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第5話 初

 じゃあ一緒にシャワーを浴びよう。  そう敦之さんに言われた。  俺は誰かと一緒に風呂に入るのも学生時代以来で恥ずかしくて、終始俯いたままとにかく急いで服を脱ごうとしたら、「何をしているの?」と苦笑いを溢されて、慌てて、だってシャワーって、と言いかけたところをキスで塞がれた。  ――平気だよ。  そう微笑まれて、シャツのボタンを握りしめる手に彼の手が重なった。  そして、キスをしながら、服を脱がしてもらった。  俯いたまま、敦之さんの裸を途中でチラリと見たけれど、あの高級そうなスーツの下にある裸はしっかりと引き締まっていて、まるでモデルみたいで、貧相な自分の裸に余計に恥ずかしさが増した。  今は。 「あっ……はぁっ……」  高級そうなホテルの、高級そうなシャワールームの、曇りガラスに縋るように手をついて、頬を擦り寄せてる。 「うっ……っ」  セックスできるように準備をしてもらっている。 「拓馬……ここ、いじったりしたこと、ないの?」  お尻の穴に……指が……。  敦之さんに問われて、コクコク頷いた。 「な、い……です」  ローションを手に纏わせた敦之さんの指一本に身体が頭のてっぺんから爪先まで狼狽えてる。 「抱かれる側がいいんだろう? それなのに? もしも、俺に気を使ってるなら」 「ち、ちがくて」 「?」 「だって」  裸も見られたし、情けないほどの初心者だとも打ち明けたんだ。もうこれ以上に恥ずかしいこともないだろう。 「虚しいだけだから」  どうせ誰ともずっと、今もこれからもしないのに、そこで気持ち良くなれたって寂しいだけだと思ったから、そうシャワーの音に掻き消されそうになりながら呟いた。  誰ともしないのにそこをさ、柔らかくしたって仕方がないでしょ? 溜まったものをどうにもならないからと一人で吐き出してスッキリするためだけにそこをいじる必要はないんだから。 「……拓馬」 「……や、やっぱり、俺なんかじゃ役不足ですよねっ、貴方のっ、」 「こっち集中して」 「!」  お尻の孔に指を入れられたまま、もう片方の手が後から前へと回り込み乳首を摘んだ。 「! あっ……ぁ」 「ここに集中して」 「っ」  耳を食まれながら。 「っはぁっ」  硬くなった乳首を摘まれて、抓られて、押し潰すようにこねくりまわされるとたまらなく切なくなった。 「あぁぁぁっ」  孔の中を指で擦られて、ぞわりとそこが熱くなる。違和感じゃなくて、圧迫感じゃなくて、中が潤んでく感じ。 「上手……」 「あ、あ、あ、あ」 「もっと俺の指が入りやすいように、身体の力を抜ける?」  そのまま今度は反対側の乳首も同じように捏ねくり回される。けれど手はさっきと同じ左手だから、もっと密着しないと届かなくて。だから、その、背中に敦之さんの身体がぴったりとくっついていた。 「指、入れさせて」 「あっ……」  それから、多分、これ、敦之さんの、だ。  腰の辺りに触れる、それ。  敦之さんの……。 「あ、あぁ」  さっき一緒くたに扱いてもらった。大きなこの手に敦之さんと一緒に俺のを扱いてもらってイったんだ。  あとで、あれが俺の中に入ってくる。 「くぅ……ん、ンっ」  今、この指に解されてる場所に、あの太いのが挿って。 「拓馬……」 「あ、あ、あ、あ、あ、指、ぃ、ま……」 「二本」 「あぁっ、はぁっ」 「……今、三本だ」 「! は、ぁっ」  あの太いのが。 「あ、あ、あ」  さっきみたいに手で扱かれてる。でもさっきとは違って、敦之さんの手の中で扱かれてるのは俺の、だけ。ぎゅっと握られてる。 「あ」  指がもっと深くを抉じ開けた。 「あぁぁぁぁぁっ」  前を扱かれながら、中を弄る指がどこかを掠めた瞬間、電気が身体を走った気がした。何、これ。これ。 「ここ、前立腺、聞いたことくらいあるだろ? 拓馬……このまま、イケる?」 「ぅ……ん、うん」 「いい子だ。イクとこ、見せて」 「あ、あ、あ、あ」  背中がピッタリと敦之さんの裸にくっついた。前を扱かれながら、後ろをいじられながら。 「あ、あ、あ、イクっイクっ、あ、もうっ……あっ、ああああああああっ」  その瞬間、首筋にチリッと痛みが走った。それが合図みたいにガクガクと腰を揺らしながら、中の一点を指で押されて、促されるように、射精した。敦之さんの手の中に。 「あっ……あっ……はぁっ」  足が……ガクガクする。 「拓馬」 「あっ!」  指が抜かれると身体の芯が途端に腑抜けて、カクリと膝が折れそうになった。 「……おいで」  気持ちいい。 「あっ……」  なにこれ。 「拓馬、ベッドに行こう」  頭のてっぺんにキスされただけで、またイっちゃいそうになった。 「初めては後ろからの方が楽だから」 「は、い」  さっきまでなら死にそうに恥ずかしいって、思っただろう。でも、今は。 「あっ……」  して欲しいって気持ちが勝ってた。 「あぁ」  敦之さんの、挿れて欲しいっていうのが、勝ってた。 「あっ!」 「っ」 「あぁっ、挿って……ぁっ」  三本の指で柔らかく解されたけれど、それよりも太くて、長いのが俺の中に入ってきた。 「あぁぁ」 「すごいな……」 「あ!」  すぐ近くで敦之さんの声がして、思わず腰が跳ねたんだ。 「拓馬の中」 「あああっ……ぁ……あっ」  だってさっきまで高級なものを纏うのがとてもよく似合う高級そうな人だった。 「あ、敦之っさんっ」  けれど耳元で聞こえた声は息が乱れてて、セクシーで、裸、だったから。 「あ、あ、あっ」 「熱くて、締め付けがすごくて」 「あぁあっ、そこ、さっきの、とこ」 「そう、ここ、拓馬が気持ち良くなって射精した場所だよ」  頭の中が痺れてしまう場所。  そこを何度も太いので擦られて、さっき覚えたばかりの気持ち良さに声を出すくらいしかできないまま、シーツをぎゅっと握ってた。 「またしゃぶってる」 「あぁ」 「すごいな」  振り返ったら。 「拓馬の中、たまらない」 「あっ……」  涼しげなファッションモデル並の顔を歪ませて、絵になりそうなほど整えられた柔らかい髪を乱して、引き締まった胸を、腹を汗で濡らす。そんな敦之さんがいた。 「あ、敦之、さ……」  その姿にひどく興奮して。 「敦之さんっ」  中、深くまで抉じ開けてる敦之さんのペニスをキュンと締め付けて。 「ん、ンッ」  覆い被さりながらキスをくれるこの人にただただしがみついて、感じてた。 「あっ、敦之さんっ」  初めてのセックスに、感じてた。

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