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24-1 ※鷲尾×晃+蓮見+柳、蟲姦

 晃をクラブへ連れて来た夜、彼は見知らぬ場所で全裸の状態で目を覚ますことになった。  プライベートな深紅の個室。鷲尾がクラブで休みをとることもある部屋でもある。  手首と足首はもちろん、ロープでの拘束は全身にまで及び、口には猿轡が。  いったい何が始まるのか、ここはどこなのか、そして先の記憶を辿り、鷲尾はどこにいるのか……だんだんと拉致された現実が追い付いてくるにつれ、息を荒げ、身を震わせて怯えた。  そこにドアを開けて現れた鷲尾を見上げ、晃は全身をくねらさせて意思表示をした。 「ふぐ……うぅ、うぅんっ! あふ、へて……!」  怜仁くん、助けて、といったところか。  鷲尾はその場にしゃがむと、ようやく猿轡を外してやった。タオルを詰めてガムテープを貼ったせいで、びしょ濡れになっている。 「おはようございます」 「はっ……は……なに……? ここ、どこなの……怜仁くん、いったい全体何が何だかわかんないよっ……説明して……」 「だから、言ったじゃないですか。ここは選ばれし者だけが存在を知れる場所。俺は幼い頃からこの地下クラブの住人だったんです。その権利が、ようやくあなたにも回ってきた。これはとても光栄なことなのですよ」 「でも……パパも……昔はここのことを知ってた、って……いろいろ……酷いこともしてきたって……あれは……?」 「彼はここの元会員でした。金を積んで酒池肉林に浸る典型的な悪趣味金持ちでしたが、あなたの母親が亡くなってから、素行が悪目立ちし始めてね。永久追放される代わりに、今の今まで俺も含め、ずっとこの施設のことを漏らさないか監視される生活を送っています」 「そんな……ママが亡くなった後……。でっ、でも、それじゃあ、壊した、っていうのは……?」 「文字通り。あいつはクラブに連れて来られた人間を、性奴隷としても、暴力の捌け口としても、やり過ぎて蘇生不可能にまで追い込んだ。このクラブで利用価値がなくなった者は、もちろん廃棄決定──この言葉の意味がわかりますか?」  晃は最大限に知恵を振り絞り、顔面を歪めた。  そんなことがまかり通って良いはずがない。社会の暗部など見たことも想像もしたこともない晃にとっては、あまりに酷すぎる。 「そっ、そんな……どんな理由があっても、人に暴力を振るうなんて間違ってる……! ねえ怜仁くん、君はそれがおかしいと思わないのかい……!? あげくの果てに、最期は……う、うぅっ」 「ええ、おかしいと思いますよ。でもそれを、事実お父上は金を払ってまで愉しんでいた。特に妻が亡くなってからは、憂さを晴らしまくって、それでも満たされなくて、俺の両親まで……その方がよっぽど残酷だと思いませんか?」  黙ってしまった晃は、現時点での最悪の展開を口にした。 「僕を拷問する気……なの」 「もちろん。その為にここに連れて来たのですから。表立ってできないことをするつもりですよ」  そうは言っても、晃が思う拷問の程度など、たかが知れている。  今までの行為だって、少々ハードでも恋人同士やSMのそれの範疇だ。結局は晃も気持ち良くなっている。それではいけない。  この部屋には事前に連絡して蓮見、柳にも準備をしてもらっていた。  二人が部屋に入ってくると、見知らぬ人物に狼狽える晃。 「うわうわ、ひっさしぶりのバカそのものお坊ちゃまって感じ?」  「馬鹿はお前も言えないだろ」と、柳に苦言を呈している蓮見。  見るからに裏社会に染まった二人を見上げて、晃は竦み上がった。  鷲尾はわざとらしく声に出しながら、晃に使う玩具を選び始めた。 「ど、れ、に、し、よ、う、か、な」  表で開発されているものより効果的なアダルトグッズに、訓練を受けていなければただの異物に、鞭や焼きごてといった現在にも使われる中世のごとき拷問器具に、獣姦用の動物に──そうして最終的に鷲尾の指先が止まったのは、外国のお菓子のような見た目のものだった。  カラフルなビーンズのような、蠢く小さな生き物がうじゃうじゃと虫かごに詰められている。  それを見た晃が固まる。それもそのはずだ。だから、虫かごから一匹を指で取り出してよく見せつけてやると、 「ひ……ヒイィッ!!」  晃は耳をつんざくような悲鳴を上げた。  それは主に蓮見のペットの爬虫類などのエサとなる、害のない芋虫だ。  生粋の都会っ子の晃は大の虫嫌いで、家に害虫が出た時も篠宮や美鈴に対処してもらっていた。  外で遭遇したって、あからさまに驚いて飲んでいるものをこぼしたりする始末である。 「そんなに驚かなくても。こういうものを食べる文化圏は多いですし、栄養豊富なんですよ? それに、虫と言っても色とりどりの蝶、子供は誰でも夢中になる格好良いカブトムシやクワガタ、美しい音色を奏でるスズムシやコオロギもいる。なのに見た目だけのせいで残念な扱いを受けて、人間って本当に勝手ですよねぇ……あむっ」  鷲尾が一匹、わざと音を立てながら口に運んだ。  プチッと身が捩じ切れる音、ゴリゴリと歯で噛み潰す音、喉を鳴らして嚥下する音。 「やっ……やだやだやだ、嫌だああああああああああああああっ!!」  晃はそれだけでパニックに陥った。  見るのもつらいというのに、それを鷲尾が目の前で食べている。なんと恐ろしいことか。  きついロープの拘束を解かんばかりにものすごい勢いで暴れ出したので、二人に手伝ってもらって、身体を押さえ付けた。

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