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第6話 - ①

悪夢 ■■■■■■■■■■■■ 『犬井‥‥』 猿がゆっくりと俺に近づいてくる 一歩、また一歩と俺との距離を縮めて… 『なにお前?もしかして初めて?』 ニヤリと口の端を上げ、人を馬鹿にした顔でそう言い放ってくる そして、可笑しくて仕方ないかのように盛大に笑った猿が… 『くくっ、お前のファーストキス‥‥ 俺が貰ってやったんだ、ありがてぇだろ?』 目の前まで近づいて来た猿倉が、俺の顎を持ち上げ、さらに顔を寄せてきた ファースト‥キス? ファー‥ 「ぐ、ぁああああッ! あの野郎ッうわッ、痛っっでぇーーーッ」 自分の叫び声と繰り出した右手 それによってバランスを崩し、ベッドから転げ落ちた体が、床にしこたま叩きつけられて悲鳴を上げる 「痛ちちッ、くそ」 顔を思いっきり強打して、朝っぱらから最悪 悪夢だ‥‥ 夢にまで出て俺を苦しめるなんて (くそっ、エロ猿の野郎ぉおおおおッ) ベッドから落ちたのも、猿のせい 夢見が悪いのもあのエロ猿のせい 朝からうるさいと親に怒られたのも猿倉のせい そして、こんなに気分が悪いのも全部が全部あいつが 俺のファーストキスを奪ったせいだ 「おはよう〜イヌイ」 「ふぁ〜……羽鳥‥‥はよ…」 いつもなら朝ごはんを食べれば、シャキッとするのに、今日はどうも調子が悪い 登校してすぐに羽鳥の可愛い笑顔で回復をはかろうと、見つめていれば… 「あれ、イヌイ?具合悪い? うわっそれにオデコ、痣になってるよ」 本調子じゃない俺に気が付いてくれた 嬉しさで顔がニヤけそうになる 「ん、具合と言うか‥‥なんつーか‥」 羽鳥にもっと心配して貰いたくて、夢見が悪かった事を伝えようと口を開こうとした時… 「あ、シシクラおはよっ」 「うす」 (ぐ、ーーーーッ!!) と、後ろから聞こえたあいつの声に体が過剰反応して こめかみに血管が浮き上がり 右拳に自然と力が入る 羽鳥の癒し効果で回復したはずの平常心は一瞬で消え失せ 「羽鳥‥俺、気分が悪ィから保健室行って来るッ」 「え、大丈夫?ってイヌイ、速ッ!」 「うぉっ、犬井の奴なんだ?」 あまりのムカつき復活で、猿を見ないように保健室にダッシュしていた

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