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第三章・3
一週間後、一志は希を二回目のデートに誘った。
今日は寿司をご馳走するよ、と言っていたが、連れて来られた店に希は驚いていた。
「こんな本格的なお寿司屋さんだったなんて」
「一皿100円、じゃないよ」
寿司をつまみながら、希は宝くじについて一志に提案した。
「あのくじは、一志さんが購入したことにして換金した方がいいと思います」
「どうして?」
「僕がくじに当たったことが兄に知れると、きっと面倒なことになりますから」
ああ、まただ。
こんなに素敵な希くんなのに、どうしてその兄は厄介なんだ?
「最悪、一志さんへお金を渡せなくなってしまいます」
「それは困るな」
希はくじの購入店の情報を伝え、一志が買った、ということにした。
「何から何まで、すまないね」
「いえ、当然のことです」
「どうして?」
「え? あ、……僕たち、お付き合いしてますから」
ふあっ、と一志は変な声を出すところだった。
感情を必死で殺し、お茶とともに声を飲み下した。
はぁ、と息をついて。
「嬉しいよ、希」
「希、って」
「馴れ馴れしいかな」
「いえ……、僕も嬉しいです」
一志は、舞い上がった。
この可愛い素敵な人は、私の恋人なんですよ!
そう、全世界に誇りたかった。
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