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第11話 既知快楽
バスローブなんて着たことなかった。
「あっ……」
腰紐を解かれるとドキドキした。あの手に捲られたら、もう裸になってしまうと思うと、ただそれだけで頬が熱くなった。ベッドに転がされて、今からこの人に裸を見られるかもしれないと思っただけで、狼狽えて俯いてしまう。
「真っ赤だ」
「っ」
一度見られた自分の身体をもう一度見られるって、こんな。
「……拓馬」
こんなにゾクゾクするんだ。
「はぁっ」
頬を手の甲でそっと撫でられただけで、しっとりとした溜め息が自分の口から溢れた。恥ずかしいくらいに、セックスを意識した溜め息だ。これからすることを、これからされることの気持ち良さを知ってる溜め息。
「拓馬」
「ン」
その溜め息ごと食べられるみたいにキスをされて、舌を絡みつかせながら、バスローブの前を捲られた。
「ンっ」
平べったい身体にこの人の手が重なる。
「ンンっ」
乳首を掌で撫でただけで、ベッドの中、マットレスに埋もれるように寝転がった身体が背中を反らせて感じてしまう。
「ン、ンッ……ん」
まだ、キスしたまま。そのまま手は乳首を摘むようにいじってくれた。
「はぁっ」
キュッと抓られた瞬間、舌が解けて、唇と唇の間に隙間を作ってくれる。溢れた呼吸は甘くて、熱くて。
「ンンんっ」
そのまま、また舌が深く挿し込まれて、乳首は指で押し潰すように捏ねられてる。
「やぁっ……あ、あ」
気持ちいい。もう――。
「拓馬」
「あっ」
首筋にキスをされた。少し痛くて、でも、それがまた気持ち良くて、ずくんって、腹の奥のところが疼いたんだ。
「あ、敦之、さんっ」
前の自分は知らなかったこと。いじったこと、なかったから、そこを抉じ開けられる快感なんて、わからなかった。
「ああっ、あっ」
前を扱かれて、乳首を吸われて、恥ずかしいくらいに腰が揺れてる。
もう知ってるから。
「あっ」
そこを抉じ開けられて、いっぱいに身体の深いところを突かれたら、どんな心地になるのかを、もう知ってるから、身体が欲しがってる。
「拓馬」
「っ」
恥ずかしかった。初めてこの人に抱かれた時は知らなかったから、身体は戸惑ってたし、知らない行為に驚いていた。けれど、今は一度味わったセックスに期待してる。腰が揺れて、前が濡れて、身体の奥が熱くて、熱くて、ズンって重くなるんだ。気だるい重さ。熱が溜まってく感じ。その熱を掻き出して欲しそうに腰が浮いて、奥が。
「あ、あっ……」
奥が欲しいって疼く。もう一度、して欲しいって。
「? 拓馬、自分でしなかったんだね」
「あっ」
「ここ、硬い」
「す、すみませんっ、その」
仕事が忙しかったのもある。溜まったら、前だけで弄ってしまえば済む話だし。それに、やっぱりまだ怖くて。
「脚、広げて」
「あっ……」
二度目はない行為だったから。やっぱりその快感を覚えてしまった後、たった一度のあのセックスをずっと頭の中で思い出しながら、自分の指でするのなんて、なんだかとても。
「っ、……っ」
とても虚しいから。
「ごめ、なさい、そこっ」
だから弄らなかった。こんな偶然はあり得ないことだから。
「いいよ。力抜いて」
またしてもらえるなんて、思ってもいなかったから。
「! えっ! 嘘っ、敦之さんっ! あ、あ、あ」
信じられなくて、慌てて脚を閉じようとしたけれど、その脚をたくさん開いていてと言われていたから、閉じるに閉じられなくて、それに。
「あ、だめっ、ですっ、敦之、さんっ!」
それにこの人の頭がそこにあるから、閉じられない。
「ああああっ」
口でされて。
「あ、あっ指っ」
指を後ろに挿れられて。
「あっ、だめっ、口、離してくださっ、あ、イクっ」
腰が驚くほどに跳ねた。そして、そのまま敦之さんの口から解放されたペニスをギュッて握られて。
「あ、ああああああああ!」
跳ねて、ビュクリって、イった。前立腺を中から敦之さんの指で押されて、擦られながら、あっという間に達してた。
「口でされるの、初めて? だったかな」
「あっ……」
「愛おしいくらいにすぐにイったね」
「あっ、あ」
「そのまま、身体の力抜いてて」
指が付け根まで挿れられて、深いところの寸前まで広げられる。唇から零れ落ちた自分の溜め息が甘くて、甘くて、達したばかりの身体はひどく敏感になるみたいで、その溜め息が喉元でヒリついた気がした。
「あぁっ」
指、気持ちいい。
「上手だ」
「あっ」
褒められて、嬉しくて。
「あ、あ、あっ」
身体が嬉しそう。
「やぁ……敦之、さんっ」
欲しくなる。
「あ、あ、あ」
奥のとこ、敦之さんの長い指でも届かない奥の。
「そろそろ、かな」
「あっ」
胸が高鳴ったんだ。
「あぁ」
奥が。
「挿れるよ」
「はぁぁ、あっ……っ」
悦んだ。
「拓馬」
「あぁっ、あ、そこっ、敦之さんっ」
そこに届くって、そこを抉じ開けてって、奥が期待した。
「動くよ」
「あ、あ、あ、あ、あっ」
また抉じ開けて。
「あ、やぁっ……あ、そこ、もっ、あ」
「拓馬」
「あ、あ、気持ちいいっ」
また奥のところを突いて。
「あ、もう、イクっ」
「いいよ、イって」
「やぁぁっ」
前を握られて、さっきのと、先走りと、びしょ濡れのそれが敦之さんの掌をぐしょぐしょにしながら、気持ち良さそうに熱を昂らせる。
「拓馬」
「あ、あ、ああああああっ」
深く、深く、奥を敦之さんのペニスで貫かれた瞬間、初めての時よりもずっと気持ちいい射精に頭の中が真っ白になった。
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