を撫でて言った。
「シロ…勇ちゃんに、どうして欲しいの…?」
か~~~~!
良いじゃないか!さすが分かってる!
彼は瞬時にオレの望みを理解した様に、色っぽい目つきをすると、熱い視線でオレを見つめた。
プロだ!
オレを見つめる彼を見つめて、口元をだらしなく緩めると、彼に言った。
「…別に」
ふふっと耳元で吐息交じりの笑い声を吹きかけると、優しく体を抱きしめてゆっくりと背中を撫であげる…そんな、彼の手つきは、最高にセクシーだ!
「あふふ…」
だらしなく笑うと、ベッドに腰かけてお尻と足を動かしてベッドの上にズリズリと移動して座った。
そんなオレを見下ろすと、勇吾は顎を上げて煽る様に見つめてくる!
「きゃ~~~!」
両手で口元を押さえて大興奮すると、すでに趣旨を理解していた彼はもっとサービスをしてくれる。
オレが下から留めたシャツのボタンを、少し引っ張りながら上から順に外していく。伏し目がちに斜め下を見つめる、そのアングルも、その表情も、最高にセクシーで…血圧が上がって、クラクラしてくる!
「はぁはぁ…あぁ…なんて事だぁ!」
ベッドの上で興奮して喜ぶと、シャツのボタンを全て外した勇吾が、首を少し引いて上目遣いにオレを見つめながら、片方だけ肩を出して首をのけ反らせた。
悩殺だ…
言葉も出ない。
だらしない笑顔で彼を見つめ続けると、シャツを脱ぎ捨ててオレに飛ばした。
「わぁ~~!」
そう言って彼のシャツをキャッチすると、ガルルと唸って彼のむき出しの上半身に釘付けになる。
あぁ…!なんて、素敵な胸板なんだ!舐めたい、舐めたい、舐めたい!
「シロ?今…俺の何を見てるの?」
挑発する様に色っぽい声でそう言うと、勇吾は自分の体に両手を添わせて腰をゆるゆると動かし始める。
「はぁ~~~~!」
腑抜けた声を出してベッドの上に四つん這いになると、彼を見上げてよだれを垂らす。
美味しそう…!
…食べちゃいたいっ!!
そんなオレを冷めた表情で見つめると、彼はゆっくりとズボンのチャックを下げていく。
あぁ…神様、この時間をありがとう…!
桜二よりも魅せ方を知ってる彼のセクシータイムは…まさに、オレが望んだ、それ、その物だ。
ズボンを腰まで下げると、すでに勃起した彼のモノがパンツの上から見て分かって…
本能のサガなんだ。
彼の股間に目が釘付けになっていると、それをあざ笑うかのように、自分の手を当ててゆるゆると腰を揺らしながら擦った。
だめ…すっごい、エッチだ…
堪らなくなって潤んだ瞳で勇吾を見上げると、彼はオレを熱っぽい視線で見つめながら迫って来た。
「シロ…どうしたの…?とっても、エッチな顔をしてるよ?」
ベッドの上…オレに迫る彼を後ずさりしながら距離を保って見つめる。
オレの目の前で膝立ちすると、彼はゆっくりとズボンを膝まで下げて、剥き出しになった膨らんだ股間を見せつけた。
そっと手を伸ばして、撫でてしまいたくなる丁度いい膨らみを…じっと見つめてよだれを垂らすと、勇吾を見上げる。
彼はオレの体に覆い被さる様に体を屈めると、耳元に熱い吐息を当てて囁いた。
「あぁ…シロ、とっても俺に触って欲しそうだよ…?」
うん…めちゃめちゃ触って欲しい…そして、勇吾のおちんちんが堪らなく欲しい…!
オレの頬に頬ずりすると、勇吾はチュッとキスして体を離していく。
そして再び膝立ちすると、オレの目の前でパンツをゆっくりと下ろして行った…
あまりにエッチで…あまりに美味しそうで…我慢できなかった。
オレは彼の腰に手を掛けると、彼の勃起したモノをペロペロと舐め始めた。
「ふふ…」
頭の上で彼のエッチな笑い声が聞こえて最高に気持ち良くなると、トロンとトロけた瞳のまま彼のモノを口の中に入れて、扱き始める。
ぐんぐん硬くなる彼のモノを舌で絡めて…あの秘儀を使った。
「あぁ…!シロ…イッちやうよ…勇ちゃんが早いって思われちゃうよ…!」
そう言ってオレの頬を優しく掴むと、ゆっくり自分の股間から離して言った。
「お触りしたね…?シロは、いけない子だ…」
ふふっ…最高にエロイじゃないか…
彼の声に気持ち良くなると、トロけた瞳を潤ませて勇吾の頬に頬ずりする。
堪らないんだ…堪らなく、この人がエロくて…触って欲しくなる。
頬ずりした頬をそのままズラすと、彼の柔らかい唇を舌で舐めて食んだ。
そのまま熱いキスをして吐息を口から吐き出しながら、勇吾の髪を撫でて、彼の半開きでセクシーな瞳を見つめて、どんどん彼に溺れていく。
「あぁ…勇吾、勇吾…かっこいい…大好き…大好き…!」
彼の胸を撫でて、彼の腰に手を回すと、自分の方に引き寄せて彼の股間に自分の勃起したモノを擦っておねだりする。
「して…勇吾、シロにしてよ…エッチな事してよ…!」
「ふふっ…シロ…可愛いね、とっても可愛いんだ…」
すべすべな彼の肌を撫でると、手のひらがぼっと熱くなって、擦り付けた股間はダラっと液を漏らして濡れ始める。
オレのパジャマを乱暴に引き下げると、勇吾がオレのモノを口に入れて扱き始める。
「あっああ!勇吾…勇吾…気持ちいの、んん~~!イッちやう…はぁはぁ…ああん」
彼の柔らかい髪を撫でながら腰を伸ばして、仰け反る体が一番エッチに見える様にしならせる。
興奮した彼がオレのモノを本格的に抜きにかかると、堪らない快感に体が跳ねて背中がベッドに沈んでいく。
「ああ…勇吾…イッちやう…イッちやう!ん、あっ、あぁあん!!」
腰を激しく跳ねさせてオレがイクと、勇吾はオレの中に指を入れて言った。
「エッチだよ…シロ、とっても可愛くて…止まらなくなるんだ。お前の全てが欲しくて…、お前の全てを独り占めしたくなる。」
彼の指がオレの中を気持ち刺激して、イッたばかりのオレのモノが再びビクビクと反応し始める。
「んん…勇吾…あっああ…らめぇ、気持ちい…あっあん、ああん…」
まるで…桜二とセックスしてる時みたいに…勇吾の声や息使い…触れる体の感触に、頭の中がどんどん気持ち良くなって、真っ白になっていく。
「頂戴よ…勇吾の、勇吾の、おちんちん…シロに頂戴よ…!」
堪らずそう言うと、よだれを流しながら彼の勃起したモノを手の中に入れて扱いた。
「…まだ、あげない。」
あぁっ!!
首を横にブンブン振って正気を保ちながら、今度は可愛くおねだりして言った。
彼の胸に頬ずりしながら、甘ったるい声で言った。
「勇吾…勇吾の…シロに挿れてぇ…?ねえ…ねえ…!お願いだよぉ!」
彼のモノがドクンと疼くと、快感を想像して堪らなくなって、彼の胸に舌を這わせてうっとりと狂いながら乳首を舐めた。
「はぁはぁ…まだ…ダメ…」
意地悪な勇吾に興奮すると彼の首筋を舐めて、エッチな吐息を彼の耳に届けてその気になる様に挑発する。
その気になって我慢出来なくなる様に、甘ったれて可愛くおねだりする。
「勇ちゃぁん…シロにしてよぉ…うんと気持ち良く、勇ちゃんのおちんちんでしてよぉ…!大好きなのぉ…勇たんが大ちゅきなの…!」
そう言いながら、彼の頬をペロペロ舐めておでこを擦り付けてトロけながら甘える。
「あぁ…シロ…!」
勇吾はそう言うと、オレの中に勃起して硬くなったモノを挿れて、ねっとりと腰を押し付けて動かした。
「あぁあ!勇吾…気持ちい!見て…見てよぉ!シロの事、見て!」
苦悶の表情を浮かべる彼の頬を掴むと、自分の方に向けて、だらしなく快感を感じる自分の顔を見せつける。
「はぁはぁ…シロ…勇ちゃんの気持ちいの?」
そんな余裕のない表情をしてる癖に…煽るのは、いっちょ前なんだ!
オレは勇吾の胸に手を這わせて彼の乳首を撫でながら言った。
「気持ちいよ…あっああん…勇ちゃんの、大好きなの…もっと、もっと頂戴よ…」
「あっあ…はは…ちょっと待ってよ…」
「だめぇ!止まらないで…気持ちいの…このまま、もっと続けてよぉ…!」
「あ~はは…ちょおっと待ってね…」
挿れて早々にイキそうになったのか…勇吾はそう言って動きを止めると、ジッと壁を見つめ始める。
ふふっ!おっかしい!
「あふふ!」
オレは吹き出し笑いをすると、ジッと壁を見つめてカッコいい顔になった彼の首に掴まって体を起こした。
「シロたん?ちょっと待つんだ…」
そう言ってオレの腰を掴む彼を無視して、ゆるゆると腰を動かしながら彼に舌を出して言った。
「舐めて~?」
「あっうう…!」
オレのトロけきった顔を見て、勇吾はオレの中で果ててしまった。
「あはは!」
そう言って笑うと、イキ顔が可愛かった彼を押し倒して、中に挿れたまま再び腰を動かし始める。
「勇吾…可愛い…勇吾可愛い…!」
まるで彼を捕食してるみたいに彼の惚けた顔に沢山のキスを落とすと、ねっとりとキスしながら腰を動かして彼のモノを扱いて大きくする。
「あっぁ…シロ…ダメ、気持ちい!」
知ってる。オレは上に乗るのは得意なんだ。
まるでファックしてるみたいに…オレの下で、よがる男を、見るのが大好きなんだ。
「ん~~!気持ちい…あっああ…勇吾、おっきくなったぁ…!」
そう言いながら体を仰け反らせて、彼のモノを自分の中で気持ち良くなるように沢山扱いてあげる。
両手を自分の体に沿わせて挑発する様に彼を見下ろすと、自分の乳首を摘みながら最高に乱れて喘ぎ声をあげる。
「あっああ!イッちやう!勇吾~~!イッちやうよ!はぁはぁっああん!!」
彼の上で激しく腰を振るわせてイクと、オレの中で再び彼が果てていく…
「あぁ…気持ちいい…勇吾の気持ちい。すっごく顔が可愛いんだ。」
うっとりそう言うと、オレの中からドロッと出てくる彼のモノをそのままに、ねっとりと愛しい人に愛の口づけをあげる。
「シロ…シロ…」
何度もオレの名前を呼ぶ惚けた彼の唇を、何度も食んで舐めて、そのままガブリと全部口の中に入れると思いきり息を吹き込んだ!
「ぶほっ!」
鼻から空気を出した彼に、大笑いしながらベッドに寝転がると、一緒になってケラケラ笑う彼に抱きしめて貰う。
「こらぁ~!シロはいたずらっ子だなぁ~!」
あ~はははは!!腹が痛い!
「ぐふふ!あふふふふ!」
笑いが止まらないオレをじっと見つめると、勇吾が優しく瞳を細めて言った。
「こんな可愛い子…どうしよう。お嫁さんにしちゃった…」
あははは!!
「…んふふ!オレは勇吾の物だよ?」
ニヤけた顔をしながらそう言うと、勇吾はにっこりと笑ってオレの唇にキスをして言った。
「うん…俺のシロだ。」
可愛い…
可愛くて、繊細で、剛毅で、我慢強くて、勇ましい、オレの夫。
「もっとしてよ…」
彼の柔らかい髪を撫でてそう言うと、勇吾はニヤリと口端をあげて笑った。
あと、2日でオレは彼と一旦離れなければいけない。
それを思ったら、ずっとセックスしてたくなった。
ピピピピ
後…2日。
アラームの音に重たい瞼を開くと、今日も半開きの瞳の美しい男と目が合った。
「シロ…おはよう。」
「ふふ…勇吾、おはよう…」
彼の柔らかい髪を撫でて彼のすべすべの肌に頬ずりすると、クッタリと胸に顔を埋めて甘える。
彼の香りで胸の中がいっぱいになるまでそうして抱き付くと、彼の呼吸音を耳の奥に届けながら目が覚めるまでひとつになってる。
「…ショーンに聞いたよ。もう通し練習が出来る様になったんだって?すごいね。どうやったの…」
オレの髪を撫でながら彼が聞いて来るから、彼の胸を指で撫でながら言った。
「なにも…?ただ、みんながプロで、上手だから…任せただけ。」
オレがそう言うと、勇吾はクスクス笑ってオレをギュッと抱きしめて言った。
「シロ…一緒にこの仕事をしようよ。お前がいてくれたら…百人力だよ。」
「ふふっ!じゃあ…ストリッパーを続けられなくなったらそうしようかな…。今はまだ、歌舞伎町のあの店で踊っていたいんだ。あそこが好きなんだよ。だって、オレのホームだもん。」
そんなオレの言葉に、オレを抱きしめた彼の腕の力が強くなった。
今日もいつもの様に彼の大きなハマーに乗ると、車が渋滞するロンドンの街を彼のオフィス兼スタジオへと向かう。
途中、朝ご飯を買うのも忘れずにね…
もうすぐ彼と一旦お別れをして…桜二と依冬の元へと帰る。
テレビ電話で話した彼らは、すでに荒れ狂う猛者の様に目をギラギラさせて挙動不審者になり果てていた。
「シロ?4日って言ってたじゃない?あれは、4日目に帰ってくるって事?それとも、4日経った次の日に帰って来るって事なの?そこら辺をはっきりしてよ。」
依冬が食い気味にそう言うと、隣でぼんやりと呆けていた桜二にスイッチが入った。
「確かに!ずっとモヤモヤしてたんだよ。さすが、依冬は言う事が違うね?着眼点が鋭いんだ。」
こんな仲良さげな会話をしても、携帯の画面に映るふたりは真顔で携帯の向こう側のオレを凝視してるんだもん。笑っちゃうよね?
結城さんがふたりいるみたいに異様だよ?
「えっと…4日を過ぎた次の日に帰るつもりだよ?だから…えっと、今日を含めてあと2日こっちに居て、3日目に帰るって事。」
勇吾を背中に乗せながらそう言うと、桜二が舌打ちして言った。
「ちっ!ダメだろ?そう言う事はちゃんとハッキリ最初に言わないとさ!分からないじゃないか!」
桜二が怒った…
「ん~…」
オレはいつも彼に怒られた時そうする様に、口を噤んで、視線を逸らして、適当に返事をした。
彼らは限界ギリギリを味わって、ちょっとだけ、イカれ始めた。
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