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第二章・3

「お待たせしました」 「ありがとう」  一志は、素早く辺りをうかがった。  客は、カウンターに二人。  常連らしく、マスターと話に花を咲かせている。 「月川くん、お店が終わった後に会える?」 「え?」 「大切な話があるんだ。駅前のイタリアンレストラン、知ってる?」 「あ、はい」 「食事をご馳走するから、8時に来て欲しい」 「でも」  そこで、マスターが希を呼んだ。  慌てて戻る希に、一志は小さく声をかけた。 「きっと、来てね」  希は返事をしなかったが、一志は彼に声は届いたと思っていた。

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