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第8話
「ん……」
心地よい気だるさとともに緩やかに去る眠気。
その尾を掴もうかどうしようか悩みながらまだ少し重いまぶたを開けると、キラキラしたものが目に飛び込んできた。
「おはよ、さくや」
にっこり微笑む顔と耳心地の良い声。
降ってきた笑顔があまりにも眩しすぎて太陽を直接見たのかと思った。
「……お前、名前」
「へへ、ベッドの上だから」
遅れてその呼び名に気づいて、俺を覗き込むようにして微笑む朝陽を見上げる。
無邪気な照れ笑い。
それを見た瞬間、我ながら寝起きとは思えないくらいの俊敏さで朝陽をベッドに組み敷いた。
「おわ?! え、なに、ダメだった?」
突然姿勢を入れ替えられた朝陽は目を白黒させて困惑する。
どうやら呼び方を怒られたと思ったらしいけど、相変わらずのとぼけ方というか見事な天然っぷりというか。
「昨日あんなエロいことしといて、朝っぱらからそんな爽やかな顔で、自然に名前呼ぶとか、全面的にお前が悪い」
「えええっ?」
別に俺が特別エロイわけじゃない。
こんなの、煽られない方が悪いんだ。
「やらしーことする時に呼べっつったよな? つまり今のは完璧なるお誘いだろ?」
「え、えー……?」
布団を剥ぎ取りついでにスウェットと下着を同時に掴んで引き下げれば、鈍い朝陽でもさすがにどういう意味か気づいたらしい。
ちらりと朝陽の目が時計に走る。たぶん時間を確認したのだろう。
「ん-と、じゃあ、ちょっとだけね、朔也さん」
俺を見上げて両手を伸ばしてくる朝陽のセリフに、キスを返してそのまま朝のイチャイチャに突入したわけだけど。
んな呼び方されたら最後までするに決まってんだろばーか。
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