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第2話
「とりあえず着替えてきたらどうだ? その間に飲みもんとか用意しとくから」
基本家仕事の俺とは違い、朝から夜まで爽やかにドラマにイベントにCMにと駆け回っている朝陽。
だから着替えて少しゆっくりするために、こっちはやっとくからとケーキの箱を受け取る。そんな俺を、朝陽は窺うように目を細めて見てきた。
「なに」
「優しいから裏があるか疑っちゃう」
「裏っつーよりかは下心だな」
いい感じになった時に中断したくないだけ。
そんな素直な気持ちを伝えると、朝陽は太陽みたいににっこりと微笑んだ。
「ならいいです。着替えてきます」
「いいのかよ」
そしてそそくさと着替えに行こうとするから思わずつっこんでしまった。
下心をそんなにあっさり認められるとそれはそれで恥ずかしいというか若干複雑だ。
「僕も那月さんとイチャイチャしたいですから」
けれど振り返った朝陽はにこやかな笑顔でそんな可愛いことを抜かすから、額に手を当てて天を仰いでしまった。
ひたすら顔がいい上にエロにも寛容な恋人なんて、それこそ御伽噺ではないのか。
しかもこいつはこういうセリフを本当にさらりと言いやがる。これを意図せずに天然でやるんだから困るんだ。
とりあえず朝陽を見送ってから大きく息を吐いてケーキのセッティング。
それから紅茶を淹れれば、いいタイミングで朝陽が戻ってきた。
前のライブで作ったグッズのTシャツにスウェットという、普段の王子様スタイルとは真逆の緩い格好。だというのになんでこうもだらしなくないどころか爽やかなのか。
とりあえず傍まで呼んでから、胸ぐらを掴んで引き寄せるようにしてキスをする。
「ん、なんですか?」
「爽やかすぎてむかついたから」
突然キスをされて目をぱちくりさせる朝陽の頬を両手で包み、そのままもう一度キス。
いちいちなにしても爽やかキラキラなスタイルが俺の生活になさすぎて、なんなら一曲作った。それがあまりにも普段の俺と違いすぎてどうしたものか戸惑うくらい。
「とりあえずケーキ食べません? せっかく淹れてもらった紅茶冷めちゃいますし」
そんなことを言いつつ俺の手を引っ張ってソファーへとエストコートする朝陽。まるで姫をダンスに誘うかのような仕草で、俺が相手じゃなかったら大層画になったことだろう。
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