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第五章・6

 二人仲良く夕食を終え、一志はバスを使っていた。  思わず、鼻歌がこぼれだしそうな気分だ。  そんな時、ガラス戸がそっと滑った。 「一志さん」 「え、希!?」  そこには、美しい裸身の希が立っていた。 「背中、流そうかと思って」 「あ、え、う、うん! 頼むよ!」  これは嬉しい展開だ。  一志は石鹸とボディタオルを、希に渡した。  彼は優しく、ていねいに背中をこすってくれる。 「ああ、気持ちがいいよ」 「僕、こうして誰かの背中を流すのって、久しぶりです」 「それは、お父さん?」 「はい。だから、一志さんも洗ってあげたくなって」  尊にはしたことのない行為を、一志にしたいと思う希だった。 (僕の身体は兄さんの手で汚れてしまっているけど)  それでも愛してくれる一志に、希はすっかり心を委ねていた。 『自分を汚れてる、なんて思っちゃいけないよ』 『希の身体も心も、私には清らかそのものだよ』  一志は、希を抱くたびにそう言っては、彼の気持ちを和らげた。  希もまた、一志に夢中になっていた。

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