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13-1 ※鷲尾×真鍋、監禁、飲食拷問
真鍋を監禁してから丸二日が経っていた。
その間、鷲尾はわざと自宅には帰らなかった。そして、十分に放置してから、平然と仮住まいに戻った。
「ただいま、真鍋さん。って……あれ、もしもーし、生きてますかー?」
鷲尾は白々しく声を張り上げて俯いていた真鍋を覗き込む。
さすがに生命の危険を感じていたのか、真鍋はよろよろと顔を上げ、悪魔の微笑みを湛える青年を見た。真鍋は家を出た時よりも、髭は伸び、見るからに弱っている。
続いて、ツンと鼻につく異臭。拘束してあるので当然だが、真鍋は便所に行くことすら許されていない。二日分の糞尿で下半身や床に敷いたペット用トイレを汚していた。
換気扇は回していたとは言え、この臭いの中を過ごすだけでもさぞかし苦痛だったろう。
それが仕方のない生理現象とはいえ、自身の粗相のせいなのだから、真鍋も余計に怒りの矛先を鷲尾に向けるしかない。
「俺が居なくて寂しかった? なら悪いことをしました。ちょっと調教……ではなく仕事が忙しくて……ああ、それとも俺より未だに行方知れずの母親の方が会いたかったかな。小さい時はずっとこんな毎日だったんでしょう? ろくに手料理も食べたことはおろか、流行りの玩具を買ってもらったり、普通に話したり遊んでもらった記憶もない。周りの人間全てが幸せそうで憎くてたまらない。物や人に当たり散らすようになって、友達もできなくて、それでもたまに母親が機嫌を良くして帰るのを待っていた実に純粋で哀れな少年……確かにそれでは非行に走ってしまっても仕方がないかもしれません」
母親。その言葉に、真鍋がほんの少し身体を震わせる。
真鍋は喉の渇きにより掠れた声でようやく言葉を絞り出した。
「て、テメェは……人の命をなんだと思ってやがんだ……」
「別に何とも」
あまりの即答ぶりに、真鍋は一瞬、何を言われたかわからないようだった。
「虫けらの一匹や二匹が死んだところでこの世の中にどう影響するって言うんですか? それに今のあなたは家族……いいえ、あなたの安否の心配をしてくれる人間すらいない。もう死んでいるも同然の生活を長いこと続けてきたお人だ。それを今さらどうしようが誰にも文句を言われる筋合いはない」
真鍋の携帯は既に壊して廃棄している。しかしフリーメールのアカウントには、業務の他に美波からの連絡がきていた。
日によるが基本は各自の報告も兼ねた朝晩の二通。たぶん電話はそれ以上にかけてきているだろう。
今となっては、真鍋は自分にどの程度の人望があったか知る術はない。
「ん? もしかして美波さんのこと考えてます? 彼なら助けてくれるかもしれないって」
「…………」
図星の真鍋は目を伏せた。
「彼もあなたみたいな者とつるんでいた汚職が明るみになるのは嫌だ。組織の力は頼れない。単身で乗り込んで来るのも命の危険があるしなぁ。まあ百歩譲って自滅覚悟で警察を動かせるとしても、果たしてあなたにそこまでする価値があるかな。俺なら間違いなく真っ先に切り捨てるね」
真鍋の尊敬を傷付ける言葉をつらつらと並べる鷲尾に、真鍋はギリギリと奥歯を噛み締めている。
「クソが……テメェみたいなサイコ野郎はいつかパクられろ……でなければ地獄の苦しみを味わって死ね……」
「フン。俺は逮捕されるようなヘマはしませんし、されません。それに、もし俺が死んで帰って来なくなったら、それこそあなたどうするおつもりなんですか?」
必死に悪態をついたところで、鷲尾には何の価値もない戯言だ。
「ま、いいや。そんなことより粗相を片付けなくては。はぁ、俺も腹が減った」
トイレを片付け、温かい濡れタオルで手際良く身体も綺麗にしてやる。さすがに気持ちが悪かっただろう、真鍋は大人しくされるがままになっていた。
先日の凌辱で刺し貫いた手の包帯も清潔なものに変えてやる。合法的な薬は飲ませ、塗ってもいたので、幸いなことに化膿などはしていなかった。それでも痛みは多少なりともあっただろうが。
それに、ヘビースモーカーらしい真鍋は煙草を吸いたくて吸いたくてたまらないようで、口寂しそうにしていた。もちろんこんな監禁状況では、強制的に禁煙させられており、それもこの上なくつらいだろう。
精神的にも、肉体的にもそれだけである種の拷問だ。
片付けが終わると、鷲尾は夕食の準備を始めた。今夜は珍しくスーパーに寄って来たのだった。
普段は独り身なので食事は最低限しか摂らない方だが、今は二人暮らしだ。と言うには、あまりにも語弊があるが。
そして、てきぱきと仕事のように料理と言う名のマルチタスクをこなしていった。
「さあ真鍋さん。お腹空いたでしょう? お食事の時間ですよ」
笑顔で言いながら、鷲尾は真鍋のすぐ傍に、台所から持って来たトレイを置いた。
トレイの上には、お手製ハンバーグステーキ、炊きたてのライス、オニオンスープ、そしてサラダと豪華なセットが乗っている。それらは我ながらよくできていて、濃厚なひき肉とデミグラスソースなどの匂いが実に食欲をそそった。
鷲尾に監禁されてからというもの、まだ何も口にしていない真鍋は、たまらず生唾を飲み込んだ。
「俺の条件を大人しく呑みさえすれば、食べさせてあげます。なに、簡単なことです。俺にした非礼をしっかり頭を下げて詫びてください」
「……せっかく作ってもらったところ悪いが、なら飯なんざいらねぇよ」
「またまた強がっちゃって。あなたもこのまま放置されて餓死したくはないでしょう? ……ほら、お腹鳴ってますよ。食べたいんですよね」
「くっ……」
何も入っていない真鍋の胃は、ご馳走を目の前にしてきゅるきゅると切なげに鳴いている。強がりもここまでくると可愛いものだ。
「……それより……喉が、渇いてんだよ……こんなんじゃ、飯の味なんて、わからねぇ……なにか先に飲ませろってんだ……」
「そういえば水も口にしていないんでしたね。可哀想に」
白々しく呟いた言葉に、真鍋は鷲尾をきつく睨む。だが、鷲尾がズボンのチャックを開けると、また尻を犯されるのではないかと少し怯えるように身をよじった。
「ちょっと待っててくださいね」
「なっ……だ、誰がお前のモンなんかしゃぶるかよ」
「え? しゃぶる? フェラしてくれるつもりでいたんですか? すごい。でも、残念ながらそういう気分ではないんですよ。あなたのご好意は嬉しいのですが、それはまた別の機会に」
真鍋としては何としても飯だけを先に食い、それが済めばあとは断固として拒んでやるという魂胆が見え見えだ。
それならこちらも、ただで食わせてやる訳にはいかない。
そうして膝立ちになると、自身を扱き始めた。
「おまっ……、な、何してやがる」
「トッピングですよ。こうすれば……あなたの言う通り、味なんてわからなくなる」
「嘘だろ、おい……ば、馬鹿野郎! 冗談じゃねぇ! やめろ!」
何を言われても雑音にしか聞こえない。鷲尾はそのまま機械的に陰茎を扱いていくと、溢れ出る精子を食事にぶち撒けた。
そして、空のコップには射精後の尿を注いで真鍋の言う“喉の渇きを潤すもの”を用意してやった。
「……ふぅ。さて……どれから召し上がりますか?」
「ぐっ……テメッ……なんつー……。くぅ……」
「おや? まだ足りないと? まったく贅沢な方ですね。まあ今回は良いでしょう。では、」
そう言うと、鷲尾は真鍋の無防備な股間に手を伸ばすと、ブチブチと音を立てて陰毛を引きちぎった。何度も、何度も。
四十路を越えた男の股間が、まるで抜毛症のようなまだら模様になる。これではもう全て剃ってしまった方が良いくらいに不格好だ。
「ッつ……痛ってぇな! 何しやがんだ、やめろ! クソッ、本当に何考えてやがるッ……」
「いやいや、ですから、真鍋さんがザーメンだけでは足りないようなので、チン毛もトッピングして差し上げようと思いまして」
「は……?」
真鍋が言葉の意味を理解する前に、鷲尾は毟り取った毛をまんべんなく全ての料理にふりかけていった。
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