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第四章・5
「ダメッ! やめ、てぇえ!」
「……これは?」
紅い跡が、鎖骨にある。
それだけじゃない。
よく見ると、希の全身に。
いや、性感帯と思われる箇所に、点々と跡が残されている。
『僕は、兄さんから逃げられないんです』
以前、希が訴えてきた言葉が甦る。
「希、まさか」
「いや……ッ」
「お兄さんは、君を」
呻いて、希は静かに泣きだした。
「ごめんなさい。ごめんなさい……」
もうダメ。
知られた。
一志さんに、僕の最もただれた部分を見られた。
しかし一志は、そんな希を優しく抱きしめた。
「謝るのは、私の方だ。希、辛かったな。よく耐えてきたな……」
「一志さん!」
まるで子どものように、希は一志にむしゃぶりついて泣いた。
「いいよ。いっぱい泣いていいよ。今まで我慢してた分、全部泣いていいよ」
泣いて泣いて、泣き疲れて。
しゃくりあげながら、希は一志の腕にしがみついた。
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