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第20話 有頂天
シンデレラは舞踏会の間、美しい姫だと褒められ夢見心地過ぎてもちゃんと踊れたのだろうか。
俺には無理そうだ。
「拓馬」
「あ、あ……ン」
俺には踊れそうにない。
きっと、ふわふわして転んでしまう。
「あ、あ、あっそこ」
そんな言葉を言われたら、嬉しくて、立っていられないほど、 感じてまう。
「ああ、気持ち、い、敦之、さんっのっ」
可愛いなんて、生まれて初めて言われた。
可愛くなんてないけれど、お世辞に決まってるけれど、でも生まれて初めて言われた言葉に有頂天になる。
「腰が揺れてる。ここ、奥の、ここ突かれると」
「あああああ!」
ほろ、後ろから、濡れた音を響かせながらの深い一突きに、また。
「すぐイクね」
「あっ」
イッた。
びゅくりと弾けるように達して、シーツの上に広げたバスタオルに白が飛び散った。
「敏感で可愛い」
「あ、イっ」
成人した男がさ、可愛いなんて一言に浮かれて、はしゃいで、恥ずかしいのに。
「中がきゅうきゅうしてる」
「あああ、ダメ、今、イってる、から」
身体が勝手に反応してしまうんだ。
前かがみになった敦之さんのペニスに奥を回すように突かれながら、乳首をきゅっと摘ままれるとたまらなかった。
すごく気持ちが良くて、もっと、もっと強くされたい、だなんて思ってしまうくらい。
「拓馬」
「あ、あああ」
手綱のように腕を引っ張られて、べッドの上で膝立ちのようにされると、また、前立腺をぎゅっと敦之さんのペニスに擦りあげられて、孔がきゅっと敦之さんを締め付ける。
「中、すごいしゃぶりつく」
「あ、そ、れはっ」
「ほら」
引き抜かれたら、名残惜しそうな、甘えたような鼻にかかった声が勝手に溢れ出た。
「ね? しゃぶりついてる」
この不安定な格好でスプリングに揺れてるだけでも気持ちいい。
「拓馬」
「あ、はあっ」
後ろから、抱きしめられた。片手は、ペニスが今、深くまた突き立てられた下腹部を押すように添えられて。反対の手は乳首を、爪で弾いて、引っ掻いて。
「あ、あん、ン」
その指で孤られて痛がるんじゃなく、感じてる。
「硬くして」
「あ、あっ」
いじられて、甘い声をあげている。
しがみつくように背後から抱いてくれる敦之さんに手を伸ばした。 突いてくれる腰に手を添えるとその腰が激しく動いて、突かれる度に身体の奥が熱くなった。 熱くなって、敦之さんが手を添えてくれる下腹部にその熱が溜まっていく。
「あ、も、お 」
イく。
「あ、あ、また、クるっ、あ、ああっ」
「このままイっていいよ」
「あ、あ」
嘘みたい。
「拓馬のイクところ、見せて」
触ってない。
扱いてない。
「あ、あ、あああああああ!」
乳首を孤られて、首筋にあのキスマークが付けられるのを感じたら、もう、達してた。
「ん、ンっ 」
達している中、乱れた呼吸ごと食べるみたいに深いロづけをされて、汗で濡れた髪をあの指に梳かれて、また、零れ落ちるみたいにペニスから白が溢れる、ずっとずっと湯の中に浸るような長い射精に酔っぱらってしまいそうだった。
キスマークって本当に赤いのが付くんだ。 痣とは違ってる。 押しても痛くない。
でも、赤い。
吸われたことで肌の浅いところで内出血が起きるのかな。
すごいな。
バスルームの洗面台の鏡の前で身体を捻って、首をあっちこっちに動かして眺めてた。
こんなにたくさん。 うなじだけじゃない。 胸にも。
「 わ」
足の付け根にもついてる。
こんなところ、に、あの人がキスをしたってことだ。 こんなとこ、誰にも触られたことがない場所に、敦之さんみたいな綺麗な人がキスをしたんだ。
「後ろにもついてるよ」
「!」
「おはよう」
「お、おはようございます」
朝、自分の部屋にあるのよりも何倍もある大きな窓から降り注ぐ朝日に、敦之さんより一足先に目を覚ました。 トイレに行こうと思ったんだ。 そしたら、ふと、昨夜初めて見たキスマークがどんなものなのか気になって。ちゃんと明るい中で見てみたくて。
「ここ、ついてるはずだよ」
「わっ」
敦之さんが俺のバスローブを後ろから捲り上げ、孔のすぐそばを指で撫でた。 そんなところにも? 付いてるの?
「君がイって、惚けてる時につけたんだ。 夜、風呂に入った時に見て驚くかなと思ってね。今、バラしちゃったけれど」
楽しそうに笑ってる。 とても綺麗で上等な大人の男性がまるで子どもみたいに。
「また初めての時みたいに逃げられたのかと思った」
「え?」
「昨日の拓馬はずいぶんと乱れてたから、恥ずかしいとか言って逃げてしまったのかと」
「! ご、ごめんなさ、」
「謝らなくていいよ。 可愛かった」
それのせいだ。
乱れてしまったのは、貴方に可愛いと言われたからだ。しかも何度も何度も言うから。
「今も可愛い」
「!」
「キスマークをまじまじと観察してるのも。 真っ赤になるのも」
可愛いなんて言われたから。
「可愛いよ」
はしゃいで乱れてしまったんだ。
「あ、敦之さん」
そんな場所にキスマークをつけられて、それに気が付かないくらいに乱れて、射精して、ふわふわしてたから。
「あっ敦之さんっ」
ほら、また触られただけで。
「んん」
うなじにキスをされただけで。
「はあっ」
「敏感でやらしくて」
「ン、敦之、さんっ」
朝なのに、身体はまだ昨日の余韻が残る奥がなんだか潤んでしまうくらい。
「可愛いよ」
その言葉に感じてた。
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