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第5話

「そういう生意気なことを言う奴には体でわからせてやる」 「ふあっ……あ、くすぐった、い……っ」  朝陽はよく俺が触るとくすぐったいと身を捩らせるけれど、それがどういう意味かあまりわかっていないらしい。撫でる手にも触れる唇にも色っぽい声を上げては息を弾ませているのに、感じているんだとは気づいていないようだ。  まあ、それはそれで自らの手で開発している気がして気分がいいからいいんだけど。 「ん、もう、なつきさぁん」  太っているわけでもないのに触り心地がいいのは体質にも関係しているのか。ジムに通っているわりには筋肉はついておらず、代わりにいくら食べても太らないという。  がっつく気持ちとは裏腹に、触り心地のいい体に夢中な俺にゆるりゆるりと扱かれているのが焦れったかったのだろう。  甘えた声で先をねだられて、まだ芯を通しきっていない朝陽自身をそのままに後ろへと指を滑らせる。  オメガと言えど、ヒート以外の時は普通の男と同じで勝手に濡れるわけではないから、丁寧に用意する必要がある。とはいえすでに力は抜けきっているし、そう時間がかかるものでもない。 「なあ、朝陽ってなんで俺のこと名前で呼ばねぇの?」 「や、あん、なんで、今……っ」 「こういう時は普通名前で呼ぶだろ。恋人同士なんだし」  多めに垂らしたローションに空気を含ませるようにぐちゅぐちゅと音を立て、探るように解す。その合間に気になっていたことを問えば、朝陽はなぜか両手で顔を隠してしまった。 「だ、だって、なんか恥ずかしい、ですしぃ……あっ、うあ」  恥ずかしがるポイントが難しい。  今まで散々煽ってきたくせに、そういうところを恥じらうのか。  たまにやーちゃんとか朔也さんとか呼ぶときもあるけれど、それは冗談や軽口の意味合いが強くて求めている色合いとは少し違う。 「それに、外で呼んじゃったら、困るし」  そして朝陽が言いたいこともまあわかるから難しい。  一応というか当たり前というか、俺たちの仲は世間には内緒。それどころか接点があること自体、俺はともかく朝陽にはマイナスになるかもしれない。  だから仕事上はまだしもプライベートではわりとうっかりさんな朝陽がうまく切り替えできずに呼んでしまった場合、困るだろうってことも予想がつく。  とはいえずっと名字呼びというのも恋人としては寂しい。だから持ち出したのは折衷案。

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