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第二章・4
「宝くじの結果は、彼も気になるはずだ」
カフェでは、あえてその話はしなかった。
もしかして当たったかも、の期待は、ハズレを知るまでついて回る。
案の定、希はレストランへやって来た。
「月川くん、こっち」
軽く手を挙げると、希はにっこり笑ってこちらへ歩いてくる。
(何ていい笑顔だ)
こんな天使のような子に、金の話をするのは気が退ける。
できれば、もっと。
もっと、チャーミングな。
(初恋はいつだった? なんて会話を楽しみたいな)
何だか、マズいぞ。
私は、この子に惹かれてる?
「お待たせしました」
「カフェと同じセリフだ」
そう言うと、希はまた笑うのだ。
ああ、もう恋に片足突っ込んでしまっているのかもしれない。
一週間前には、棺桶に片足突っ込んでいたというのに。
「まずは、食事にしようか。何か、食べたいものがある?」
「僕、こういうお店に慣れてなくて。お任せします」
そこで一志は、シェフのおすすめコースを注文した。
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