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第六章・6

「一志さん、第三ステージ、ってなんですか?」  希は、思いきって一志にそう訊ねていた。 「え!? な、なぜ?」 「昨夜、一志さんは寝ながらそう言ってました」 「聞かれてたのか……」  しかし、ここでごまかしては希の不信を買う。  一志は正直に、尊の現在と今後の展望を明かした。 「兄さんが、そんなひどい有様に」 「うん。でも、大丈夫。借金は全額返済したし、お兄さんはギャンブル専門外来に通うことになった」 「病院、ですか?」 「時間はかかるかもしれないけれど、きっと更生させてみせるよ」  希は喜ぶかと思っていた一志だったが、彼の反応は湿っていた。 「すみません。借金を肩代わりだなんて。僕、働いてお返しします」 「え? いや、その必要はないよ。その、何だ。困った時は、お互い様」 「僕、一志さんに迷惑ばかりかけています」 「違う違う! 迷惑だなんて、そんな!」 「カフェに戻って、兄さんの世話を……」 「それだけは、やめてくれ!」  ひとまずお茶でも飲んで、落ち着こう。  一志の提案に、希はキッチンへ向かった。 「まさか、そう来るとは思わなかった……」  背中を、冷汗が流れていた。

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