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第七章・3
愛し合った身体をほどき、一志は希にささやいた。
「明日、見せたいものがあるんだ」
「何ですか?」
「それは、内緒。でも、喜んでもらえると思う」
「じゃあ、楽しみにしています」
一志の言う、第三ステージのことを、希は忘れてはいなかった。
日常でも、たまに会話に登ることがある。
『希、第三ステージはなかなか難しいよ』
『希、第三ステージも山場だよ』
『希、もうすぐ第三ステージが整うよ』
希は、この『第三ステージ』とは、ギャンブル依存症の兄を更生させることだと思っている。
だから、一志の言葉に一喜一憂していた。
(見せたいもの、って。もしかして、更生してパチンコをやめた兄さんかな?)
兄と会うのは、正直まだ怖い。
ただ、間に一志がいれば別だ。
彼は、何があっても希を尊から守る男だろうから。
一志の腕枕でうとうとしながら、希は明日を待った。
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