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第四章・6

「一志さん、僕のこと嫌いになりましたか?」 「全然。前より、好きになった」 「嘘」 「嘘じゃない。心から、愛おしい」  だったら。 「だったら、僕のこと抱けますか?」  兄に身体を許すような人間を、愛せますか? 「喜んで」  一志は、改めて希にキスをした。  先ほどと変わらない、情熱的な口づけ。  そして、やはり首筋から鎖骨に向かって舌を滑らせた。 「んぁ……」 「希、君は私のものだ。そして私は、君のものだ」 「一志さん……」  その言葉に偽りのないことを示すため、一志は希の体中をくまなく愛した。  舌を、唇を、歯を使い。  手のひらを、指先を、指腹を使い。 「あぁ、ッん。はぁ、はぁ、あ。あぁあ……」  希の息が、どんどん上がってゆく。  打てば響くような、敏感な身体だ。 (まさか、尊のやつが希を嬲っていたとはな)  こんな身体に仕上げたのは、他ならぬ兄なのだ。  だからこそ、希を大切に想った。  地獄を這って生きてきた彼を、強い子だと噛みしめた。

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