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第二章 恋の始まり
「まさか……」
一週間後、一志は希にもらった宝くじの番号を二度見した。
一桁一桁、指で追いながら確認した。
「一等・三億円……」
夢じゃないかと思った。
夢なら覚めないでいて欲しい。
だが、その夢は現実。
「これだけあれば、助かる」
事業を、再開できる!
だがしかし。
「これは、あの子のものなんだ」
死に逃げようとした私に、温かな飲み物と希望を与えてくれた、月川くん。
そのまま黙ってしまえば、解らない。
『一週間後、また来るよ』
あんな約束、破ってしまえばいい。
もう二度と、あのカフェに行かなければ解らない。
「だが……」
甘いと判っていながら、一志は出かける支度を始めた。
「この当たりくじ三億円、私に貸して欲しいとお願いしよう」
そう心に決め、出かけた。
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