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第44話 好き

 好きな人とデートをする。  叶うことなんてないと思ってた。 「拓馬」  高嶺の花って、思うよ。 「ホテルに行こう」 「はい」  俺には手の届かない人って、この人が普段どんな仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、どんな人なのか、そんなのを知らなくたってわかる。  俺には高嶺の花だって。  淡く、ものすごく淡く、だけれど期待をしている自分は確かにいる。この人も、もしかしたら俺のことを好きなんじゃないかって。  でもそれはないってわかってる自分もいる。  好き? って尋ねたら、好きだよって答えてくれる気がする。  俺が美味しいですねって話したら、美味しいねって同意をするみたいに。  だって優しい人だから。そして今日の相手に俺を選んでくれるくらいには、気に入ってもらえてると思うから。 「敦之さん」  俺は、会う度に好きになってる。  する度に気持ち良くなってく。  シャワーを浴びていつもみたいにバスローブをまとっただけで部屋にいくと、敦之さんがベッド脇、窓際に置かれているソファに座って外を眺めていた  貴方に会う時のよく見る横顔。夜景とホテルと貴方の横顔。でも、今日はそれ以外の貴方をたくさん独り占めできた。 「さっぱりした? 今日は暑かったから」 「敦之さん」  その夜景の前に立って、まとったばかりのバスローブの紐を解いて、前かがみになり彼の唇にキスをした。  触れるだけのキスだけれど、敦之さんの脚の間に片足の膝を割り込ませて、ソファの肘掛けに両手をついて。 「洗ったけど」  する度に、味わった快楽が身体に沁み込んで、やらしくなってく。 「でもまだ柔らかくしてないです」  する度に、貴方に夢中になってもらいたくて、大胆になっていく。  初めての時ならできなかった。人の前でバスローブを脱いで、後ろ向きになって窓に手を突き、腰を反らせて  見せつけるなんて。 「見、て 」  見えやすくなるように、片手でそこを広げるなんて。 「あ、やぁ」  そんな場所にキスをされて、戸惑うし恥ずかしいけれど、それ以上に気持ち良いって気持ちが勝るなんて。 「あっ、ン」  キスされて甘く甘く啼くなんて。 「拓馬」 「あっ、はぁっ」」 「ここに自分の指挿れて」 「あ」  自分の指に喘ぐようになるなんて。 「柔らかくするところを見せて」 「あ、あ……」  見られて感じる。 「はぁ」 「これでもっと奥まで入る」  浅く孔の口で咥えた自分の指に冷たいローションが垂らされた。それを中に塗り込むように自分で指を動かして、浅いところから少しずつ中を挟じ開けてく。 「ゆっくり 」 「あ、ああっ」  気持ち良くて。 「上手だ」 「あっン」  ソファに座ったままでも彼にそこへキスをしてもらえるように、窓に手を突きながら腰を反らせて、突き出すと望み通りにお尻の肉を齧られて甘い悲島が零れた。 「あ、敦之、さんっ」 「気持ち良い?」  こんな綺麗な人の目の前で自慰に耽ることに興奮してる。  ほら、中に塗り込んだローションがたちまち温まるくらい中が火照っていく。自分の指を三本も出し入れしているところを見られて、ゾクゾクしてる。 「まだ準備なのに 」 「あ」 「自分の指で」 「あっ」  その指を敦之さんの舌に舐められて、歯を立て醤られると、たまらなくお腹の下のところ、自分の指じゃまだ  届いていない奥の、もっと奥のところが切なくなった。空腹を訴える喉元みたいにきゅうきゅう締まる。ここ  を満たしてって。 「も、敦之さん」  早くこれで満たしてって。 「拓馬、まだ、シャワー前だよ」  リネンのズボン越しにキスをした。 「拓馬」  かまわず彼のズボンのフロントフライのボタンを全部外して、下着越しにまたキスをした。 「拓馬」 「敦之さんの 」  だって貴方の手が本気で止めないから。だからかまわず、顔を埋めて、もう硬くなってくれていたそれに布越しに頬擦りをしてから下着を引き下げて、直にキスをした。 「口で、したい、ン、ん、む」  頬張って、舌を使って先端をくるりと撫でてから、くびれたところにキスをして、また頬張ってから今度は口の中で扱いてく。 「やらしいな、拓馬の口の中」 「ン」 「っ、気持ち良いよ」  丁寧に舌を這わせて、しゃぶりついていると、丸裸の俺の首元から鎖骨を敦之さんの掌が撫でた。首はくすぐったくて、肩は心地よくて。 「ンんんっ、ン、ん」  乳首は、摘ままれるとたまらなかった。 「ン、んんっ」  コリコリしてるところを指で押し潰されて、可愛がられながら、敦之さんのペニスの根本を音立てながら啄んで、裏筋のところを唇でなぞってから、また全部を喉の奥ぎりぎりまで咥えて。咥えたまま、唇で扱いていると、また乳首を可愛がられて、いじめられて、鼻にかかった甘えた声が零れた。  媚びてねだるような。 「拓馬、もういいよ、離して」 「あ、や、まだ」 「上手すぎていきそうだ」  イっていいのに。そう口にしてないのに察した敦之さんが笑って、唇にキスをした。 「欲しそうな顔してる。それに実は俺も早く挿れたい」  そしてこの唇を指でなぞって、しゃぶるのに夢中すぎた俺のロ元の涎を拭ってくれる。 「あっ」 「おいで、拓馬」  立ち上がらされて、腰骨にキスをされたら身震いするほど気持ち良かった。おいで、と色っぽい声で言われて、腰を引き寄せられると背中を預けるように敦之さんの膝の上に座らせられて、そのまま。 「脚広げて」 「っ」  熱くて硬い切っ先が触れて身体の奥がじゅくりと熱に熟れて濡れたように感じられるほど、この人が欲しくて。 「奥まで、欲しい、です。お願い」  一糸まとわぬ姿で腰を押し付けるように敦之さんの上で身体をくねらせた。背後で感じる硬い熱にゾクゾクしながら。 「全部、お願い、挿れて」 「ここまで挿るよ」 「ん、いい。俺の身体は、悦ぶから」  ほら、孔がヒクついてる。 「舐めるの、も、ロでするのも、胸も、それから中だって」  言いながら敦之さんの手に手を重ねて、胸を下腹部を撫でた。コリコリした乳首も火照って疼くお腹の底も、撫でられただけで息が詰まるほど、ちゃんと。 「敦之さんにしてもらえて悦ぶ身体になってるから、あ、あ」  欲しくて、自分からもずぶぶぶと腰を下ろした。 「あ、ああああああああ」  半分くらい咥えたところで、腰を片手で強く掴まれて、下腹部を大きな掌で支えられながら深く貫かれて、深く咥え込んで、ただそれだけで達した。 「ああっ」 「っ」  そこを抉じ開けられただけで。 「あ、はぁ」  イってた。 「敦之さん」  今なら言えるかな。今なら好きと。気持ち良くてセックス が好きとも取れる、このタイミングなら言えるかもしれない。言ったら、優しい貴方なら同意をしてくれるかな。  俺も好きだよって。 「あっ」 「拓馬」  言いたい。  そしたらきっと欲しい言葉をこの人はくれる。 「敦之さん」  でも、そしたら、俺は本気にしちゃう。本気で両想いだと錯覚をしてしまう。それでも、好きって言ってしまいたくて、身体が奥まで、奥深くまで貴方にしゃぶりついて離れなかった。 「もっと、して」

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