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第37話 この口を塞いで、舌を撫でて、言葉を止めて

 部屋に入ってすぐ、浅ましいって思うけれど、シャワーを浴びてきますと言った。  急いてる自分を繕うのも忘れて。  湯で汗を流して、でも、準備をせずに、バスローブだけを羽織って、部屋で待つ彼のところに向かった。  準備は自分でしてはいけないと、貴方に言われたから、そのままで。 「ん……んくっ……」  発情して、はしたないと思う。  シャワーを浴びて、自分もシャワーを浴びようと一人がけのソファから腰を上げた貴方を捕まえて、そのまままた座らせて、その股間にキスをした。 「んっ、ン」  でも、貴方のことが欲しくて、欲しくて。  待て、ができそうになくて、優しく頬を撫でてくれる長い指がくすぐったくて首を傾げながら、貴方のペニスを頬張った。  舌で擦るように先端も太いところも血管のくびれさえ、なぞって舐めた。 「ん……ふっ……ん、ン」 「拓馬、っ」  舌に合わせて敦之さんが息を乱してくれるのがすごく嬉しくて、もっともっとって大胆に、独り占めした。 「上手だ」 「あっ」  貴方のペニスを。 「すごく気持ち良かった」 「敦ゆ、き…………っ、ン」  たくさん舐めてしゃぶって潤んだ唇に唇が重なって、早く早くと急いで仕方のない舌先を可愛がるように舌で絡め取られると蕩けそうになる。  喉を鳴らすのさえ快感だと思った。 「まだ、貴方のこと、口で」 「今度」  待て、お預け。 「拓馬の舌がとても上手だったから、すごく興奮した」  そのお預けをされた舌を貴方の長い指に撫でられて、咥えたいと寂しがる唇で甘えてみせると、苦笑いをこぼしながら、キスをしてくれた。絨毯にひざまづいて、懇願するように舌を伸ばすと、絡めて、塞いでくれる。 「ん、ン……ん」  熱くて仕方ない。 「可愛いな。俺のを口でしながら、そこ、そんなにして」 「敦之さん……」  だって、昨日からずっと「待て」をされてる。緩く、柔く、優しく、でも、待てってされてるから、ほら。疼いて火照って、濡れてしまうんだ。こんなに前を濡らして、貴方のこと欲しがってる。 「お預け」 「え? あっ!」 「されて、はち切れそうだ」  何がはち切れるのか、あまりわからなくて、言葉を追いかけようと耳を傾けたけれど、抱き抱えられ、ベッドに運ばれて、そのまま纏っただけのバスローブを捲られ、キスをされた。 「やぁぁあっ、あっ、だめっ」  あの優しい唇に恥ずかしい場所へ口付けられて、羞恥と、それから。 「や、ぁ…………ぁ、あっ」  それから興奮で焼き切れてしまう。 「あ、ダメ」  昨日、甘い甘い香りがする花の名前を教えてくれた唇にキスをされて。  高級フルコースを一緒に食べてくれたあの舌で濡らされて。 「あっン!」  ヒクつく孔のすぐ近くに歯を立てられて身体が甘やかに蕩けて達する。 「あぁ……」 「拓馬」 「やぁ、指、気持ち、ぃ」  濡らしてもらった孔をこじ開けてくれる指に戸惑うことなく身体は悦んで、せがむように腰を上げて身体を捧げた。 「はぁっ」  前立腺を擦られるのがすごく好き。とても気持ち良くて、シーツをぎゅっと握り締めながら、孔が指にしゃぶりつく。 「あ、あ、あ、あ、そこ、イク」  ギュって、強く握り締めながら、敦之さんの指に喘いで、肌を齧られるとそこから快感がまた増えて、ホテルの一室でとても甘い甘い声で啼いた。 「あ、敦之さん」  待ってと手を伸ばしたら、愛撫を止めてくれる。 「あの、キスマーク、上はあまり……」  首周りは少し、肩も、ちょっと。 「その、もう夏服なんです。ワイシャツ、半袖なら大丈夫だけど、製造の手伝いの時はTシャツとかポロシャツだから、その」  見えると、あまり芳しく無い、から、と小さな声で呟いた。きっと他の「友人」はそんなの改めて言わなくても上手くかわすのかもしれない。もしかしたら、俺は他に相手もいないからと敦之さんが気にせず痕をつけてるのかもしれない。 「ご、ごめんなさい、その最中に」  さっきまでの熱とか雰囲気とか台無しだ。最初に言えばよかった。けど言う隙間が分からなくて、俺もすごく急いでたから。 「なんだ」 「敦之さん?」 「俺はてっきり……」 「? 敦、……ン、ふっ」  てっきり? って?  尋ねようと覗き込んだらキスが待っていた。深くて濃くて、貪るようなキスに。大胆に差し込まれる舌にまた蕩けて。 「あっ、はぁっ」  唇が離れた時には透明な糸が繋がった。 「なんでもないよ」 「?」 「じゃあ、見えない場所なら、いい? 君の肌に痕を残しても」 「!」  言われて、真っ赤になりながら四つん這いの足をもっと大胆に広げて、全部を見せつけながら、ベッドにうつ伏せになった。 「いいです……見えないとこ、なら、どこでも、全部に」  そして自分で、指で、孔を広げた。 「敦之さんの痕つけて」  そして触れて、先端が押し込まれた瞬間、また前から滴り落ちて、雫で濡れながら達してた。  何度も何度も深く早く、強く突かれて、イクのが止まらない。おかしくなりそうだ。 「このまま、イケる? 拓馬」 「あ、っん……うんっ」  コクンと額くと、微笑んで、優しく頬を撫でてくれた。撫でてくれるその手を捕まえて、指にしゃぶりつきながら、激しく身体の奥を突く敦之さんを孔で締め付ける。前は今にも達しそうで硬くそそり立った自分のが敦之さんの激しいひと突きに何度も揺れる。  触れてもいないのに。  達してしまいそうなほど、前が涎でびしょ濡れ。ほら、また俺の奥を強く貫かれて。 「あああああっ!」  イキそうで、喘ぐのが止まらない。敦之さんの呼吸が乱れてる。汗が滴って、そのしかめっ面にすら興奮するんだ。夢中で抱いてくれることに、発情するんだ。 「良い子だ」 「あ、あああああ」  褒めてくれた。  中だけでイケることを。貴方のだけでイク俺を。  でも、知らないでしょ?  俺、いい子じゃないよ。 「あっ! ぁっ」  貴方に隠してることがある。「友人」なのに隠し事をしてる。こんなに奥まで晒してるけれど、でも、一つ隠してる。奥のところに。  俺、貴方のことを「友人」だなんて思ってないよ。  ね、俺、貴方のことを、すごく。 「あっ……敦之、さん」  すごく。 「そこ、もっと、突いて欲しっ」  好きなんだ。 「お願い、キス」  だから、キスが欲しい。でないと言ってしまいそうになる。 「ン……あ、あ、イク、イク、いっ! ぁ、あああああああ!」 「友人」なんかじゃなく、貴方がすごく好きだと、喘ぎと一緒に溢れて零れて口に出してしまいそうで、キスを何度もせがんでた。

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