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第四章 好きになってよかった

 一志はカフェのカウンターに座っては、尊相手にパチンコの話をした。  驚くことに、常連客のほとんどがパチンコファンだ。  他に話のネタは無いのか、というほど尊はパチンコに情熱を傾けていた。 「マスター、『ポセイドン』の2号店、今日が新台入れ替えだよ?」 「来栖さん、誘惑しないでくださいよ~」  名前を教え、フランクな口調で話せるほど、一志は尊に食い込んでいた。  そして。 「だから。軍資金なら、私が立て替えてあげる、って言ってるのに」 「いや、来栖さんは一応お客さんだから」  一応、との物言いに、二人で笑った。  しかし、笑いを納めた後に一志は勝負に出た。 「私は投資家でね。ぜひ、マスターに投資したい」 「と、投資、ですか?」 「もし勝てば、元金プラス一割上乗せしてくれれば、それでいいよ」  何という強烈な誘惑だろう。 「じゃ、じゃあ。2万円ほど……」 「それじゃ足りないだろ? 5万円、持って行ってよ。負けても、催促はしないから」  ついに尊は、陥落した。 (金の貸し借りに敏感な希は、嫌がるかもしれないが。これが一番の早道だ)  尊が出かけた後で、謝ろう。  やや後ろめたい気分ではあったが、一志の計画は第二ステージへ移った。

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