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「うわわッ、めちゃくちゃ可愛いっ触っていいっすか!」 日中暑い日は地面も熱されてワンちゃんの肉球が火傷してしまうからと、夜に散歩する人もいると聞く ちょうどその夜の散歩中だったみたいで、快く 『どうぞ!』と、飼い主さんが答えてくれて いくつなんですか? お名前は? そんな話しで飼い主さんと和気あいあいとしゃべっていれば 「犬井……」 忘れていた存在が急に話し掛けて来た 「うぉ、猿倉?」 すでに居ないもんだと思っていて だから、まだ俺の少し後ろに居た猿倉に驚く お前まだ居たの? そう口を開こうとしたけど、なんか様子が変な事に気が付いた 微動だにしないその姿勢 仁王立ちしている猿倉のその視線は一点集中 「猿くー‥」 声を掛けようとした時 『キャンッ!』 ワンちゃんが可愛い声で吠えた‥‥と同時に 「ッ!!!」 ズサササッ‥ 物凄い勢いで猿倉が後ろに飛びのく 「は?なにお前‥?」 「‥‥‥ッ、ツ」 歩道に植えられている花壇にまで足を突っ込む慌てっぷり 若干、顔色が悪いし 引き攣ってもいる表情 なんか小刻みに震えてるようにも見えて 飼い主さんがまた散歩を再開し、俺は背中を見送った時にはもう限界で‥ 「ぶ、ブハハハッ!お、おまッ‥‥ひッ、ひィっ、ひっ、あんなちっこい犬に、クハハッ! ヤバいってお前まさかの犬ダメって!俺を笑い死にさせる気かよアハハハッ」 笑いが止まらない

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