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第六章・3
三ヶ月ぶりに、一志はカフェ・ムーンリバーへ来ていた。
だが表には、『店休日』の看板が。
「やっぱりな」
希に借りた鍵でドアを開け、一志は店内に入った。
荒れている。
希が磨き上げていた床は、埃だらけ。
観葉植物も、枯れかけている。
カウンターの内を覗くと、洗い物が積み重なっている。
「全く。希が経営していたようなもんだな、この店は」
カウンター奥の階段を上って、二階へ。
尊の部屋へ、無断で入る。
彼はベッドで、いびきをかいていた。
「マスター。モーニングセットを頼みたいんだけど!?」
一志の大声に、尊は驚いて目を覚ました。
「く、来栖さん!?」
「とんだ体たらくだね、マスター」
立ったまま手を腰に当てて、一志は寝具に半分くるまっている尊を見下ろした。
「どう? 調子は」
「今日こそ、絶対に勝ちますよ。攻略本も買って、ちゃんと読んでるんだから!」
やれやれ。
誰もパチンコの話なんか、しちゃいないのに。
依存症もここに極めたり、といったところか。
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