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新居編 3 至福
セールの時に買った革靴はもう二年目だから、少し古ぼけて、でもまだ使えるからってだけで使ってる。使い古したその靴なら歩きでの外回りもすごく楽だからちょうどいいんだ。駆け足だって、全然できちゃうし。
だから、敦之さんより早く部屋に帰れた。
今日は出張で、でも、そんな遠くなくて、高速を使って車で片道二時間。だから日帰りで戻って来られるって、そしたらうちに寄りたいと言ってくれた。
だから、急いで、駆け足で帰ってきたんだ。帰宅して、慌てて暖房をつけ、夕食の準備を――し始めようとしたところで敦之さんが部屋を訪れてくれた。小さな、今日赴いた仕事場で活けてくれた小さな花束を持って。
クリスマスのイベントのだから、敦之さんの作ってくれる花束では初めて見た、真っ赤な薔薇。あまりに濃くて、鮮やかで、俺の小さな部屋の中が一瞬で妖艶で艶やかな雰囲気を纏ってしまったくらい。
「っ……ン」
真っ赤な薔薇に、ドキドキした。
「あ、あ、あ、あ、下からそんなに、突き上げちゃっ、やっ……ぁっ、ン」
クンって、中を突き上げられて身体が浮きそうになるけれど、優しく腰を掴まれているからそれが叶わなくて、ずぷりと奥に敦之さんの先端が届いてしまう。
「やぁ……ン」
鼻にかかったこの声、恥ずかしいんだ。
まだ慣れない。
「あっ、ン」
深く奥まで敦之さんでいっぱいになりながら、喘いで身悶える身体を撫でられて、乳首をキュッと摘まれた。そんなとこを抓られてこんな声を上げてしまうのも恥ずかしい。
「あ、あっ」
どれひとつとっても半年前の俺が知らないことばかり。この快楽も。
「あ、っ、敦之さんっ」
「中がうねってる」
「や、ぁ……あ、あっ、そこっ」
「すごく気持ちいい」
「あ、あっ」
この満たされる心地良さも。
「あ、イクっ、イッちゃうっ」
「拓馬」
「あ、あ、あっ」
敦之さんが喘ぐ俺を逃がさないと起き上がって、そのまま強く抱き締めてくれる。深くまで太くて熱いペニスで貫きながら。
「あっ、イク」
応えるように、ぎゅううううって敦之さんのペニスにしゃぶりつく俺の身体の奥深くを射抜きながら。
「ン……」
深く深くキスで、彼のペニスで、塞がれた身体を跳ねさせながら。
「拓馬……」
しかめっ面を見せてくれるこの人にときめきながら、二人で一緒に達してた。
「チーズタルト、すごい美味しいです」
「それはよかった」
「はぁ、幸せな味がします」
「そんなに?」
「はい」
お風呂に入りなおして、着替えてベッドへ。もちろん、今夜は俺の部屋だからベッドだって庶民サイズ。これが敦之さんの部屋となると。まぁ、嘘みたいに大きなベッドになる。こんな狭いベッドでお泊まりなんて申し訳なくなってしまうけれど。敦之さんにそう前に伝えた時に言われたんだ。
どうせ寝る時はくっついて寝るのだから狭くても大きくてもベッドのサイズは変わらない、って。
でも、こんな時は少し狭いかもって思うけれど。
ベッドの中で夜食、なんて。
食べずに眠ってしまうべきだったんだけど、どうしてもお腹が空いちゃったんだ。
夕食も食べたけれど、その後、まぁ、その、運動をして、お風呂に入り直したりしてたから。チーズタルトをお土産に買ってきたよって言われた瞬間、つい。
油断してたんだ。
お腹の虫が、「ぐぅ」って小言みたいに呟いてしまった。
ちょうどお腹がすいてたよって。
もう恥ずかしくて、恥ずかしくて。
なんてダサいんだろうって、決まらない自分が恥ずかしくて。
けれど、敦之さんは嬉しそうに笑って、俺の洗い立ての髪にキスをするとチーズタルトを食べようとフォークを二本、狭いキッチンの棚から持ってきた。
一緒にベッドで食べようって。
ホテルで過ごしていた頃みたいにって。
「はぁ、めちゃくちゃ美味しい……」
「大袈裟だよ」
「そんなことないです! 本当に美味しいです!」
上品にナイフとフォークで頂きそうなのに、ホールのままのチーズタルトを二人でベッドの上でつついてる。こんなの雪隆さんに見られたら、すごく怒られそうな、不作法な食べ方。
「じゃあ、もうワンサイズ大きいものにすればよかった」
「えぇ? これで充分ですよ! それに太っちゃうから」
深夜にドカ食いでチーズタルトなんて、書いてなかったけれど、これカロリーを見たら、罪悪感がものすごそう。
「君は少し太った方がいい。また細くなっただろう?」
「っ」
腰を撫でられて、キュってなる。
「こ、れはっ、最近外回りで歩いてばかりだったから、で。だから、その疲れすぎてやつれたとかじゃなくて」
腰を撫でられて、奥のところ、この人の先端が抉じ開けてくれるところが、ギュウウって刹那げにないものねだりのようにヒクつく。
「体型は気にしてるんです」
「なぜ?」
「だって……」
貴方にずっと抱いてもらいたいから、なんて。
貴方にとって少しでも魅力のある身体でいたいから。
「どんな君でも構わないよ」
「あ……敦之さぁ、ン」
「君の全部が好きなんだから」
「あ」
そっと、口付けられて、大きな手が家着の中へと侵入する。
「気に入ってもらえてよかった」
あ……本当だ。
「また仕事であそこに赴くのが楽しみになったよ」
―― 好きな人を大事にできるのって、幸せじゃないっすか。
「……拓馬」
敦之さんがすごく、すごく、本当に幸せそうに微笑みながら、そっと優しく唇にも触れてくれた。
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