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⑤
友達でなく
羽鳥と特別になりたい、ずっとそう思っては中々、行動に移せずにいた
だけど俺だってッ
「そ、そんじゃ貰っとくなサンキュー」
喉が鳴る
あくまで平静を装い手を伸ばす
自然で、偶然にみせかけて
羽鳥の手に狙いを定めて
(猿じゃねぇけど、俺だって羽鳥の手が握りたいんだッ)
バックンバックンと音打つ心臓が羽鳥に聞こえるんじゃないかと、堪らずギュッと目を瞑り
ストラップを貰うようにして、羽鳥の手を取った
(暖っかーーーい!!!)
「おい…」
「ん?」
耳障りな声が聞こえ、瞑った目をうっすら開けてみれば、思ったよりもしっかりとした男らしい手が目の前にあって
骨張っていて案外大きくて、健康的な小麦色を‥した‥‥?
「いつまで握ってんだバカ犬ッ」
頭上から降ってきた耳障りな声に思考が一旦停止する
(いやいやいやいや…)
今、一瞬頭に浮かんだ恐ろしい予感
油が切れたブリキの様にギギギィー‥と視線を上げて見れば
「早く離せバーカ」
見たくもない奴の顔を俺の目に捉えてしまっていた
「こ、この猿ッ、テメェなんでまた居んだよ」
「は?お前の許可ねーと駄目なのか?これだからバカ犬は‥‥ってか、手!」
「へ?」
「は・な・せ・よバカが」
「ーーッ!!うげっ、誰がテメェの手なんか進んで握りたいか!つーか、俺のひそかな想いを打ち砕きやがってぇええ」
「ふん…お前の想いなんか知るかッ!
羽鳥がなんか持ってるから、何かと思って手出したらお前に握られるし、マジ最悪。
あっ、ヤベ早く手洗って来ねーと‥‥腐るな」
「カッチーーンッ表出ろこのエロ猿ッ!」
「チビ犬がッ、受けて立つ!」
一日何度となく繰り返すこのやり取り
周りで見ていた連中に囃し立てられ
女子からは、またか…と呆れられ
俺がこの世で一番嫌いな奴
天敵、猿倉に掴み掛かってまた無駄な時間が過ぎて行った
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〝犬井くんと猿倉くん居るところ喧嘩あり”と噂がある程、日々喧嘩三昧です
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