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20-2 ※鷲尾×美波、女性凌辱描写

 美波はいつもより少し緊張した様子で鷲尾を出迎えた。  けれど、様子が違うのは鷲尾とて同じだ。リビングに通して向かい合うように座ったは良いものの、どう言い出すべきか悩む美波に、鷲尾は真顔で単刀直入に切り出した。 「真鍋貴久なら、俺の部屋に監禁していますよ」 「……っ、な、なに、を」 「そんなに驚かなくても、お互いニックネームで呼び合う仲でしょう?」 「……知りません、そんな人」 「可哀想な真鍋さん。彼はもうあなたのことを吐いたって言うのに。……じゃあ、これならどうです? あなたを調べていて、思い出したことがあるんです。あなたのお姉さん──美波舞について、重要なことを、ね」  姉という言葉を聞いて、美波の肩が大袈裟にビクッと跳ねた。  美波舞。鷲尾がその名前を聞くのは彼の身辺を調査した時が初めてではなかった。  様々なことが起こるクラブでの毎日を過ごす中で、あまり興味のない人間のことはすっかり記憶から薄れていたのだろう。  だが、よくよく思い出せば彼と似ている気がするのだ。例えば、顔のパーツ以外にも、小柄で勝気な部分なんかが。  鷲尾がクラブに来たばかりの頃。  八代から何事も経験だろうと、鷲尾の性経験の向上に、たまたま攫われてきたばかりのある少女があてがわれた。  彼女は初めこそ強気で、何をされるにもよく耐える人間だったが、クラブでの凌辱の日々が続く中では、次第に生きる希望がなくなっていった。  それほど性というものに興味やこだわりのなかった鷲尾も彼女を相手に多くを学んだ。  人はどうすれば泣き叫び、許しを乞い、そしてどこまですれば壊れるのかどうかを。  そう、その少女こそ舞だった。  毎日のように避妊もしなかったものだから、当然やがて子供ができた。  子供の性別は、出生前診断で男児だとわかった。だから廃棄した。  彼女がこの世から消えたのはたったそれだけの理由。 「ただ犯すだけではつまらなかったので、大物相手に枕をさせて少々小遣いも稼がせていただきました。そういえば、あの時の客の中には今の警視総監様も入っていたっけな」 「嘘だ……」 「そういう訳で、あなたのお姉さんはとっくにこの世にはいません。……ああ失礼、あなたの心の中では今までもこれからも生き続けている、と言ったところですか」 「……ねえ鷲尾さん。何を……言ってるんですか……?」  震える声で美波が呟く。鷲尾の語った出来事は美波にとってあまりにも衝撃的で、どこか現実味がない。 「何を撤回すれば良いのですか? これが紛れもない真実ですよ」 「嘘だ……嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ……! なんで……? どうしてそんな酷いことがまかり通るだなんて言うんですか……? 鷲尾さん……嘘だって言ってください……!!」 「……本当はわかってるくせに」  鷲尾がへらへらとした笑顔を一瞬で消した。 「俺のこと、ずっと疑ってたんですよね。知ってるんですよ。あの真鍋とかいうチンピラまで使って嗅ぎ回る始末ですもんね。良かったですねぇ、あなたの読みは当たりですよ。俺は、黒。それも真っ黒」 「それじゃ……あなたは最初から俺の目的を知っていた……知っていて、あんな……態度をっ……」  美波が血が出るほどの力で唇を噛む。膝に置いた拳がブルブルと震えている。  鷲尾に同情してしまったこと。心身を明け渡してしまったこと。何もかも演技だったのかと思い返すと美波は口惜しくてたまらない。 「まあ、俺の事件に関しては、犯人、本当に知らないんですよ。何せプロの殺し屋でしたから。でも依頼人はわかっています」 「……どうして、今さらそれを」 「それも知りたかったでしょう? 篠宮輝明ですよ」 「篠宮……? 篠宮……輝明……あ……確か、忠志さんの大学時代の親友……」 「そう。調書にもあるはずです。完璧なアリバイがあるので捜査線上には浮上しなかった。当然ですよね、彼はその晩も、普段通り過ごしていただけなんですから」 「そ、それなら動機は……いったい何なんですか!」 「まあ、父への学生時代からの確執とでも言いましょうか。同窓会で再会してから、俺達の家庭があんまりにも幸せそうに見えて、逆恨みされていたみたいです」 「たった……そんな……ことで……?」 「そんなことで、人は罪を犯す。俺もそう。そして、社会の規範であるはずのあなたも。世の中、綺麗事だけでは生きていけないことを一番よくご存知なのは、あなたでは?」  汚職に走った美波は、それには言い返せなかった。 「それにしてもあなたの素性を知った時はさすがの俺も少々驚きました。生まれなかったとはいえ、あなたの甥の父親は俺という訳になる。そして、あなたはそんな義理の兄とも言うべき人間のチンポで散々アヘアヘケツマンアクメして……ねえ、それってどんな気分なんですか? 俺達の仲ではないですか、ぜひとも教えてくださいよ、ねえ、美波さん」 「……許さない……」  美波の大きな瞳が、憎しみの炎に満ちて鷲尾を睨んだ。彼のこんなにも攻撃的な表情は初めてだった。 「そう……だよな……ずっと信じてたよ……。姉ちゃんは家出なんかじゃないって……! 俺の姉ちゃんは、何も悪くない! 姉ちゃんはっ……お前みたいな犯罪者に……っ!」  ずっと捜索し、その為に刑事にまでなり、汚職にまで手を染めたにも関わらず、それがこうも簡単に姉の末路を聞かされたのだ。  美波は感情が溢れ、自然と涙が玉のようにこぼれ落ちて頬を伝った。 「そっ……それにっ……姉ちゃんは当時高校生だったんだぞ!? なのに子供ができていただなんて……そんな風に拷問されて殺されていたなんて……父親がよりにもよって鷲尾さんだなんて……俺は絶対信じない!」 「どうぞどうぞご勝手に。俺もいちいち孕ませたガキの数なんて覚えていませんよ。なにせ俺の精子は活きが良いようで」  そこまで言いかけると、美波は思い切り鷲尾の胸倉を掴んだ。 「それ以上姉ちゃんを侮辱するな」  視線だけで殺せそうな目をしているとはいえ、小柄な美波ごときに見上げられても、全く怖くはない。  だが美波は本気らしく、素早く手錠を取り出した。

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