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第23話 恋
ホテルの一室に甘い甘い自分の声が零れ落ちる。
「あ、はぁっ、敦之さんっ」
なだれ込むように部屋に入って、抱き合うと痺れるような、蕩けるような眩暈がした。
「キス、したい、ダメですかっ……ン、んっ、ン」
キスが最初から深くて、舌先から溶けそう。
「ン、あ、もっと」
「拓馬」
「もっと」
それは突然だった。
本当に唐突だった。
―― なんだ、俺、毎週末だからてっきり彼女かと。
さっき知った。
俺、好きなんだ、敦之さんのこと。
必死になって駅まで向かった。 早く早くって、すごく思った。 待ち合わせの駅に着いて、敦之さんの姿がないことに落胆して。でもその落胆は抱かれるはずだったのにっていうことなんかじゃなくて。
「拓馬」
この人を見つけた瞬間、顔を見た瞬間に、知ったんだ。
「仕事、だったんだろう?」
「は、い」
この人のことが好きだって。
敦之さんのベルトを外そうとしても、手、指先が上手に動いてくれてなくて、そしたら手伝ってくれた。俺の手に敦之さんの手が重なって、ベルトを外してくれる。 指先が絡まり合うだけでも身体が熱くなるんだ。指先が熱に痺れてしまう。
壁に押し付けられた背中も熱かった。 重なる敦之さんに触れるだけで呼吸が乱れて、火照った。へその下の辺り。 身体の奥のとこ。
敦之さんのだけ届くところ。
「あ、はあっ、あ、敦之さん、は? お腹、空いて」
「いや……平気だ」
「敦之さんの、硬い」
熱くて、すごく硬くて、ゾクゾクしたんだ。こんな綺麗な人が、俺に今、欲情してくれてるんだって、そう思うだけでたまらなくて。
「あ、あ、あ、あ、待って、敦之さん、俺っもうっ」
俺のベルトを難なく敦之さんが外してくれた。 前を触られただけで、腰の辺りから足の付け根までがじんわりと熱を孕んで重く、けだるくなる。
「濡れてる」
下着をスラックスと一緒に腰の辺りまで下げられて、もう反応してたそれが彼の掌に包み込まれた。先端のところはもう濡れていて、それが掌の中でくちゅりと音を立てて。恥ずかしいけど、でももっと触られたくて。
好きな人の手。
「あっ ン、や、もっ」
「拓馬」
好きな人の声。
低い声。セックスの時だけの声。 唇が耳に触れたまま、その声で名前を呼ばれながら濡れたそれを握られ、腰が眺ねる。
「あ、あ、あ、ィクっ、あ」
俺と敦之さんのを二人で指を絡めながら扱いた。
「あっ!」
のぼせそう。俺も、敦之さんも呼吸が乱れるくらいに、二人して夢中で抱き合って、俺は、もう身体の内側が切なくて。
「拓馬」
「あ、あああああああ!」
俺、この人のことが好きなんだ。
「あっ 手に、いっぱい、出ちゃ」
好きなんだ。
「敦之さん」
好きな人なんだ。
すぐ目の前にいるこの人が好き。
「……敦之さ、」
見上げると目が合ってしまった。
彼もまっすぐにこっちを見つめてた。 少し苦しそうな表情、険しい眉間に、乱れた呼吸、駅で待ち合わせたり、一緒に食事をしたり、話をしている時はとても優雅でとても綺麗な人なのに、今は、すごく切羽詰まった顔。
見つめて。
見つめられながら。
「拓馬」
また深くロづけられて背中に手を回した。
「早く、俺のこと……」
抱いてくださいって言うより早かった。
「あっ」
苦しいくらいに抱き締められて、言葉ごとまた深い口付けで塞がれた。
「あ、あ、あ、や、ぁ」
後ろから激しく貫かれながら、綺麗に皺ひとつなく張り詰めるように敷かれていた白いシーツを握り締めた。
「あぁ……深、あっ」
喘ぎながら、皺が刻まれていくシーツにキスするみたいに顔を埋めて、高く上げた腰を敦之さんの大きな手が逃げないように掴んでくれる。その指先が食い込むのが気持ちいい。
「あぁ、ン……」
この人の長い指が俺のこと離さないって鷲掴みにしてくれるのがたまらない。捕まえられてるのが快感になる。
「敦之さんっ」
太くて熱くて、すごく激しくて。
「ああああっ、ぁ、そこ、はっ」
中の気持ちいいところをその硬いので擦り上げられて、甘い甘い嬌声が溢れて零れてしまう。
「あ、あ、あっ、だめっ、ぁっ、あっ……ン」
綺麗な人なんだ。俺が今まで出会ったことのない上品な人。
「あっ……」
そんな人が裸で乱暴に指で掴んで、俺のことを抱くんだ。腰を激しく動かして、逃げないようにって俺のことを掴んで離さない。逃げるなって、乱暴に腰を突き上げて。
「あっ…………」
「拓馬」
「あっ、ン」
ゾクゾクした。名前を呼ばれるだけで、前からとろりと濡れて雫がバスタオルの上に滴り落ちるくらい。
「ずっと、イッてる?」
「あっ」
「可愛い」
「あぁっ」
言いながら、前屈みになった敦之さんが俺の濡れた髪を指で梳いてくれるだけで、孔がキュって締まってしまう。可愛いと言われて、嬉しそうに身体が、中が大喜びではしゃぐんだ。
「敦之さんっ」
好きな人に可愛いと言ってもらえたと嬉しそうに切なげにしゃぶりついて。恋しい人のペニスをギュッて締め付けて。
「顔見て、イキたい」
今日一日、ずっと抱かれることを考えてた。朝食も控えて、昼飯も食べずに仕事をしながら、一日中、仕事の間もずっと、ずっと、夜のことを思ってた。敦之さんとセックスするって。
抱いてもらうんだって。
「あっ……」
だから、逃さないって、必死に捕まえてた。この身体で、貴方の指よりもずっと強く、貴方のことを捕まえて、しゃぶりいてた。
「拓馬」
「あ、あぁ、イクっ」
今日一日待ち望んでいたから。貴方に抱かれることを。
「イクっ……っ」
たまらなく、貴方のことが、好き、なんだ。
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