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第二章・8

「私と、お付き合いしてくれないかな」 「え?」 「すっかり月川くんが、希くんのことが好きになっちゃったみたいなんだ」 「二回しか会っていないのに?」  二回会えば、充分だ。  それに、私たちの出会いは普通じゃない。 「私の命を救ってくれた。今度は私が、君を救いたい」 「来栖さん」  どうしよう。  希の心は、揺れた。 「兄に相談してから……」 「君の恋愛だよ? お兄さんは関係ない」  もう一度、希は思った。 (この人なら、僕を救ってくれるかもしれない)  賭けてみよう、来栖さんに。 「じゃあ、僕で良ければ」 「ありがとう!」  もうそのまま希を自分のマンションへ連れ去りたい一志だったが、それは拒まれた。 「外泊したら、兄さんに叱られますから」  仕方なく希を送り、一志は考えた。 「希くんはもう大人なのに、なぜあそこまでお兄さんに怯えるんだ?」  まずは、彼を兄から解放してあげることが先決だ。  そう思うと、やる気が湧いて来た。  希と出会い、どんどん生気を取り戻してゆく一志だった。

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