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第74話 恋を教えてくれた
「ダメに決まってる」
「え、えええええ?」
思わず、ものすごい大きな声を出してしまった。ベッドでこれから抱き合うとは到底思えない色気の欠片もないような素っ頓狂な声。だって、絶対に「ダメ」なんて言われないと思ったから。ちょっと恥ずかしい。
「このままなんてダメに決まってる。大事にしたいんだ」
「……ぁ」
「明日も仕事だろう? それに、俺は少し怒ってる。昼食も抜いてたなんて」
「それはっ、けど」
「倒れたらどうするんだ。大事な人なのに。気が付かなかった俺が愚かだった」
そんなわけないって慌てて否定をしようと起き上がろうとする俺を敦之さんがベッドに押し付けて、組み敷いた。
見上げるとあなたの腕の中に閉じ込められている感じがものすごくして、ドキドキしてしまう。
「だから、今度、そうだな」
「?」
「誕生日プレゼントにそれをもらいたい」
「!」
「それがもらえたら」
そっと、敦之さんが俺の下腹部を押した。優しく、けれど、少しお腹のところが沈むようにそこを押されて、奥がきゅんってする。
「最高だ……」
「っ」
首筋にまるで、約束の証を押すように、唇がそこに印を残した。
誕生日には敦之さんに星空を見せてあげることにしたんだ。夜景をたくさん見せてくれた貴方とその日は星を見上げましょうって、俺がエスコートをする。貴方の誕生日を。
俺が独り占めする。
「あっ」
大きな手が服の中に忍び込んで、そのまま肌を弄ると、待ち望んでいた小さな粒をきゅっと摘んだ。
「あっ、ン」
身体は跳ねるくらいに敏感に感じて、お腹の辺りがジンジンと熱くなる。
「拓馬」
「あっ……ぁ」
早く欲しいって、身体のスイッチがオンになる感じ。
「あっ」
服を捲られるとときめいた。触れて欲しくて、喉が鳴ってしまう。頬が熱くなって、そして。
「ンっ……」
キスが欲しくて、息を呑んだところで舌先を差し込まれた。
「ン、ん」
角度を変えて絡め取られた舌先が気持ち良くて、深い口づけはクラクラするほど熱烈で。
「あ……敦之、さん」
服を捲られ、乳首にキスをされると蕩けてく。舌先が痺れて、喘ぎの声がやたらと甘ったるいものに変わる。そして、脱がされたら、もう、恥ずかしいくらいに身体は。
「誰にも」
「? 敦之さん?」
「その顔、見せないように」
「……」
「呆れるくらいに俺は君のことが、」
「見せたりなんて、しないです」
ファーストキスを同級生と罰ゲームでしたと話したら、寂しそうな顔をさせてしまったっけ。キスはこういうものだと俺に教えてくれたんだ。
「……ン、敦之さん」
丁寧に、優しく、甘いキスの仕方を教えてくれた。心地よくてたまらなかった。柔らかい唇に触れられるとすごく気持ち良くて、一瞬で虜になった。
セックスを教えてくれて、抱かれ方を教えてくれた。
「敦之さん……ぁっ」
指で柔らかくほぐして、この身体を変えてくれた。
「あぁ、あ、指っ、ぁっ」
「拓馬」
「やぁ……指」
きっと、貴方じゃなかったら、なれなかった。こんな――。
「あ、敦之さんっ、ここ……早く」
「……」
こんな淫らな俺には。
「早く、欲しい」
「拓馬」
「あ、あぁ」
こんな幸せな俺には。
「あああああっ」
「っ、すごいな。挿れただけで?」
「ン、あ、だって」
「上手」
「あ、ぁっ待って、今、俺っ」
ずぶりと奥を貫かれる。細いと心配されてしまう腰を優しく、けれどしっかりと指先が食い込むくらいに掴まれ、そのまま、奥深くまで熱で抉じ開けられた。
「あああああっ」
「拓馬」
「あ、奥っ」
蕩けて。
「やぁっあ、あ、あ、あっ、あんっ」
ぐちゃぐちゃになっていく。
熱くておかしくなりそう。
「ああぁっ、っ、ン」
「っ」
前立腺を擦りあげられて、中がぎゅっと敦之さんにしゃぶりつくと、動きながら、敦之さんが眉をひそめて息を呑んだ。
その顔がすごく好きで、中がまた敦之さんに絡み付いて、締め付ける。
「っ、拓馬」
「あ、敦之、さんっ、あっ、あぁっ」
締め付けられた彼の熱が、中で暴れて、クンって奥をノックされた。たまらないと、突き上げられる度に揺れた俺の、前から気持ちいいと透明な液が滴り落ちる。
「拓馬、急に締め付けた」
「あ、だって」
貴方の汗にときめいたんだ。
「あ、敦之さんがっ」
あなたの乱れた呼吸にクラクラした。
男の顔をして、俺の中の締め付けに応えるように眉を顰めてくれるのがたまらなく嬉しくて仕方なかった。
「好きっ、あああああ、激し、いっ」
「君が悪い」
「あ、あ、あ、あ、っイクっ」
「拓馬、」
「あ、あ、あ、あ、そこ、もっと、突いて、欲し、あっやぁ」
また一つ、貴方が唇で印を刻んだ。心配しなくてもいいのに。
「あ、俺っ」
だって、この身体に教えてくれたのは貴方だ。
「貴方以外なんて、ないです」
この平凡で、どこにでもいそうなただのサラリーマンを変えたのは貴方だ。
こうして溺愛してもらえる身体に、俺に、作り変えたのは、貴方だから。
「やぁぁっ、そこ、され、たら、イッちゃうっ」
だから、貴方しか、俺を溺愛することも、可愛がることも。
「あ、あ、あ、あ、そこ、だめっあっ…………イ、く、あっ、あっ」
「拓馬」
「あっ」
意地悪することもできないんだ。
「あっ…………イ、く、敦之、さんっ」
「っ」
貴方が俺に、恋を教えてくれたんだ。甘くて、優しくて、蕩けるような恋を。
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