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16-1 ※鷲尾×晃、初めて、浣腸
美鈴は現在、朝の報道番組を担当しているため、深夜には家を出る。その忙しい合間を縫って時には弁当をこさえてくれることもあるのだが、いかんせん朝型のサラリーマンの晃とは、たまの休日やロケで時間が作れた日程度しか満足に二人きりで過ごすことができない。互いにそれは承知で結婚した訳だが、働き盛りの新婚夫婦はすれ違う毎日が続いていた。
鷲尾にとっては、なんとも都合の良いスケジュールだ。今日は出張中のため、昼まで帰って来ないらしい。なら散々に辱めて、飲食をして、たっぷり朝まで居座って、それから何事もなかったかのように帰っても問題ない。
もしも美鈴に誰か来たのかと問われたなら、鷲尾だと即答できるし、だからと言って不審に思われることもない。同性の親友同士なのだから、長いこと家に居たところで、「酒を飲んでいたらつい盛り上がってしまった」くらいで何も不思議ではない。
晃にとっては、安心できる我が家に凌辱者が居るという恐怖と屈辱を、時間をかけて心に刷り込まれる方が、単なる暴力よりもよっぽど恐ろしいのではないだろうか。
先日の口淫で、晃はすっかり自分が性の対象にされたことを認め、鷲尾とは目も合わせられないような、ぎこちない空気が流れていた。
鷲尾を本来家族以外立ち入らない我が家に入れた晃は、既に疲れた表情をしている。
「篠宮さん。例の証拠、見ました?」
答えなどわかってはいるが、念の為聞いてみる。
「……見て、ないよ」
俯く晃の手が震える。たぶん本当に見ていない。
見たとしても、一応、篠宮風の初老の男が、それっぽい怪しい人物と殺人について話題にしているだけの、外で話すことにしては少々過激な動画だが。晃はそんな勇気もない男だ。
「そうですね。それが賢明です。あなたにはたった一人の良い父親なのでしょうが、裏の顔を見たらショック死するんじゃないですか」
「──ッ!」
なんてことのないように言われ、さすがの晃でもカッとして鷲尾を睨もうとはしたが……やはり他者に醜い心をぶつけることはできなかった。
「それから篠宮さん。家ではなんて可哀想な自分だと泣いてくれて結構ですが、会社でも同じ雰囲気でいたり、そのせいでミスが続くようなら、俺も考えがありますからね。私生活と仕事ははっきりと分けましょうじゃありませんか」
鷲尾は俯く晃の肩を優しくポンポンと叩いた。
そう。父のスキャンダルが世間にバレても終わり。晃の仕事ミスでとんでもない案件を抱えてしまったら、それこそ会社が終わり。
「では……早速ですが、あなたの覚悟を見せていただきましょうか」
「覚悟……」
「日常を、家族を守りたいんですよね? だったらあなたの身体を差し出すんだ」
差し出す……ということは、もうフェラチオなんかじゃとてもじゃないが足りない、こちらの要求はそれ以上だ。
男同士のセックスへの知識がない晃には、もう少しわかりやすい言葉で説明してやらねばならないのだが。
「アナルセックスはどうやるかご存知ですか?」
「そっ……。それは……なんとなくは……わかるけど……でも、具体的には……」
「でしょうねぇ。所帯を持っていながらケツ穴オナニーでもしていたらドン引きですからね」
「そ、それで……僕は、どうすれば……」
「それはもちろん、まずは腸内洗浄ですよ。子供の頃に座薬でも入れてもらったことくらいはあるんじゃないですか? あれと同じ要領で、浣腸するんです。そうしないと肝心の行為中に大変なことに……ああ、大変なことと言うのは」
「わ、わかったよ! お腹の中……綺麗にすれば良いんだよね……」
いくらなんでも粗相してしまう危険くらいはわかるようで、晃は顔を真っ赤にしながら言った。
普通はグリセリン浣腸液を使うが、今回は牛乳浣腸をすることにした。その方が馬鹿な晃をより苦しめ、辱められるからだ。
ましてや、何も知らない晃に浣腸はそれでやるのが当然という常識を植え付けるだけでも笑いが止まらないだろう。
まるで自宅かのような太々しさで、冷蔵庫から冷えた牛乳パックを取り出して、用意していた注入器に躊躇なく注いでいった。
晃はヒッと小さく悲鳴を上げ、ただその慣れた手つきを見ていることしかできなかった。
器具を持って風呂場に連れて行き、無理やり服を脱がせるような形で生まれたままの姿にした晃を四つ這いにさせた。
全裸を他人に見られるというだけでも、晃は既にほんのり肌を桜色に染めている。どうすればいいのか、視線をあちらこちらにやって、最終的に心配そうに鷲尾を見やる。
鷲尾は冷えた牛乳の入った浣腸器を、これ見よがしに見せつけてやった。それだけで晃の具合が悪くなる。
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