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第4話
まんまと煽られた俺は、朝陽を引きずるようにして寝室に移動するとそのまま放り投げるようにしてベッドに押し倒した。
「待って待って、今脱ぐから」
「目の前で赤い旗ひらひら振っといて待てはおかしい」
「おかしくないです、待って、て」
もぞもぞと起き出して脱ごうとする朝陽を留め、できるだけ距離を作らないようにキスを繰り返しながらシャツを剥いでいく。合間に小さい声が漏れるから、どうにも悪いことをしている気分。
「んぅ、あ、そういえば、今日も見せられましたよ? 那月さんの記事」
自分が上げる声が恥ずかしかったのか、朝陽から投げられたのはある意味日常茶飯事の話題だった。一度俺たちがこじれた原因ではあるけれど、だからこそそれからはフランクに話せるネタだったりする。
「今度は誰が相手だった?」
なんでか俺は日頃からよく週刊誌のネタにされやすい。
そこまで遊んでるつもりはなかったけれど、ネタ探しや人観察も兼ねてバーやクラブなんかに行くことが多いからか使いやすいらしい。
そこそこ曲が売れている自覚はあるし、そういった噂をいちいち反論したりもしないから、適当な売名相手にはもってこいのようだ。
そういうわけで巷での俺イコールスキャンダルという印象が強い。
……もっとも全部が全部まるっきりの嘘ではないから面倒なのは、朝陽には内緒だけど。ただ、今の話ではないから良しとしておいてほしい。
「なんだっけ、なんか那月さんのファンだって雑誌で言ってた女優さんらしいです。付き合ってるんですか?」
名前を覚えてないのはわざとか興味がないからか。なんにせよそんな曖昧な噂を恋人に投げかけないでほしい。
こちらはやっと落とした恋人を可愛がりたくてこんなにがっついているというのに。
「なに、嫉妬してんの?」
それでも少しくらい余裕を見せる気で唇をなぞってみれば、下から伸びてきた両手が俺の顔を包んだ。
「浮気はダメですよ。僕のことだけ見ててください」
そしてまっすぐ俺の目を見つめて告げる朝陽に、見せたはずの余裕は簡単に砕け散る。
まったく、こいつは本当に軽々しくアルファの本能をくすぐってくれる。普段はオメガの自覚なんて全然持ってないくせにずるすぎるだろう。
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