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第六章・8

 言ってしまった。  もう、後には引けないこのセリフ。 (半年前までは、一生言うことのない言葉だと思ってたけど)  言ってしまった!  希は、円い目をして口を半開きにしている。  そして、その瞳からみるみる涙が浮かんできた。 (え? 泣くほど嫌なのか!?) 「嬉しい……」 「え?」 「嬉しいです、僕」 「じゃ、じゃあ。希、私と」 「僕なんか、一生結婚できないと思ってたのに」  希、と一志は彼の手を取った。 「大切なことなので、もう一度言うよ。結婚して欲しい」 「ありがとう。喜んで」  二人で、そっと口づけをした。  互いをいたわり、これからの未来を築く口づけだ。 「もう少し、ロマンチックなシチュエーションで言えば良かったかな。婚約指輪も用意してないし」 「状況なんて、どうでもいいです。今は、ただ嬉しいだけです」  ありがとう、と一志は希を優しく抱いた。  希も、一志をしっかりと抱き返した。  互いの体温を、伝えあった。  互いの愛情を、伝えあった。

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