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第59話 チェックアウト

 ホテルで朝を迎えたら、キスをして、昨日の名残が滲む身体で抱き合う。チェックアウトまでの時間を惜しむように。  そうしてホテルでの週末は朝の数時間を慌ただしく過ごす。  貴方のくれるものは全て甘くてたまらなく気持ち良くて、すればするほどハマってしまうから。  すればするほど溺れてしまうから。  呆れてしまうほど、貴方とのセックスのことばかりで頭がいっぱいになったんだ。  貴方の好きな食べ物も知らなかった。  少し子どもっぽいメニューが好きなのを知った。  なんでもできそうな人なのに、料理は意外に苦手らしくて、サンドイッチを二人で作りながら、不器用だなと落ち込む彼を慰めるのが楽しかった。指先は器用な方なのになと嘆く彼が愛しかった。  悪戯が好き。  最初の印象からは想像できなかった。記憶喪失のふりを楽しそうにする貴方を。  絶倫モンスターなのだと、少し自慢気に名乗る貴方を。 「だから、言っただろう? 絶倫モンスターだって」 「あっあぁ!」  たまらなく、可愛いと思った。 「拓馬」 「ン……ん」  そのたまらなく可愛い人をぎゅっと抱き締めながら、ベッドの中で大胆に脚を開いている。  サンドイッチが出来上がったのは十時過ぎ。いつもならもう「さようなら」とホテルのところで分かれていた。  二人でキスをしたり、あれこれ話しながらだったから、手は何度も止まる。そうやって、ゆっくり、ダラダラ、かな? のんびり作ったサンドイッチを朝食なのか昼食なのかわからない時間に食べて、今日の天気ならすぐにでも乾くだろう洗濯物を干して、来る時に着ていた服を干されてしまった彼の、これじゃしばらく帰れないな、って楽しそうな顔に、俺からキスをして。また――。 「拓馬……」 「あぁっ、あ、そこ、擦ってくださいっ」 「君の大好きなとこ?」 「ン、あ、そう……そこ、前立腺のとこ、やぁ!」  腰を掴まれて、少しお尻を持ち上げるようにしながら敦之さんがクンって、そこを的確に擦り上げてくれた。ピンポイントでそこを可愛がられて、腰を浮かせた状態の俺は甘く啼きながら、自分のベッドのシーツをぎゅっと握った。  はしたない格好をしてる。  昼間なのに。  朝食とも昼食とも言えない、少しだらしのない時間に食事を済ませて、昼間から。 「あ、あ、あン」  明るい部屋で全部を見られてる。  敦之さんのペニスを咥え込んで気持ち良さそうにヒクつく孔を。とろりとやらしい汁を滴らせるペニスを。キスマークだらけの身体を開いて喘ぐ姿を。 「すごいな……拓馬」 「あ、あ……やぁっ、前、扱いたら、イッちゃう」 「中がきゅうきゅうしてる。知ってる? 君はこうして」 「あぁ! あ、あ、浅いとこ、気持ち、い」 「浅いところを可愛がった後」 「ぁ、あああああ!」 「深く奥まで一気に貫くと」  ゾクゾクする。 「イクんだ」  激しく欲しがってもらえるセックスも好き。 「欲しがりになった場所を焦らしてから、攻められるのが好きだから」  貴方の好きなものを訊いて、俺の好きなものを話して、互いを知り合うように。互いの身体の気持ちいい場所を教え合うように繋げて、伝え合うセックスも好き。 「あン……」  射精したばかりで呼吸が乱れて上下する胸に敦之さんがキスをした。乳首を甘噛みされるとたまらない心地がして、すごく甘ったるい声が溢れる。  乳首を舌先で可愛がりながら、敦之さんが腰を引く。ずるりと抜けた、太くて硬くて中が蕩けてしまうほど熱いペニス。 「ぁ、敦之さん」  ゆっくりと起き上がって、自分から四つん這いになった。 「今度は……後ろから……ください」  そして自分から、ベッドに顔をついて、両手を使って孔を広げた。とろけた孔を貴方に貫かれたいって。  腰をも持たれると自然と背中が反り返った。貴方の太いのが挿入しやすいように柔い孔を広げて、誘って。 「あぁ……」  ゆっくり、じっくり中をまた抉じ開けられたら、そのまま膝立ちになりながら背中をいっぱいに反らせて、背後にいる彼の首に手を伸ばす。 「拓馬の中、気持ちいいよ」  そう掠れた色気の溢れる声で後ろから耳まで可愛がられて、ペニスがピクンと揺れて、またやらしい汁がバスタオルに滴り落ちた。 「拓馬」 「あ、あ、あ」  甘イキできるように貴方に仕立ててもらった身体で。  今度は貴方のペニスが気持ち良くなれるように自分から腰を使って、ツンと尖った乳首を見せびらかしながら。 「あぁ……」 「拓馬」  後ろから抱きしめてくれる腕に蕩けながら。  普段ならできない時間に、今までだったらさようならをした後の時間に、ゆっくりと貴方とセックスをした。 「長居してしまった」 「全然、いくらでも」  貴方の服からうちの柔軟剤の匂いがする。 「合鍵、渡したんですから」 「そうだった。預かっていた。ありがとう」 「ン」  キスをすると、貴方から俺が使ってるのと同じボディミストの香りがする。 「いつでも来てください。敦之さんが暇な時に」 「暇じゃないとダメ?」 「……いじわるです」  悪戯好きな貴方が笑って、またキスをした。 「暇じゃなくても来るよ。それじゃ」 「あ、そこまで送ります。大きな通りに出ればタクシー捕まるだろうからそこまで」 「いや、大丈夫」 「でも」 「絶倫モンスターに付き合ったんだ。無理しないように」 「! っぷ、あは」  そうして、たっぷり週末を貴方と過ごした。 「それじゃ、また」 「はい。気をつけて」 「ありがとう」  おかしいな。 「……」  こんなにたくさん一緒にいたのに。  いつもよりもずっとずっと長く一緒にいたのに、まだ、貴方といたいって思ってる。 「…………また」  もうすでに名残惜しいなんてさ。

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