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浴衣旅行編 5 甘美なデザート
夕食を終えて、部屋に戻ってくると、敦之さんが食事処からずっと繋いでくれていた手に力を込めて、そのまま寝室のある二階へ連れて行ってくれた。
階段を一つ一つ上がりながら、ドキドキしてた。
「……あっ」
今は、ゾクゾク、してる。
「拓馬」
「あっ……敦之、さんっ」
浴衣姿の敦之さんに。
「楽しかった?」
「は、い……ぁ」
夕食、すごかった。
いつも敦之さんに俺の身の丈には到底似合わないような場所へ連れて行ってもらってる。テレビで見るだけの高級レストランに、高級バー、ホテルも。そして今日一日、丸ごと全部。
「すごく、楽しかったです」
そう小さく呟いた。
「そう?」
「こんなすごい宿も食事も、それに岩盤浴にマッサージまで」
「うん」
「俺みたいなただのサラリーマンはこんなところ普通は来れないし。本当にすごく楽しくて」
こんなこと思う日が来るなんて思いもしなかった。
「今日一日が終わっちゃうの勿体無い……なぁ……なんて」
以前は、はぁやっと一日終わった、もうヘトヘトだって、一日が早く過ぎて終わってくれたらっていつも思ってたのに。
「だから、本当にありがとうございます」
「どういたしまして。たくさん楽しんだ?」
「は、はい」
あ。
「あの、敦之さんも楽しかったですか?」
「もちろん。でも、俺はまだ一番の楽しみがとっておいてあるんだ」
キス。
「さっき、我慢できなくてつまみ食いしてしまったけれど」
くれる。きっと。
ゆっくりと覆い被さるように近づいてきた敦之さんの吐息が唇に触れた。思わず、期待でうっすらと結んでいた唇を解くように開くと、微笑まれて、身体の奥のところがキュッとなる。キスを待っているの知られてしまって恥ずかしいのと、それから。
「浴衣姿の君とこうしたくて、ずっと待ってた」
それから、早くキスをもらえるかもしれないっていう期待で。
「どんなご馳走も甘くて美味しいのは、最後に来るだろ?」
「……ぁ」
近づいてくる敦之さんに、ベッドは音もなく、スプリングだけがわずかに揺れる。
「俺、が……デザート?」
「そう、デザートが一番楽しみで、一番のメインなんだ」
楽しそうに笑って、ワクワクしてる子どもみたい。なのに。
「お、美味しいといいんですけど……」
「もちろん」
「あ、の、ど、どぞ、め、召し上がれ……」
なのに、くれるキスはとても大人の色気が溢れてる。
「……ン」
ほら、すごくやらしくて濃厚で。
「拓馬」
蜂蜜でもかき混ぜてるみたいな刺激的な甘い、甘い、キスなんだ。
「あっ……ン」
浴衣がすぐに乱れてしまう。敦之さんが見栄え良く直してくれたけれど、そもそもの俺の着方がやっぱり下手なんだ。すぐにほろりと浴衣の襟が緩んで、敦之さんが首にキスをしてくれただけで、前が肌蹴てしまった。
そして、その肌蹴てしまった肌に敦之さんの唇が触れただけで、腰の辺りがジリジリって……焦がれたように軋んでる。
「あぁっ……ン」
口にちゃんと含んでもらえると切なくなる。つい、胸に顔を埋めてくれる敦之さんの頭を抱き抱えると、もっとちゃんと吸ってもらえて、爪先まで力が入ってしまう。
「ひぁ……あっ」
乳首にキスをもらえる。それがすごくたまらなく気持ち良い。押し倒されて、そのままベッドに寝そべると見下ろすように敦之さんが俺を見つめて、男の顔を見せてくれた。しかめっ面で髪をかき上げるその仕草が、すごくすごく好きなんだ。
「セクシー……」
「え? わっ、あっ」
敦之さんに見惚れていて気が付かなかった。脚が太腿の辺りまで見えてしまうくらい浴衣が捲れた。不恰好になってしまった俺は慌ててそれを直そうとしたけれど、その手を掴まれて。
「あっ……」
そのままベッドに押さえつけるように敦之さんの手に囚われた。
それから、もうさっき愛撫してもらったの乳首を指で可愛がられながら、反対でうずうずしていた乳首も舐めてもらって。
「敦之さんっ」
どっちも丁寧に可愛がれて、愛しい人の名前を呼ぶ声が甘ったるい。
「あ……ぁ」
肌蹴て、もう乱れてしまった浴衣はひどい有様だけれど。
「拓馬……」
「ぁ……」
眺める敦之さんの、それが。
「っ、拓馬」
「あっ……すごい」
すごく硬くなってくれてたのがたまらなく嬉しくで。そっと撫でてから、両手で大事に握った。
「敦之さん……」
すごく熱い。
熱くて、大きくて。
「これ……」
「っ」
俺の手の動きに合わせて、敦之さんの吐息が乱れてくれるのがたまらなかった。この人をこんなにふうにかき乱せてることが嬉しくて、ゾクゾクしてしまう。
もっとはしたなくしたら困ってくれるかな。
もっとやらしくこのペニスをしごいたら、興奮してくれるかな。
もっと……。
「ん……ン、む」
体勢を入れ替えて、敦之さんの上に覆いかぶさった。覆いかぶさりながら、さっき握った硬くて大きなペニスにキスをして。
「拓馬……っ」
ちゅぅって、唇で先端にキスをすると、うっとりとした表情で敦之さんがこっちを見つめてくれた。
「あつゆき……さ……ン、んっ」
あんなに上手に着物を着てしまうこの人の、浴衣の襟が少しだけ。ほんの少しだけ着崩れて、鎖骨の辺りがチラリと見えた。それが嬉しかった。あんなに上手に浴衣を着れるこの人を乱せていることがたまらなくて。この人をたくさん、ものすごくたくさん気持ち良くしてあげたくなる。もっと乱れさせたくて、口を使って、舌を使って、唇で、喉で、この人のことを、眩暈がしちゃうくらいたくさん気持ち良く――。
「拓馬」
「?」
「あんまりそんなに一生懸命に口でされると」
「?」
「可愛くてたまらない」
「ぁ……」
ベッドが揺れた。
シーツが擦れる音がする。
「早く拓馬の中に」
「……ぁ」
そして、俺は。
「来て……ください……」
貴方のことをたくさん、もっとたくさん。
「俺も、早く、来て、欲し……」
気持ち良くしたくて、そっと浴衣を乱して身体を広げた。
「敦之、さん」
甘い甘い、甘美な声で愛しい名前を呼ながら。
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