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9-1 ※鷲尾×美波、甘々、SM

 美波のマゾヒズムを開花させた鷲尾は、己の都合の良い時間に呼び出しては、好きなように美波を抱き続けた。  美波もどんなに恥ずかしいことでもそれはプレイとして受け入れるようになった。  そうしてかれこれ一ヶ月ほどが経過していた。  仕事という名目で鷲尾の元を訪ねた美波を連れて、公園内の公衆トイレへやって来る。そこで少々強引に唇を奪ってしまうと、後はもう鷲尾の手の内であった。  鷲尾は個室に入って鍵を閉め、これからの背徳の時間に期待に胸を膨らませる美波を跪かせる。  冷えた視線を向ける鷲尾と、熱っぽく、聞き分けの良いペットのような瞳で主人とも言える鷲尾を見上げる美波。実に対極である。  ジッパーをじらすように下ろしていくと、早くしたいという様子で美波も手伝った。そして半勃ちのペニスが現れると、美波はもうあまり躊躇も見せずにぱくりと咥えてきたではないか。  数多くの性奴隷を相手にしてきた鷲尾は、こうも早く従順になられては、なんだか面白味がない気もしている。  けれどそれは職業柄、対立姿勢にある人間だ。そう思うことで美波への欲情を途切れさせないようにしていた。 「俺のチンポ、そんなに必死こいて奉仕するほどうまいんですね?」 「っは、はぁ……おいしい……です……。でもでもっ、鷲尾さんにしかこんなこと思いませんし、しませんからっ」  それでも、湧き上がる苛々は随所に隠せなかったのではあるが。 「ふーん……それにしても、こんな真昼間から、しかも公務中だって言うのに男のチンポをしゃぶるなんて、あなたって人はつくづく淫乱だな」 「んッ、んむ……っぷはぁ……す、すいません……俺、こんな変態刑事で……。でも、鷲尾さんだから……」 「言い訳はよろしい。ほら、とっとと射精させてくださいよ」 「んあぁ……ふぁい……」  すっかり甘えた声で言う美波の陶酔ぶりは異常とも言えるほどだった。  鷲尾が生粋のサディストで、美波はそれに負けず劣らずのマゾヒストで、だから相性すら良いとまで思っている始末。  普通、ノンケの男をこうして躾けることは簡単ではないのだが、彼自身も鷲尾のことが好きだと勘違いしている故なのか? いや、美波は元より思い込みの激しい人間だろう。  自らの言動の全てを他人のせいにできるから、美波にとっての鷲尾は、被害者遺族というものよりももっと深いところにまで到達しているのだ。 「んぷッ、ぶふうッ、んぁ、ちゅううぅっ……」  すっかりマゾに染まった美波の渾身の舌技は、商品とは違い自分用として良いように教えたものだ。弱点ばかりを刺激されて、さすがの鷲尾もたまらない気分になってくる。 「ふぅ……美波さん、出しますからね。全部あなたの口で受け止めてくださいね」 「んっ! んん~~!!」  それを了承と受け取ったのか、美波は鷲尾のものをアイスを吸うみたいに口を窄めてジュポジュポと強く激しく扱いた。  ラストスパートの勢いは鷲尾も素直に感心し、美波の頭を押さえながら腰を突き出すようにして射精した。うまく呼吸できず苦しそうな美波など、眼中になかった。  全て吐き出し終えると、美波の口元には鷲尾が出した粘っこい体液が残っていた。  美波はそれすら愛おしむように綺麗に舐め取って、まだ萎えないペニスに頬擦りしてくる。 「ふあぁ……射精したのにまだこんなに硬い……。ねっ、ねえ鷲尾さん、もっとしてくれますよね……?」 「それじゃあ、下を脱いでそこに手をついて四つん這いになって。そう、犬のようにね」 「はひ……! わ、わかりましたぁっ!」  鷲尾に命令された通りに便座に手をついた美波は、恥ずかしげもなく自ら下を脱いで尻を振りたくって催促してくる。  初めはあんなに行為を恥ずかしがっていた彼だが、関係を続けるにつれて慣れてきたのかどうにも積極性が増してしまった。羞恥心がないという訳ではないが、どこか非現実なものと割り切っている。  まあ、別にそれでもいい。拒否されて関係が悪化するよりはマシだ。 「っく、はぅ……はふぅ~んッ」  鷲尾に全て挿入されると、美波はまるで犬のような甘い声を漏らした。 「いいですね、様になってきたではないですか、美波さん。このまま……俺の犬になればいい」 「いっ、犬? 鷲尾さんの……犬……。あぁっ、俺、それでもいいかも……」 「かも?」 「……いえっ、いいです、犬になりたい、なりますぅっ……!」  自分は遠回しで曖昧な言葉でいつも煙に巻くけれど、美波の返答に限っては半端は絶対に許さない。それが鷲尾が支配者たる所以だ。  マゾ犬宣言をした美波はやはり箍が完全に外れ、人間というより鷲尾の性奴隷のようだ。彼はあくまで過激な遊び、SMごっこをしているつもりのようだが。  だが彼がそのつもりならそれでいい。快楽に身を委ね、思考もドロドロに溶けてしまえばいい。  いずれは自分が刑事だったこと、鷲尾に接触してきた理由、そもそも警察官を目指した本来の目的。全てを忘れて俗世から離れる時が来るといい。  美波の思考力を削ぎ落とさんばかりに、激しくピストン運動する。抜けてしまうギリギリまで腰を引くと、絡みついた内側粘膜が外気にさらされる。そしてまた一気に奥を突き上げると、美波の嬌声が甲高くなる。 「あひイィッ! そんなにっ、激しくされたらっ、壊れちゃうぅぅっ!!」 「やめる?」  こんな状態で、生殺しにされたら耐えられるはずもない。その証拠に、少々意地の悪い問いを投げかけてみると、美波は口惜しそうに唇を噛んで首を横に振った。 「あぁっ、それはやだ……。もっと突いて……俺の良いとこ、鷲尾さんのでいっぱい擦ってください……」  よく言えました、と耳元で囁いてやると、それだけで美波は熱い吐息に身を震わせた。  美波の両腕をがっしりと捕まえて、馬の手綱を引くように自分中心の抽送を行う。それにも美波は髪を振り乱し、涎さえ垂らして悦んだ。 「くあぁっ! そ、それそれっ、そこ、奥ゥッ……! 俺のイイとこ届いてるぅッ……!! しゅ、ご……鷲尾さ、しゅごいいぃ……あへぇえぇええっ……」  バックですると、どうにも美波の弱点に当たりやすいらしい。涙声でアヘ顔さらして野生的な声を上げる美波は、鷲尾にとってはもはや奴隷以下だ。  利用価値がある以上は、まだ捨てる訳にもいかないが、依存されすぎるのも考えものだ。  ただ、ひとまずはこのままで大丈夫だろう。美波が余計な真似をしない限りは、様子見だけで済ませてやることにする。  溺れそうな愉悦の中で、美波の絶頂を極めてやらんとよりいっそうペースを速くし、ラストスパートにズドンと奥深くまで腰を打ち付けた。 「あっ……あぁ゛~~ッ!! っく、ぅ……!」  鷲尾が中出しするのとほとんど同じタイミングで、美波もトコロテン状態で先っぽからチョロチョロと精の残滓を溢れさせていた。  身体の開発は上出来だ。後は美波の精神面をより深く抉ってやる為に、これからも甘い恋人ごっこはしばらく続けてやるべきだろう。  それに邪魔なのは、そう、美波の影の協力者である真鍋貴久。  彼を手篭めにする為には、美波も知らぬところでコンタクトを取らねばならない。

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