「抜くよ」 　そう囁いて、髪にキスをしながら敦之さんの太くて硬いのがずるりと引き抜かれる。 「あ……ン」 　抜ける瞬間さえ気持ち良くて、ずっと帯で縛られていた両手でぎゅっとシーツを鷲掴みにしながら、名残惜しそうな声を零した。 「っ」 　そして、そこからとろりと中から敦之さんのが溢れて、伝い溢れるのを感じて、頬が熱くなる。 　たくさん、してもらったって、嬉しくて、でも、それだけおねだりして乱れたことは恥ずかしくて。 「拓馬」 「ぁ……」 「とても気持ち良かった」 　裸の敦之さんが笑いながら、俺の肩に歯を立てた。それから縛っていた帯を解いてしまう。 　敦之さんのしてくれること、どれもこれも気持ち良くて、また声を挙げると、俺の横に手をついて覆い被さるようになっていた敦之さんがじっとこっちを見つめてる。 「あ、あの」 　変、だった？　乱れすぎ？　手首を縛られて、喘ぐなんてって。気持ち良かったって敦之さんは満足しているのに、俺の声がまだ物欲しそうに聞こえて、呆れた、とか？ 「敦之さん？」 「いや、セックスの後の拓馬はたまらなく可愛いから」 「え？」 「前、付き合う前だよ。初めての時もそうだった」 「？」 「事後の拓馬は可愛くて、ルームサービスを運んでもらう時に見られたくないって思ったっけ」 「え、えぇ？」 「それから、まだ付き合う前はあの可愛い拓馬を誰かが……って考えると、イライラして」 「！」 「自分のものにできたらいいのにって、よく考えてた」 　俺のことなんて、いくらでも。 「いくらでも、全部、あげるのに」 「あぁ」 「え？　わっ、あ、あのっ」 　世界がふわりと傾いた、と思ったら、視界が急に高くなって、俺のいつもの視界よりも数センチ高い位置になる。 「ちょ、あのっ」 　たくさんしてもらって、中から溢れるくらいに注がれた身体は今すぐにはちょっと立ち上がれそうもなくて。 　あとでゆっくりシャワー使わせてもらえればいいって思ってた。それよりも俺がたくさんしがみついて、もっともっとってねだったから、汗びっしょりになった敦之さんが先にシャワーを使ってくださいって、言おうと思ってたのに。 「だ、大丈夫です！　あとで自分で、あのっ、敦之さんが怪我をしちゃうので、……その、降ろして」 「平気だよ。君を抱き上げてセックスなんて何度もしてるだろ？」 「！」 　し、してる、けど。その、よ、よくしもらう、けど。でも、やっぱり。 「重い、でしょう？」 　どう華奢であっても、敦之さんよりも背は低くても、それでも男だから。 「そうだな、重くなった」 「！　じゃ、じゃあ、じゃあ、もう降ろしてくださいっ」 「初めて抱いた時は本当に心配なくらいだったから、その頃に比べると重くなったよ」 「だから！　じゃあ、おろしてってば」 　真っ赤になって騒ぐ俺に敦之さんが笑ってる。暴れたくても、暴れたら、それこそ大事なこの人に怪我をさせてしまいそうで、まるで子猫が母猫に首を掴まれて移動させられてる時みたいに。邪魔にならないようにとじっとしてるしかなくて。 「敦之さん……」 「そうだな……ジム、通うか」 「！　敦之さんっ」 　そしてもっと困った俺に敦之さんが楽しそうに笑って、抱きかかえ直すとそのままシャワールームに向かってしまった。 「本当に細くて、この子は大丈夫かと心配したんだ」 「あっ……ダメ」 　曇りガラスになっていて、うちのバスルームとは違う質感のそのガラスに手をついて、しがみつけないそれに指先が白くなるくらい力を込めて縋り付く。 「激しくしたら、壊れそうで」 「あっ……ン」 「でも、キスすら知らない君が真っ赤になりながら、俺にしがみ付くのがたまらなく可愛くて……拓馬、腕をこっちへ」 「あっ」 　身体洗うなんて言ってたのに。 「すごいな……自分で呆れるくらいに君の中から溢れて来る」 「あぅ……ンっ、あっ」 　中に注いだものを掻き出してあげるって言ってたのに。 「随分、肉付きが良くなった。それでもまだ細いよ。あんなに食べさせてるのに」 「あぁっ」 　孔を二本の指で弄られ、前立腺を撫でられて、片足をあげていた俺はバランスを崩しそうになる。 「あ……」 　でも、転ばなかった。 「太っちゃった？」 　敦之さんが身体を密着させて、バランスを崩しかけた俺をガラスとで挟み込んだから。 「違うよ。抱かれてる身体だ」 「ぅ、ン」 「むしろそそる身体になって、困ってる」 　密着した身体がじゅくりと中から濡れていくみたい。貴方に注がれて、中がたくさん濡れてるから。 「よかった」 「良くない。困ってると言っただろう」 「でも、まだ細いんでしょう？」 　掻き出してもらったばかりなのに。 　貴方が大好きだから、掻き出されてしまった分、また欲しくなってしまう。だから、そっとキスをした。シャワーに打たれる、いつもは高級スーツで隠れてる筋肉質な胸に。 「っ」 　貴方の胸に歯を立てて、キスをして、そして。 「じゃあもっと食べます」 　腕にしがみついて、ガラスではなく敦之さんに縋り付く。 「敦之さんのこと……」 　さっきまで縛られていた両手で思う存分、太くて硬いペニスを撫でてから。 「あっ、ぁっ……あぁぁぁぁぁ」 　自分から腰を沈めて、深く、さっきまで飲み込んでいたペニスを根元までしゃぶるように挿入して、バスルームに淫らな音と声を響かせていた。