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第二章・2
ドアベルが鳴り、希は店の出入り口を確かめた。
「いらっしゃいませ! ……あっ」
「やあ。一週間ぶりだね」
以前とは違い、明るい窓際に一志は座った。
「ブレンド、一つ」
「かしこまりました」
ふう、と一志はネクタイを整え直した。
窓の外を眺めるより、希を目で追った。
希がオーダーを伝え、マスターと思われる男がコーヒーを淹れている。
香ばしい匂いが、部屋いっぱいに広がった。
(彼が、月川くんのお兄さん、か)
兄が店長の、このカフェ。
その手伝いをしている、と言ってたが……。
(給料とか、ちゃんともらってるのかな)
身内で家業を切り盛りする際、ついつい緩んでしまいがちなのが、その賃金だ。
今月は売り上げが伸びなかったから、と月給より低く渡されることもある。
(弟くんと少し、話ができればいいんだけど)
マスターの人格を疑うわけではないが、三億もの金が絡むと、当たりくじを返せと言われる恐れがあった。
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