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些細な事
「んっ…。」
目を開けると、見覚えのある天井。隣を見ると気持ちよさそうに寝ている光葉 。
光葉を起こさないようにゆっくりと起き上がり、立ち上がろうとした。
「ッ~~~…!!!?」
痛い。痛いのだ、腰が。
立ち上がろうとはしたものの、腰が痛すぎて床に膝を付いてしまう。
たっく、まじで覚えてろよ! くぅ~、だから嫌なんだよ…ッ! 腰が痛いから俺は這いつくばって、寝室を出ていく…。なんて惨めなんだ。
リビングにつくと、キッチンに向かい冷蔵庫を開ける。
「水…、魚肉ソーセージ、卵…なんにもないな…。」
俺は水と魚肉ソーセージを取り出すと、リビングのソファーに座る。
光葉の家のヤツだけどいいか…。
水をコップに移し、飲み干す。昨日、あんなに声を出していた俺には冷たい水が美味しく感じた。
「あ、先輩! おはようございます。」
光葉の言葉を無視し俺は魚肉ソーセージに齧り付く。光葉は傷付いたような顔をし、「先輩怒ってますか?」などや「すみません…。」と謝ってくる。
当たり前だ、あんな好き勝手されて怒らないやつが何処にいる。
「先輩ぃ~…。」
「…。」
魚肉ソーセージ片手にスマホを弄っていると、光葉もソファーに座り俺のスマホを覗いてくる。
「…先輩、この人誰?」
光葉がじっと見つめる先には、先程食事を誘ってきた友達の優 のメール。
「誰でもいいだろ、それより人のスマホ見んな。」
手でメールのやり取りを隠すと、光葉がムムっと顔にシワを寄せる。
「何だよ…?」
「俺にメールのやり取りを、見せられないような事してるんですか?」
「はぁ!? なにが、なんでそうなった!?」
「じゃ、俺に見せてください。」
俺の前に手を差し出す光葉、スマホを出せと言うことだと思う。
友達とのプライベートのやり取り、見せたくないのは誰でもそうだろう。
「やだ。なんでお前になんか見せないと行けないんだよ。マジで意味わかんねぇ…。」
俺はイラッときて、ズキズキと痛む腰にムチを打ち立ち上がる、そして昨日着て来たパーカーと鞄を取ると玄関に向かう。しかし、光葉に腕を捕まれ阻止される。
「どこ行くんですか…?」
「家だよ…、家に帰んの。早く手離して。」
「あ、すみません…。」
手を離され、靴を履き、玄関を出ようとすると光葉に後ろからハグをされた。
「先輩、ごめんなさい。」
「ッ…。」
「俺っ、先輩が好きで好きで他の誰かに取られるんじゃないかって心配で…。」
「光葉…。」
「先輩が嫌だって言っても、キスマーク付けんのも誰かに取られないようにする為だし…っ。だから、だからっ。」
泣きそうな声で好きだと言われ、嬉しくなる俺は光葉に甘いのだろうか。
「ん…、大丈夫。もう怒ってないから。」
抱きしめられた光葉の手を重ね、光葉の方向を見る。
「先輩ッ!!!」
「んッ! あッ、んん…はぁ…。光葉ッ、はぁん、っ。」
光葉の顔が明るくなり、噛みつかれるようなキスをされた。
……俺ももう少し素直に慣れればな…。
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