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第三章 キス

 初デートのあとの翌日も、一志はカフェに現れた。 「おはよう」 「おはようございます」  窓際の席に掛け、ノートパソコンを開く。  現代ではこうして、どこででも仕事ができる。  便利な世の中になったものだ。 「お待たせしました。ブレンドです」 「ありがとう」  昨日は楽しかったね、と軽いあいさつ代わりの会話をし、一志は今一度宝くじの件を持ち出した。 「それで、例の当たりくじのことだけど」 「あれはもう、来栖さんのものですから。好きなように使ってください」 「じゃあ、一時的に借りる、ということでいい?」 「はい」  よし、と一志はパソコンに向き直った。 (バリバリ稼いで、すぐに三億円を希くんに返そう)  そこで、ふと気づいたことがある。

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