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第三章・6

「今日はどうしたんですか? カウンターで兄さんとパチンコの話なんか」 「希を救い出す作戦の一環さ」  だったらいいけど、と曇り顔の希だ。 「一志さんまで依存症になったら、僕」 「ならないよ。情報収集に、軽くやってみただけだから」  季節の懐石をつつきながら、希はまだ不安げだ。 「大丈夫。それより、最近はどう? 兄さんに虐められてない?」 「え、あ。ん……、大丈夫です」  まさか、身体を犠牲にしている、とはとても言えない。  しかし、歯切れの悪い希の返事に、一志は心を傷めた。 (これは、まだ虐待を受けているな)  顔はきれいで、暴行の跡はない。  だがきっと、服で隠された部分に痣が残っていたりするんだろう。  そんな風に、一志は考えていた。  何だか湿ってしまった空気に、希はわざと明るい声を上げた。 「情報収集は、ほどほどにしておいてくださいね?」 「ふふふ。私はすでに、希依存症だから間違いは冒さないよ」

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