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第六章・4
「マスター、正直に話して欲しいんだけど。私以外に、お金を借りてるね?」
「う……」
「消費者金融に、いくら借りた?」
「全部で、300万ほど」
全部で、ということは、多重債務に陥っているのか。
「やっぱりね」
「どういうことですか? 来栖さん、あんた何でもかんでもお見通しなんですか?」
「ギャンブル依存症の人間の末路など、容易に想像がつきますよ」
「お、俺は依存症じゃない」
声が弱くなったところを見ると、薄々勘付いてはいるのか。
自分の今の状況に。
「取引しませんか。マスター」
「取り引き?」
「負債はすべて、私が代わりに支払います。その代り、マスターにはパチンコを辞めてもらう」
「……」
大丈夫、と一志は尊の肩をぽんと叩いた。
「マスターは、病気なんです。依存症は、心理療法やカウンセリングなどで治療できる」
病気、との言葉に、尊は腑に落ちたような顔をした。
「俺、パチンコやめようとしても、どうしてもやめられなくて」
「病気のせいです。心配しないで」
私に任せておきなさい、との一志を見上げる尊の顔つきは、ひどく弱弱しく見えた。
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