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第四章・8
「一志さん、一志さん、お願いッ!」
「何?」
「中に。ナカに出して!」
「それはダメだ。妊娠したらどうする」
「ピル、いつも、飲んでるから。だからッ!」
ここに来て、一志は尊を心底憎いと思った。
希は、兄の子を孕まないようにと、常に薬を飲んでいるに違いないのだ。
「解った」
ぐん、と勢いをつけ、一志は思いきり奥までペニスを突き立てた。
「あぁ! んあぁあ!」
何度目かの精を希は吐き、次いで一志も彼の体内にたっぷりと注ぎ込んだ。
「あ、あぁ、あ! 一志さん……ッ!」
「愛してるよ、希」
互いの身体のわななきを、確かめ合った。
その熱を、感じ合った。
「希、大丈夫?」
「ん……。すごかった、です……」
まさか、この部屋で兄さん以外の人に抱かれるなんて。
(でも、とても嬉しい)
体内から去ってゆく一志が、名残惜しい。
「一志さん」
「何かな」
「僕、あなたを好きになってよかった」
「私も、だよ」
二人で、甘いキスを交わした。
アイリッシュコーヒーに浮かぶ生クリームのように、甘い甘いキスをした。
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