28 / 53
第四章・6
「一志さん、僕のこと嫌いになりましたか?」
「全然。前より、好きになった」
「嘘」
「嘘じゃない。心から、愛おしい」
だったら。
「だったら、僕のこと抱けますか?」
兄に身体を許すような人間を、愛せますか?
「喜んで」
一志は、改めて希にキスをした。
先ほどと変わらない、情熱的な口づけ。
そして、やはり首筋から鎖骨に向かって舌を滑らせた。
「んぁ……」
「希、君は私のものだ。そして私は、君のものだ」
「一志さん……」
その言葉に偽りのないことを示すため、一志は希の体中をくまなく愛した。
舌を、唇を、歯を使い。
手のひらを、指先を、指腹を使い。
「あぁ、ッん。はぁ、はぁ、あ。あぁあ……」
希の息が、どんどん上がってゆく。
打てば響くような、敏感な身体だ。
(まさか、尊のやつが希を嬲っていたとはな)
こんな身体に仕上げたのは、他ならぬ兄なのだ。
だからこそ、希を大切に想った。
地獄を這って生きてきた彼を、強い子だと噛みしめた。
ともだちにシェアしよう!